健康長寿ネット

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第72回 何もなければ、それでよし

公開日:2024年11月 8日 08時30分
更新日:2024年11月 8日 08時30分

宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業


 看護師という仕事柄、知人、友人から健康問題についての相談をよく受ける。

 その際必ず断りを入れるのは、「比較的重い病気の人ばかり見ているので、最悪の場合を想定してしまう」ということ。

 例えば、腹痛で外来に来て、大きな異常なく帰宅した人とは、関わる機会が少ない。内科病棟や緩和ケア病棟での経験から、「検査の結果がんだった」という人を多く見てきたからだ。

 最近も、50代半ばの女性から「なんか最近食欲がなくて。ちょっと痩せたのよね。季節の変わり目は気持ちもふさぐから、そのせいかしら。心療内科にかかればいい?」と軽く相談された。

 私の答えは、「まず消化器系の病気じゃないかを見てもらった方がいいと思う。心療内科の医師は、精神科が専門の場合もあるから。消化器内科を標榜しているクリニックをお勧めします」。

 身体の不調があれば、まず身体を診てもらう。それで異常がなければ、次に心療内科または精神科の順番で診てもらう。これが私の基本的な考え方だ。

 なぜなら、精神科医は身体の診察が得手ではなく、それは専門性からみて当然だと言える。だから、身体症状があれば、はじめに身体の異常がないことを確認し、それから精神科にかかるのがお勧めなのだ。

 難しいのは、長年うつを経験し、そのたび食欲低下で痩せているような人。「今度もまたうつで調子が悪い」と思っていたら、悪化の一途を辿った。

 渋々消化器内科のクリニックで検査をしたところ、診断は胃がん。見つかった時にはかなり進行しており、残念ながら亡くなってしまった。

 症状が出た時にはもう、遅かったかもしれない。それでも、「いつものうつ」と決めつけず、消化器内科にかかっていたら・・・・・・。残念な気持ちが残った。

 このような人を知っているから、私はついつい慎重になる。「気のせいだよ、大丈夫」とはなかなか言えず、受診を勧め、明らかに不興を買う場合も少なくない。

 もちろん、大きな異常が見つかるのは、まれなこと。それでもゼロではない以上、身体的な不調があれば、まず身体を診てもらってほしい。

 そして、その結果何もなければ、それでよし。異常がないのが確認できれば、それが何よりなのだ。

 皆さん、不調な時は、まず身体を診てもらいましょう。

写真:著者が購入したリットマンの聴診器を表す写真。
写真:著者が近寄ったら起きた愛猫もふこを表す写真。

<近況>

 うちの飼い猫は呼吸器系が弱く、よく咳き込んでいます。獣医さんに相談して、呼吸音の聞き方を教わりました。家にある聴診器は古くてちゃちだったため、30年ぶりに医療用の良いものを購入。若いころ奮発して買ったリットマンの聴診器です。いや〜、本当によく聴こえます。さすがリットマン。若き日、初めて手にした時の高揚感を思い出しました。

 今は呼吸も落ち着いているもふこですが、寝ている時の寝息というか、いびきは人間並なんですよ。近寄ったら、すぐに起きてしまいました。

著者

筆者_宮子あずさ氏
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。

著書

「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ:ほんわか博士生活(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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