第29回 小銭貯金にご用心
公開日:2021年4月 9日 09時00分
更新日:2021年4月 9日 09時00分
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
釣り銭でもらった小銭を貯金箱に入れる。訪問看護にうかがったお宅で、そんな小銭貯金を時々見かける。
キャッシュレスの時代になっても、高齢者の多くは、現金を使う。私が訪問している利用者さんは、高齢者が多い上、精神疾患を抱え、なおその傾向が強い。その理由は、クレジットカードが作れない経済状態と、電子マネーに移行する柔軟性に欠くことが大きい。
さらには、支払額を見て細かく小銭を使うには、ある程度のゆとりが必要になる。緊張が強く、とにかく一瞬でも早くその場を立ち去りたい人は、レジで札を出してしまう。かくして、財布の中に小銭が貯まっていくことになる。
さらに困ったことには、貯まった小銭を使おうとすると、今度は使える枚数には制限がある。たくさんの小銭で支払おうとする客に対して、店は法律上、同じ金種は20枚を超えたら拒否できるのだ。
ある支援者は、以前小銭貯金しかなくなった利用者さんの小銭を使ってコンビニで買い物を代行しようとしたが、断られてしまったと言う。この枚数制限は以前からあったものだが、最近とみに厳格に行われているようだ。
ただでさえ使いにくくなった小銭だが、さらに肩身が狭くなっている。両替や入金に手数料を取る金融機関が増えているのだ。キャッシュレス化の流れに乗れない人は、ますます不自由になりかねない。
最近の報道では、2月1日から、これまで無料だった三井住友銀行で両替が有料化された。すでにみずほ銀行、三菱UFJ銀行は有料だったため、これで全てのメガバンクで、両替が有料化されたことになる。
この報道で衝撃だったのは、その手数料の高さ。手数料の金額は各銀行によって異なるのだが、三井住友銀行の場合、1円玉500枚の両替に対し、なんと手数料が400円かかるようになった。
両替でなく入金なら無料では......と期待して調べると、そうは問屋が卸さない。2018年から多くの銀行で、大量の硬貨を入金する場合に手数料を設定していた。
銀行のサイトを調べてみると、三菱UFJ銀行の場合は、100枚まで無料、101~500枚は550円、501~1,000枚は1,100円、1,001枚以上は1,650円。以降500枚ごとに550円加算される。
ただし、三菱UFJ銀行では、大量の硬貨入金に手数料がかかるのは窓口の取引のみ。ATMの場合は手数料はかからない。ただし、1回に入れられる硬貨は100枚なので、大量にある場合は、100枚ずつに分けて入金しなければならない。
また、窓口での入金も100枚まで無料なので、小分けに入金すれば手数料はかからない。ただし、この枚数制限は1日の取引枚数。日を変えないと累計で有料になってしまう。
ゆうちょ銀行など、今のところ無料の金融機関もあるが、全体の傾向としては明らかに有料化に向かっている。この先、どのように制度が変わるかわからないので、大量の小銭を貯めている方は、早めの入金をお勧めしたい。
著者
- 宮子 あずさ(みやこ あずさ)
- 看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。
著書
『宮子式シンプル思考─主任看護師の役割・判断・行動1,600人の悩み解決の指針』(日総研)、『両親の送り方─死にゆく親とどうつきあうか』(さくら舎)など多数。ホームページ: