健康長寿ネット

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第75回 介護を受けながら暮らせる場所

公開日:2025年2月14日 08時30分
更新日:2025年2月14日 08時30分

宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業


 私が勤務する精神科病院では、一人暮らしが難しくなった高齢者が退院できずに入院が長期化する傾向が強い。

 以前は介護が受けられる施設入居の道は極めて困難なため、さまざまな支援を入れて自宅に帰す方向を目指してきた。ところがこの2、3年は、退院後にこうした施設に退院する人が目立ち始め、大きな変化を感じている。

 先日、施設入居を希望する患者さんの施設見学に同行し、さらにその変化を実感してきた。行った先は、介護付きホーム。介護付き住宅の範疇だが、介護職員が常駐し、十分な介護が提供されている。

 まず驚いたのは、ホーム職員から聞いた入居の条件。入居の条件が要介護1以上。入居後介護度が上がって要介護5になっても退去しなくていいというのである。

 ちなみに、居住環境も決して悪くない。見学したホームは、社員寮を買い取ってフルリフォームした鉄筋3階建て。約150ある居室は全て個室で、車椅子で使えるトイレがついている。

 そして、入居希望の患者さんは生活保護受給者だったが、費用の点では問題ないとのこと。想像以上の好条件に、患者さんも驚きながら帰院し、ほどなく申込み手続きに移った。

 制度上、サービス付き高齢者住宅や介護付きホームなどの介護付き住宅は、そこに暮らす人は自宅と同じ「在宅」として各種のサービスが提供される。訪問看護やヘルパー支援も受けられるため、全ての介助を常駐する職員でまかなわなくてよい仕組みになっている。

 また、病院からみると、患者が退院してそこに入居すれば、「在宅への退院」とみなされ、診療報酬上の加算がつく場合もある。介護付き住宅が増え、退院先に選べることは、病院にとっても大きな利点になると言える。

 何が何でも自宅への退院から、介護付きホームも選択肢となった、この変化には明らかに国の政策が背景にある。2024年4月の介護報酬改定では、個人宅への訪問介護報酬が減額になったのに対し、介護付き住宅へのそれは増額となった。

 恐らく国は要介護の高齢者をある程度まとめて住まわせ、効率的に介護を提供したいのだろう。高齢者自身にも、施設入居の希望が少なくない現状を思えば、この⽅向性もあって良いのかもしれない。

 特に過疎の地域では、家と家の距離が遠すぎて、採算が取れる数だけ、1日に訪問ができない現実がある。そのため、介護事業者の撤退が相次いでいるが、この問題の解決は本当に難しい。

 基本的には、その人が住みたい所に、望む形で住めるのが一番よい。その点からすれば、個人宅への訪問介護報酬が減額され、さらにサービスが受けにくくなる現状には異を唱えたい。

 一方で、心ならずも長期入院になっていた患者さんが、少しでも住まいに近い所に移れるのは、患者さんにとってとてもよいことだと思う。その意味で、自宅か入院の継続か、の二択だった状況が変わり、介護付きの住宅が選択肢に入ったのは、歓迎すべき変化である。

 大事なのは、介護を受けながら暮らせる場所を選び、尊厳ある暮らしができること。私自身は、精神科病院で働きつつ、この原則が守られるよう、努めたいと思う。

<近況>

 2025年初めての更新となりました。今年もよろしくお願いいたします。

 皆さんは、年末の大掃除はなさいましたか?私は不用品の整理を始めた所で、不要になったシステム手帳のレフィルを使ったメモ帳作りにハマってしまい......。それだけで終わってしまいました。

 作り方は簡単。「メモ帳  作り方」で検索すると、いろいろな記事が出てくるので、わかりやすいものをご参照ください。

 用意するものは以下です。

  1. 適当なサイズに切りそろえた不要な紙
  2. のり
  3. ハサミ
  4. クリップ
  5. ティッシュ
  6. マスキングテープ

 制作中はこんな感じです。

写真:出来上がった10冊以上のメモ帳と作成途中のメモ帳の写真

 そして、引き出しにできたメモを並べました。こんなにたくさんあって、使い切れるかしら。2024年の大掃除は.........ほぼこれが成果でございます(涙)

写真:作成したメモ帳を引き出しの中に並べた写真

著者

筆者_宮子あずさ氏
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。

著書

「まとめないACP 整わない現場,予測しきれない死(医学書院)、『看護師という生き方』(ちくまプリマ―新書)、『看護婦だからできること』(集英社文庫)など多数。ホームページ:ほんわか博士生活(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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