人生100年時代を豊かに生きるためには
公開日:2016年7月25日 16時00分
更新日:2022年11月25日 15時00分
人生100年時代とは
厚生労働省によると、令和元年(2019年)の日本人の平均寿命は男性81.41年、女性87.45年となっています。一方、健康上の問題に制限されることなく日常生活をおくれる期間を示す「健康寿命」は、令和元年(2019年)では、男性72.68歳、女性75.38歳でした1)。
また、内閣府の令和元年(2019年)高齢社会白書の平均寿命の将来推計では、昭和55(1980)年の平均寿命は、男性73.35年、女性78.76年と約40年の間に8年延伸しています。今後も、男女とも平均寿命は延び、令和47(2065)年には、男性84.95年、女性91.35年となり、女性は90年を超えると見込まれています。この先100歳まで生きられる時代、つまり人生100年時代が当たり前になると考えられます2)。
人生100年時代を豊かに生きる人生設計
人生100年時代がやってくるにあたり、その100年時代をどうやって豊かに生きていくのか、その人生設計が重要となります。生涯現役を貫きたい、趣味の時間を充実させたいなど様々な考えがあるのではないでしょうか。
例えば、令和元年(2019年)の日本の高齢者の就業率をみると、男性が34.1%、女性が17.8%となっています。また、年齢階級別にみると、65~69歳の男性が58.9%、女性が38.6%、70歳以上の男性が24.7%、女性が11.8%となり、年齢が高くなるとともに就業率は低くなっています。働き方としてはパートやアルバイトが多く、全体の52.7%を占めています(グラフ)1)。
働く理由としては、今までのように金銭面を気にして働くのではなく、社会参加として好きな時間に働くためであったり、自分の持っている専門的な知識や技術を活かしたいと考えて働く人が多くいます。
また、高齢者の趣味の活動を見てみると、2人以上の世帯の国内外の旅行費、いわゆる「パック旅行」の年間総支出額は、65歳以上の高齢者が各年代の中で圧倒的にトップとなっています。さらに、園芸用植物、園芸用品やカルチャースクール等の月謝などを含む「教養的月謝」も、高齢者世帯の支出金額が最も高くなっており、趣味を充実させている高齢者が多いことが分かります2)。
これらのことから、人生100年時代に向け、趣味や就業といった様々な形の人生設計を行っている高齢者が多いことが分かります。こうした活動は、充実した100年時代を生きるために、高齢者に求められていることなのかもしれません。
人生100年時代の課題
充実した人生100年時代の人生設計をするためには、大きな課題があると考えられます。それは、健康とお金ではないでしょうか。
高齢者の収入源は、厚生労働省による令和3年(2021年)国民生活基礎調査によると総所得の62.3%が公的年金と恩給、21.5%が稼働所得(働いて得る所得)3)。若いうちに頑張って働いてきた分の見返りだけでなく老後の社会参加をもすることで、十分な所得を得られるということが分かります。高齢者の世帯では、他の年齢階級に比べて大きな純貯蓄を有しており、その主たる目的は介護や病気への備えとしています。
一方、令和元年(2019年)の高齢者の有訴者率※を年齢階級別にみると、人口1,000人当たり65歳以上が433.6、75歳以上が495.5で、年齢階級が高くなるにしたがって上昇します3)。
つまり、金銭的な備えをしっかりと行い、健康を維持、増進することで、有意義な100年時代が送れるということであり、この2点をどこまで自分のものにできるかが、大きな課題となることが考えられます。
- ※有訴者率:
- 有訴者率とは人口1,000人当たりの「ここ数日、病気やけが等で自覚症状のある者(入院者を除く)」の数のことを指します。
プロダクティブエイジング
プロダクティブエイジングとは、アメリカの老年学の権威であるロバート・バトラー(Butler, R. N.) が1975年に提唱したもので、高齢者に自立を求めるとともに、更にさまざまな生産的なものに寄与するために、積極的な社会参加が必要であるという意味が含まれている考え方です。
高齢期に入り、仕事や子育て等の義務的な労務から解放され、これからの人生を有意義に過ごすに当たり、自らの老いへのあり方やライフスタイルは、人によって異なります。社会参加についても、趣味や余暇活動、ボランティア、仕事、学習など、多岐にわたることでしょう。
しかし、21世紀の高齢社会では、従来の社会参加と異なり、積極的な意味づけが要求され、生き方のニーズを考えていくことが求められます。例えば、趣味や余暇活動は、暮らしの中で感動や生きがいを得るために行われますが、その打ち込む態度によっては、単なる気晴らしや時間つぶしになってしまい、生き方の再構築や社会参画にはつながりません。これはボランティア活動においても同様で、友人や知人の真似をして参加するボランティアでは、逆効果になりかねません。
21世紀の高齢者は、自分の生き方や方向性、住む場所、活躍の仕方、楽しみ方等々、幅広い選択肢が用意されています。一人ひとりの生き方におけるニーズを考え、これまでの経験をもとに、自己決定、自己実現していくことは、プロダクティブに生きていくということに結びつくものと考えられます。