高齢者の死亡原因
公開日:2016年7月25日 04時00分
更新日:2019年1月28日 13時14分
日本の高齢化による死亡原因の変化
日本は、高齢化が急速に進んでいますが、高齢化は日本の死亡原因にも、大きな変化をもたらしています。例えば、厚生労働省が行っている「年齢調整死亡率」の調査結果から、肺炎で亡くなった人の状況をみてみましょう。1940年に肺炎で亡くなった人の死亡率は、154.4(人口10万人対)でした。その後、法律に基づいた健康診断や予防接種の励行、治療薬の開発などが行われ、1971年には22.1まで減少しました。この頃には、悪性新生物(がん)や心疾患により亡くなる人が増加傾向となっています。特に悪性新生物による死亡者は、現在も増加傾向が続いており、主な死因の第1位を占めています。
一方、一時は減少傾向が続いていた「肺炎による死亡」ですが、日本が高齢化社会(高齢化率7%以上)に突入した1970年頃から再び増加傾向となり、2013年には97.8まで増加しています。特に高齢になるほど死亡率が高くなり、肺炎で亡くなる人の97%以上を、65歳以上の高齢者が占めています(グラフ、表1)。
年齢 | 死亡者数 |
---|---|
0-4歳 | 63 |
5-9歳 | 19 |
10-14歳 | 13 |
15-19歳 | 13 |
20-24歳 | 18 |
25-29歳 | 31 |
30-34歳 | 47 |
35-39歳 | 75 |
40-44歳 | 125 |
45-49歳 | 224 |
50-54歳 | 366 |
55-59歳 | 677 |
60-64歳 | 1,560 |
65-69歳 | 3,696 |
70-74歳 | 6,032 |
75-79歳 | 11,681 |
80-84歳 | 22,231 |
85-89歳 | 31,171 |
90-94歳 | 26,418 |
95-99歳 | 11,906 |
100歳~ | 2,924 |
不詳 | 10 |
年齢別の死亡原因
では、年齢別の死亡原因の違いを見てみましょう。
55歳から79歳までは、主な死因として悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患の順に多くなっており、いわゆる中年から80歳くらいまでは、上位3位に大きな変化はみられません。しかし、65歳以上になると肺炎が第4位となり、80歳以上では脳血管疾患と順位が入れ替わり、第3位となります。
一方、多くの年代で第1位だった悪性新生物(がん)は、80歳以上になると割合が少なくなります。その代り、85歳以上では老衰が増えはじめ、95歳以上では死亡原因の第1位を占めています(表2)。
年齢 | 第1位 | 第2位 | 第3位 | 第4位 | 第5位 |
---|---|---|---|---|---|
総数 | 悪性新生物 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 老衰 |
0歳 | 先天奇形等 | 呼吸障害等 | 乳幼児突然死症候群 | 不慮の事故 | 出血性障害等 |
1~4歳 | 先天奇形等 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 肺炎 | 心疾患 |
5~9歳 | 悪性新生物 | 不慮の事故 | 先天奇形等 | その他の新生物 | 心疾患 |
10~14歳 | 悪性新生物 | 自殺 | 不慮の事故 | 心疾患 | 先天奇形等 |
15~19歳 | 自殺 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 心疾患 | 先天奇形等 |
20~24歳 | 自殺 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 |
25~29歳 | 自殺 | 不慮の事故 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 |
30~34歳 | 自殺 | 悪性新生物 | 不慮の事故 | 心疾患 | 脳血管疾患 |
35~39歳 | 自殺 | 悪性新生物 | 心疾患 | 不慮の事故 | 脳血管疾患 |
40~44歳 | 悪性新生物 | 自殺 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 不慮の事故 |
45~49歳 | 悪性新生物 | 自殺 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 不慮の事故 |
50~54歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 自殺 | 脳血管疾患 | 肝疾患 |
55~59歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 自殺 | 不慮の事故 |
60~64歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 自殺 | 不慮の事故 |
65~69歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 肺炎 | 不慮の事故 |
70~74歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 肺炎 | 不慮の事故 |
75~79歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 脳血管疾患 | 肺炎 | 不慮の事故 |
80~84歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 不慮の事故 |
85~89歳 | 悪性新生物 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 老衰 |
90~94歳 | 心疾患 | 悪性新生物 | 肺炎 | 老衰 | 脳血管疾患 |
95~99歳 | 老衰 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 悪性新生物 |
100歳以上 | 老衰 | 心疾患 | 肺炎 | 脳血管疾患 | 悪性新生物 |
- 心疾患:心疾患(高血圧性を除く)
- 先天奇形等:先天奇形、変形及び染色体異常
- 呼吸障害等:周産期に特異的な呼吸障害及び心血管障害
- 出血性障害等:胎児及び新生児の出血性障害及び血液障害
なお、どの年代でも比較的死因としての割合が高い「不慮の事故」は、85歳を過ぎると6位以下まで減り、代わりに「老衰」が徐々に増えてきます。これは、不慮の事故に合うような生活環境から、徐々に家の中にこもりがちになる高齢者の姿を反映していると推測できるのではないでしょうか。その境目が何歳なのかは定かではありませんが、こうした統計データから鑑みると、80歳~85歳くらいなのかもしれません。