高齢者の余暇活動と生きがい感
公開日:2019年5月31日 09時17分
更新日:2023年8月 3日 14時41分
余暇活動とは
余暇活動は生活に必須な食事や睡眠、身の回りの用事などの基本的な活動(1次活動)や、仕事や家事などの労働(2次活動)以外で自由に過ごすことのできる時間(3次活動)です。
余暇活動(3次活動)時間=24時間-生活の基本活動(1次活動)-仕事や家事(2次活動)
余暇活動の高齢者の生きがい感への影響について考えていきましょう。
高齢者の余暇時間
高齢者の余暇時間は年齢層が上がるほど増え、60~64歳では409分(6時間49分)、70歳以上になると500分を超え、70~74歳では505分(8時間25分)にもなります(グラフ1、表1)。
1次活動 (合計) | 2次活動 (合計) | 3次活動 (合計) | |
---|---|---|---|
60~64歳 | 628 | 403 | 409 |
65~69歳 | 653 | 319 | 468 |
70~74歳 | 682 | 253 | 505 |
75~79歳 | 705 | 220 | 515 |
80~84歳 | 739 | 174 | 527 |
85歳以上 | 788 | 111 | 541 |
男女で比べると、女性に比べて2次活動が少ない男性では65歳以上で500分を超え、65~69歳で511分(8時間31分)であり、70歳以上では9時間を超えます。女性は男性に比べて余暇時間が少なく、65~69歳で429分(7時間9分)であり、80歳以上で8時間を超えます(グラフ2、表2)。
6~9時間もの時間を家の中で座ってテレビを見たり、ラジオを聞いたりして過ごすのと、外出して活動的に過ごすのとでは、身体面、認知面、精神面にも大きな差が出てくることが想像できます。
1次活動 (合計) | 2次活動 (合計) | 3次活動 (合計) | |
---|---|---|---|
男性:60~64歳 | 634 | 385 | 422 |
男性:65~69歳 | 658 | 271 | 511 |
男性:70~74歳 | 683 | 192 | 566 |
男性:75~79歳 | 708 | 154 | 578 |
男性:80~84歳 | 741 | 120 | 579 |
男性:85歳以上 | 786 | 90 | 564 |
女性:60~64歳 | 623 | 420 | 397 |
女性:65~69歳 | 649 | 363 | 429 |
女性:70~74歳 | 681 | 306 | 453 |
女性:75~79歳 | 704 | 272 | 464 |
女性:80~84歳 | 737 | 213 | 490 |
女性:85歳以上 | 789 | 122 | 529 |
余暇活動と生きがい感についての調査報告
高齢者618名に対して、余暇活動と生きがい感について調査した研究報告では、「余暇活動を行っているときに生きがいを感じますか」という質問に対し、「はい」と答えたのは男性79.0%、女性87.4%、「いいえ」と答えたのは男性2.8%、女性1.3%、「どちらでもない」と答えたのは男性18.1%、女性11.3%でした(図1)2)。
約8割の人が男女とも余暇活動に生きがいを感じていると答えています。女性の方が男性よりも生きがい感を感じている人が多いことがわかります。
「現在余暇活動に満足していますか」という質問に対しては、「満足している」と「やや満足している」を合わせた「満足している(計)」の割合は男性88.7%、女性90.1%で余暇活動に満足感を得ている人がほとんどだということがわかります。男性8.9%、女性8.0%の「満足していない」人の「余暇活動に満足していない理由」としては、男女とも「時間的な余裕がない」が最も多く、次いで、男性では「仲間がいない」、女性では「家庭での都合」となっています2)。
余暇活動から得られる生きがい感
高齢者はどのような時に生きがいを感じるのでしょうか。
内閣府発表の平成26年(2014年)の高齢者の日常生活に関する意識調査結果から高齢者が実際に生きがいを感じる時の回答を見ると、「趣味やスポーツ」(47.3%)、「友人や知人との食事や雑談」(42.3%)、「家族との団らん」(39.4%)、「旅行」(33.5%)、「孫との交流」(24.0%)、「社会奉仕や地域活動」(15.5%)、「勉強や教養」(12.2%)など、余暇活動で生きがいを得られる機会が多いことがわかります(図2)。
内閣府の平成30年(2018年)版高齢社会白書によると、実際に余暇活動として社会的活動に参加する高齢者は、「活動していてよかったこと」の回答として「新しい友人を得ることができた」(56.8%)、「地域に安心して生活するためのつながりができた」(50.6%)、「社会に貢献していることで充実考えられている」(38.2%)など、満足感や充実感を得ている高齢者も多くいます(リンク1)。
生涯学習を行った知識や技術をどのように生かしているかという質問の回答では、「自分の人生がより豊かになっている」(60代:59.5%、70歳以上:63.2%)という割合が多く、「地域や社会での活動に活かしている」(60代:34.2%、70歳以上:26.4%)では、余暇活動で行ったことがさらに別の余暇活動で生かされているという実態もあります(リンク2)。
高齢者の余暇活動の生きがい感への影響
35~39歳では286分(4時間46分)しかない余暇時間も高齢になるほど増えていきます。2次活動の時間が定年退職などを機に減少する65歳以上では1日24時間中の約3分の1の時間を余暇時間が占めることになります(グラフ3、表3)。
1次活動 | 2次活動 | 3次活動 | |
---|---|---|---|
35~39歳 | 617 | 537 | 286 |
40~44歳 | 610 | 529 | 301 |
45~49歳 | 598 | 525 | 317 |
50~54歳 | 599 | 518 | 323 |
55~59歳 | 604 | 485 | 351 |
60~64歳 | 628 | 403 | 409 |
65~69歳 | 653 | 319 | 468 |
70~74歳 | 682 | 253 | 505 |
75~79歳 | 705 | 220 | 515 |
80~84歳 | 739 | 174 | 527 |
85歳以上 | 788 | 111 | 541 |
若い世代では仕事や家事、育児、介護などの2次活動の時間が1日の3分の1以上の時間を占め、余暇時間は休息や自分の楽しみとして普段できないことを行う時間に充てられますが、高齢者にとっての余暇時間は起きて活動する時間の約半分の時間を占めるメイン活動の時間ともいえるのです。余暇活動の充実感、満足感が高齢者の生活自体の満足感に反映され、余暇活動は高齢者の生きがいに直結してくる時間といえます。
余暇活動に満足できない理由として、男性で「仲間がいない」とあり、高齢期に入るまでに仲間とともに余暇活動を楽しむ経験を行っていることや、高齢期に入ってから積極的な社会活動や地域活動に参加して仲間をつくっているかが余暇活動の充実にも関係してくるといえます。