アンチエイジングとは
公開日:2016年7月25日 00時00分
更新日:2023年12月27日 14時00分
アンチエイジングの意味
アンチエイジング(anti-aging)とは「抗加齢」を意味する言葉です。実際の年齢に逆らうことは出来ませんので、その意味としては「抗老化」となります。いつまでも若々しい心と体を維持したい、実際の年齢よりも若く見せたい(見られたい)、出来るだけ長生きしたい、という欲望は、老若男女すべてに共通しているといえます。
ここ数年、高齢者がいつまでも元気で健康に年を重ねていくことに対する「サクセスフル・エイジング(successful aging)」という言葉が多く使われるようになっています。「アンチ・エイジング」をサクセスフル・エイジングと対比させるならば、むしろ若年層~中年層までに使われることが多い言葉かもしれません。
アンチエイジング医学の定義
アンチエイジング医学とは、疾病の医学が対象としている「病気の治療」から、「健康な人のさらなる健康」を指導するというプラスの医療の考え方を持ち、いわば究極の予防医学ともいえるでしょう。元気に長寿を享受することを目指す理論的・実践的科学を定義としています。例えば、過去に行われた研究ですが、100歳以上の超高齢者の機能的・形態学的な研究によって、バランスのよい生理的な臓器の老化は、多くの人に見られる病的な老化と比べて進行が穏やかであることが分かってきました。
アンチエイジング医学は生活習慣を改善して健康長寿を目指していく医学であり、アンバランスな病的老化の予防、治療を基本としています。また、老化のメカニズム解明や抗加齢医学に基づく医療の実践、各科に渡る全身的医療もアンチエイジング医学の定義としても良いものと考えます。
アンチエイジング医学の意義
アンチエイジング医学は、なぜこのような発展を遂げてきたのでしょうか。
日本や世界でアンチエイジング医学が注目された背景には、エイジングのサイエンスが進んだことがあります。さまざまな研究により、加齢は避けられないものではなく、細胞生物学的なプロセスのひとつとして、医学的な介入による影響を受けることが分かってきたのです。1980年代までは、加齢のプロセスはとても複雑で、医学的な介入は不可能であると考えられていましたが、多くの研究成果により、その可能性が見出されたのです。
また、少子高齢化社会において、高齢者が現役を継続することは、納税者層として活躍していくことにもつながります。今後の日本の社会状況を鑑みると、こういった視点からもアンチエイジング医学が発展していく要因となります1)2)。
アンチエイジング医学とは加齢という生物学的、細胞学的なプロセスに介入し、加齢に伴う動脈硬化や、がんのような加齢関連疾患の発症確率を下げ、健康長寿をめざす医学なのです(表1)。
領域 | 取組内容 |
---|---|
内科領域 | 循環器、呼吸器、消化器、内分泌、代謝 |
脳神経科領域 | 脳血管障害、アルツハイマー病、ストレス |
整形外科領域 | 骨格筋力減退、骨粗鬆症、変形性関節炎 |
産婦人科領域 | 更年期障害、高齢出産、ホルモン |
眼科領域 | 老眼、白内障、加齢性黄斑変性 |
泌尿器科領域 | 男性更年期障害、前立腺障害、性機能減退、ホルモン |
耳鼻科領域 | 高齢性難聴 |
皮膚科領域 | 抗老化、老人性皮膚炎 |
歯科領域 | 歯周炎、歯の消失、口腔乾燥症、口腔味覚障害 |
アンチエイジング医学とは決して難しいものではなく、医療の世界でもごく身近な存在なのです(表2)。
療法名 | 対応する分野 | 方向性、具体例 |
---|---|---|
生活療法 | 栄養療法、運動療法、精神療法 | 栄養指導、運動指導、ストレス対応 など |
薬物療法 | ホルモン補充、免疫強化 | |
サプリメント療法 | 医師の指導の下で服用 |
|
特殊療法 | 皮膚科、形成外科、美容外科による医療 | 皮膚疾患への対応、美肌、しわ・たるみ等 |
特殊療法 | 代替え医療 | 音楽療法、鍼灸、呼吸法、ヨガ、アーユルベーダ |
特殊療法 | キレーション療法 | 有害ミネラルの排出 |
このように、高齢者の有病率が高い疾患や、受診する頻度が多い疾患、健康維持に向けた指導等も、アンチエイジング医療の領域に入っているのです。
また、アンチエイジング医学では、これまでの医療では活用されることが無かったサプリメントの使用や、ストレスケアの対処も含まれています。疾患予防というレベルを超えたアプローチによって、健康レベルをさらに上げていくことが、アンチエイジング医学のアプローチ方法です。また、「加齢による変化」を対象としているアンチエイジング医学は、これからますます重要視されていくことが予測されます。