高齢者の生活習慣
公開日:2019年5月31日 09時24分
更新日:2019年6月11日 09時34分
高齢者が生涯、健康で活き活きと過ごせることは超高齢社会の日本において目指すべき姿です。内閣府による平成30年(2018年)版の高齢社会白書から高齢者の生活習慣の実態と健康状態の関連について考えていきましょう。
高齢者の生活習慣の実態1)
はじめに、高齢者の主観的な健康状態についてみていきましょう。健康状態が良いと答えた人は、55~69歳までが53.3~54.4%という割合に比べて、70歳以上では49.5~51.3%とやや低くなっています。とくに80歳以上では49.5%と半数以下となっています。健康状態が良くないと答えた人は年齢層が上がるごとに増加しており、70歳以上では2~3割の人が健康状態は良くないとしています(グラフ1、表1)。
良い(計) | よくない(計) | 普通 | |
---|---|---|---|
55~59歳 | 53.6 | 10.6 | 35.7 |
60~64歳 | 53.3 | 11.1 | 35.5 |
65~69歳 | 54.4 | 13 | 32.4 |
70~74歳 | 51.3 | 19.1 | 29.6 |
75~79歳 | 51 | 26.2 | 22.8 |
80歳以上 | 49.5 | 28.9 | 21.6 |
(注1)調査対象は、全国の55歳以上の男女。
(注2)「良い(計)」は「良い」「まあ良い」と回答した者の計
(注3)「良くない(計)」は「あまり良くない」「良くない」と回答した者の計
日頃健康のために心がけていることと主観的健康状態
主観的な健康状態が良いと感じる人の91%、良くないと感じる人の86.9%は日頃健康のために心がけていることがありました(グラフ2)。
日頃健康のために心がけていることの内容ごとにみても、ほとんどの項目で健康状態が良くないと感じる人に比べて良いと感じる人の方が割合が高くなっています(グラフ3、表2)。
良い | まあ良い | 普通 | あまり良くない | 良くない | |
---|---|---|---|---|---|
休養や睡眠を十分にとる | 58.3 | 54 | 51 | 47.7 | 42.6 |
栄養のバランスのとれた食事をとる | 66.2 | 59.3 | 56.3 | 55.3 | 50.8 |
健康診査などを定期的に受ける | 51.6 | 54.8 | 55.2 | 51.3 | 45.9 |
酒やタバコを控える | 19.3 | 18.1 | 18.6 | 15.7 | 21.3 |
散歩やスポーツをする | 59.8 | 51.1 | 45.1 | 31.3 | 16.4 |
地域の活動に参加する | 22.1 | 22 | 18.4 | 14.3 | 9.8 |
気持ちをなるべく明るくもつ | 49.7 | 49.1 | 46.8 | 43.7 | 39.3 |
趣味をもつ | 49.3 | 46.8 | 41 | 32.7 | 21.3 |
医療・健康に関する知識を持つ | 38.9 | 35 | 35.8 | 36.3 | 36.1 |
その他 | 1.3 | 0.8 | 1.4 | 2 | 1.6 |
特に心がけていることはない | 9 | 7.3 | 10 | 11.3 | 13.1 |
不明 | - | - | - | - | - |
特に心がけていることがある(計) | 91 | 92.7 | 90 | 88.7 | 86.9 |
外出の頻度と主観的健康状態
外出の頻度についてみてみると、健康状態が良いと感じる人の99.1%は外出していることから、ほとんどの人が外出しているようです。一方、健康状態が良くないと感じる人の77%が外出しており、健康状態が良くないと感じる人のうち、ほとんど外出をしない人が2割程度いることがわかります(グラフ4、表3)。
良い | まあ良い | 普通 | あまり良くない | 良くない | |
---|---|---|---|---|---|
ほとんど毎日 | 80.4 | 70.3 | 70.4 | 49 | 31.1 |
2~3日に1回 | 15.3 | 21.4 | 22.1 | 31.3 | 27.9 |
週に1回 | 2.8 | 5.1 | 5.4 | 10.7 | 11.5 |
月に1~2回 | 0.6 | 1.6 | 0.7 | 4 | 6.6 |
年に数回 | 0 | 0 | 0.3 | 0.3 | 0 |
ほとんど外出をしない | 0.9 | 1.2 | 1 | 4.3 | 23 |
わからない | 0 | 0 | 0 | 0.3 | 0 |
不明 | 0 | 0.4 | 0 | 0 | 0 |
外出をする(計) | 99.1 | 98.4 | 99 | 95.3 | 77 |
会話の頻度と主観的健康状態・世帯形態
主観的に健康状態が良いと感じる人では、ほとんど会話をしないという人はわずか1.1%ですが、健康状態の良くないと感じる人ではほとんど会話しない人は13.1%と高い割合が見られます(グラフ5、表4)。
良い | まあ良い | 普通 | あまり良くない | 良くない | |
---|---|---|---|---|---|
ほとんど毎日 | 90.1 | 87.4 | 87.5 | 79.3 | 67.2 |
2~3日に1回 | 5.2 | 8.3 | 7.6 | 10.3 | 11.5 |
週に1回 | 2.1 | 1.4 | 2.2 | 3 | 6.6 |
月に1~2回 | 1.5 | 2.2 | 1.2 | 3.7 | 1.6 |
年に数回 | - | 0.2 | 0.7 | 0.7 | - |
ほとんど会話をしない | 1.1 | 0.6 | 0.8 | 3 | 13.1 |
わからない | - | - | - | - | - |
不明 | - | - | - | - | - |
会話をする(計) | 98.9 | 99.4 | 99.2 | 97 | 86.9 |
また、世帯別にみてみると、二人以上の世帯ではほとんど毎日会話する人が9割近くいるのに対し、一人暮らしの高齢者では約5割にとどまっています(グラフ6、表5)
ほとんど毎日 | |
---|---|
単身世帯 | 54.3 |
夫婦のみ世帯 | 91.1 |
二世代世代(親と同居) | 92.6 |
二世代世帯(子と同居) | 91.9 |
三世代世帯(親・子と同居) | 95.1 |
三世代世帯(子・孫と同居) | 91.5 |
その他の世帯 | 85.7 |
社会的な活動への参加の有無と主観的健康状態
健康状態が良いと感じる人で何らかの社会的な活動に参加している人は36.8%に対し、健康状態が良くないと感じる人は11.5%となっています(グラフ7、表6)。活動内容としては健康状態が良いと感じる人、良くないと感じる人ともに、自治会、町内会などの自治組織の活動が多くなっています。
良い | まあ良い | 普通 | あまり良くない | 良くない | |
---|---|---|---|---|---|
自治会、町内会などの自治組織の活動 | 21.9 | 17.9 | 20.1 | 9.3 | 6.6 |
まちづくりや地域安全などの活動 | 1.3 | 1 | 2 | 1.7 | - |
生活の支援・子育て支援などの活動 | 2.1 | 1.4 | 0.8 | - | - |
その他のボランティア・社会奉仕などの活動 | 9 | 9.8 | 4.6 | 5.3 | 4.9 |
地域の伝統芸能・工芸技術・お祭りなどを伝承する活動 | 0.9 | 0.4 | 0.8 | 1.7 | - |
その他 | 1.7 | 2.6 | 2.2 | 2.3 | - |
不明 | - | 0.2 | - | - | - |
何らかの社会的活動を行っている(計) | 36.8 | 33 | 30.6 | 20.3 | 11.5 |
特に活動はしていない | 63.2 | 66.8 | 69.4 | 79.7 | 88.5 |
収入のある仕事をする理由と主観的健康状態
健康状態が良い人も良くない人も働く理由は収入が欲しいが半数以上を占めており、健康のためとしている人は10%台にとどまっています。健康状態が良くない人の40%は自分の活力になるから働いていると答えています(表7)。
良い | まあ良い | 普通 | あまり良くない | 良くない | |
---|---|---|---|---|---|
収入がほしい | 53.3 | 57.1 | 63.2 | 59.5 | 60 |
面白い、自分の活力になる | 21.2 | 20.5 | 10.8 | 14.9 | 40 |
友人や仲間を得ることができる | 5 | 1.9 | 4.8 | 2.7 | - |
働くのは体によい、老化を防ぐ | 12.7 | 16.2 | 14 | 13.5 | - |
その他 | 6.9 | 4.3 | 6.8 | 9.5 | - |
不明 | 0.8 | - | 0.4 | - | - |
高齢者の生活習慣の課題
健康のために心がけている活動、外出頻度、会話の頻度、社会的な活動への参加と健康状態を照らし合わせてみると、いずれも健康状態が良くない人よりも良い人の方が行っている頻度が高いという結果でした。
健康のために心がけている活動や外出、会話、社会的な活動への参加などを積極的に行っているから健康状態が良いのか、それとも健康状態が良いから活動性が高いのかは今後のさらなる研究が待たれます。
しかし、健康状態が良くない人では活動や外出、会話を行っていない人の割合が高く、家に閉じこもって生活している人の割合が高いとも言えます。家に閉じこもりがちになると、生活面や精神面などほかの側面までもが低下し、さらに健康状態も悪くなります。そうすると、ますます活動性が低下し、フレイル(虚弱)が進行するという悪循環になることも考えられます(リンク1参照)。
高齢者の活動性を高めるための支援
高齢者の活動性を高めて健康長寿を促すためには、家に閉じこもりがちな高齢者の活動性を上げるための支援や、会話や外出の機会を設ける支援が必要となってくると感じられます。会話の頻度では、ひとり暮らしの高齢者で会話する割合が低いことも見受けられ、ひとり暮らしの高齢者が会話の機会を持てるような地域の環境づくりも考えていく必要があるでしょう。
健康状態が良くない人でも、仕事に面白みや自分の活力を求めている人の割合が高いことから、その人の持っている知識や技術、能力を活かして、充実感や達成感、満足感が得られる活動を見出していくことも、活動性を高める一つの支援となることが期待できます。
健康のために心がけている活動で地域の活動へ参加している人は健康状態別にみても全体的に低く、社会的な活動へ参加しているという人も3割程度にとどまっています。
一方、仕事に就く高齢者は年々増加傾向にあります2)。能力のある高齢者が働くことのできる雇用環境や、退職した後も地域の場で仕事の経験を活かせる場を提供するなど、高齢者が価値を見出すことのできる活動に参加できるようにすることも必要となってくるのではと考えられます。どのような活動や環境であれば、高齢者の活動性を高めることができるのかを見極め、高齢者のニーズを的確に捉えた支援や対策が必要であるといえるでしょう。