高齢者の社会参加活動
公開日:2019年5月31日 09時28分
更新日:2023年8月 1日 13時53分
高齢者の社会参加活動の必要性
1人暮らしの高齢者が増え続ける中、高齢者の孤立や孤独を防ぐためにも、社会参加活動など「人と人とが関わり合う機会」が必要とされています。さらに、社会参加活動を通じて、心の豊かさや生きがいが得られること、自身の健康にもつながるといわれます。そのため、社会参加活動をする高齢者が増えています。
高齢者の社会参加活動の実態
社会参加活動とは、就労だけではなく、ボランティアや町内会などの地域行事の地域社会活動、趣味やおけいこ事も含まれます。厚生労働省の「平成28年(2016年)国民健康・栄養調査報告」によると、60歳以上の社会参加活動への参加者は、全体の58.3%と半数を超えており、60~69歳に限定すると、71.9%にも上ります。60歳以上の男女別の社会活動状況を見ると、男性が62.4%、女性が55%と男性の参加者が多いようです(図1-1、1-2、1-3、表1-1、表1-2、表1-3)。
就労または何らかの活動を行っている(%) | 何も行っていない(%) | |
---|---|---|
60~69歳以上 | 71.9 | 28.1 |
70歳以上 | 47.5 | 52.5 |
総数 | 58.3 | 41.7 |
就労または何らかの活動を行っている(%) | 何も行っていない(%) | |
---|---|---|
60~69歳以上 | 74.6 | 25.4 |
70歳以上 | 51.7 | 48.3 |
総数 | 62.4 | 37.6 |
就労または何らかの活動を行っている(%) | 何も行っていない(%) | |
---|---|---|
60~69歳以上 | 69.6 | 30.4 |
70歳以上 | 44.2 | 55.8 |
総数 | 55 | 45 |
実際に参加している活動は「自治会、町内会などの自治組織の活動」「趣味やスポーツを通じたボランティア・社会奉仕などの活動」「まちづくりや地域安全などの活動」などが上げられています。
社会参加活動のメリット1)
では、社会活動参加者は実際にどのようなメリットを感じているのでしょうか。
社会活動に参加した人が「社会的な活動をしていてよかったこと」として最も多い回答が「新しい友人ができた」でした。次に「地域に安心して生活するためのつながりができた」というもので、半数以上の参加者が活動を通じて「人とのつながり」という点で参加のメリットを実感しています。特に高齢者の一人暮らしや、高齢者夫婦のみの世帯にとって、人や地域との繋がりが大切だという気持ちが表れています。また、「充実感が得られた」や「健康維持や身だしなみにより留意するようになった」という回答も3割を超えており、心身ともに前向きな変化も見られます。
逆に「生活に与えている効用はない」と答えた人は1割以下でした。
このように、多くの人が社会参加活動によって良い変化を感じていますが、意外にも、「60代前からやっておけばよかったと思うことはあるか?」という質問に対しては「特にない」という回答が最も多い結果となっています。これは、高齢になってからでも十分に、体力や知識をつけること、仲間を作ることりなどができる、ということではないでしょうか。
生涯学習
生涯学習とは、名前のとおり人が生涯に行うあらゆる学習を指しています。学校教育はもちろん、社会教育、文化活動、ボランティア活動、趣味のおけいこ事なども含まれ、どれも社会参加活動となります。
文部科学省では、「教育基本法」の精神にのっとり、国民一人一人が自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、「自立」「協働」「創造」の三つをキーワードとする生涯学習社会の実現に向けて、学校教育における学習の充実、社会教育、家庭教育、その他様々な場や機会における学習の充実と環境整備に取り組んでいます(リンク1)。
内閣府が公表した平成30年(2018年)版の高齢社会白書より、1年以内に、生涯学習を行った60歳以上の人は全体の4割以上となっています(図2)。生涯学習の内容は、音楽や美術などの趣味的なものや、スポーツ、教養、社会問題に関するものなど多岐にわたり、その生涯学習によって、「人生が豊かになっている」「自分の健康を維持・増進している」と感じている人も6割近くにのぼります。「何にも生かせていない」は5%前後でした。
このように、高齢者の生活においてメリットが期待できる生涯学習ですが、「生涯学習をしたことがない」人もまだまだ半数以上いる結果となっており、生涯学習に関する今後の環境づくりが求められています。
社会参加は健康がカギ?2)
内閣府の平成29年(2017年)度「高齢者の健康に関する調査」によると、高齢者の主観的な健康状態は、良い26.8%、まあ良い25.5%、普通29.6%、あまり良くない15.5%、良くない3.1%となっています。さらに日頃心がけている健康活動を聞いたところ、上記の回答が「良い」の人は、外出頻度、会話頻度、社会的な活動への参加のすべてが、「良くない」人よりも活発という結果となっています。
例えば、現在行っている社会参加活動についての回答では、下の表のとおり、健康状態に対する回答が「良い」と答えた人ほど社会活動への参加率が高いことが分かります(表2)。
活動内容 | 良い | まぁ良い | 普通 | あまり良くない | 良くない |
---|---|---|---|---|---|
自治会、町内会などの自治組織の活動 | 21.9 | 17.9 | 20.1 | 9.3 | 6.6 |
まちづくりや地域安全などの活動 | 1.3 | 1 | 2 | 1.7 | - |
生活の支援、子育て支援などの活動 | 2.1 | 1.4 | 0.8 | - | - |
その他のボランティア・社会奉仕などの活動 | 9 | 9.8 | 4.6 | 5.3 | 4.9 |
地域の伝統芸能・工芸技術・お祭りなどを伝承する活動 | 0.9 | 0.4 | 0.8 | 1.7 | - |
その他 | 1.7 | 2.6 | 2.2 | 2.3 | - |
合計 | 36.8 | 33 | 30.6 | 20.3 | 11.5 |
特に活動はしていない | 63.2 | 66.8 | 69.4 | 79.7 | 88.5 |
不明 | - | 0.2 | - | - | - |
これは、「健康状態が良いから日常生活が活発でいられる」ということなのでしょうか。あるいは、「日常生活が活発だから健康状態が良い」ということなのでしょうか。健康が先か行動が先か、それを正確に判断することは今後の調査が求められますが、少なくとも主観的な健康状態が「良くない」人は、社会参加率が低いことが明らかです。
主観的な健康状態が「良くない」人は社会参加活動を行いにくい環境にあるのかもしれません。そういった要因から不活発になり、ますます健康状態が悪化する、という悪循環が生じることがないように、主観的な健康が良くない状態でも気軽にかつ安全に社会参加できる環境づくりも、重要なのかもしれません。