高齢者の生活に見る男女の差
公開日:2019年6月21日 09時10分
更新日:2023年6月 8日 13時09分
高齢者の性別による違い
平成29年(2017年)の日本人の平均寿命は男性81.09年、女性87.26年でした(グラフ1、表1)。女性の方が男性よりも平均寿命が長いため、高齢者人口における男女の割合は女性の方が多くなります。平成30年(2018年)の人口を見てみると、65歳以上の高齢者の約6割を女性が占めています。年齢層が高くなると女性が占める割合も大きくなり、85歳以上では人口の約7割を女性が占めています(グラフ2、表2)。
人口の観点から、高齢者の男女間の状況に差が見られます。高齢者の男女をめぐる状況や、就労の性別による違いについてみていきましょう。
男(年) | 女(年) | |
---|---|---|
平成2年(1990年) | 75.92 | 81.90 |
平成7年(1995年) | 76.38 | 82.85 |
平成12年(2000年) | 77.72 | 84.60 |
平成17年(2005年) | 78.56 | 85.52 |
平成22年(2010年) | 79.55 | 86.30 |
平成27年(2015年) | 80.75 | 86.99 |
平成28年(2016年) | 80.98 | 87.14 |
平成29年(2017年) | 81.09 | 87.26 |
年齢階級 | 人口(男性)(万人) | 割合(%) | 人口(女性)(万人) | 割合(%) | 人口合計(万人) |
---|---|---|---|---|---|
65~69歳 | 474 | 48.4% | 506 | 51.6% | 980 |
70~74歳 | 369 | 46.9% | 418 | 53.1% | 787 |
75~79歳 | 301 | 44.7% | 373 | 55.3% | 674 |
80~84歳 | 217 | 40.8% | 315 | 59.2% | 532 |
85歳以上 | 170 | 30.8% | 382 | 69.2% | 552 |
65歳以上(再掲) | 1,530 | 43.4% | 1,993 | 56.6% | 3,523 |
85歳以上(再掲) | 170 | 30.8% | 382 | 69.2% | 552 |
単独世帯で暮らす高齢者の性差
平成29年(2017年)のデータでは、65歳以上の者のいる世帯のうち、単独世帯は47.4%で、単独世帯全体の32.6%が男性、67.4%が女性となっています。女性の単独世帯は、男性の単独世帯の2倍以上です。年齢層別で見てみると、女性は70歳以上の高齢の単独世帯が多いことがわかります。単独世帯の高齢者は今後も男女ともに増加すると推計されていますが、男性の増加ペースが女性よりも上回っているため、男女差は少しずつ縮まると推計されています3)。高齢女性の単独世帯が多いことは、介護の課題にもつながります(グラフ3)。
高齢者の介護状況の性差
平成28年(2016年)の同居の主な介護者の男女差を見てみると男性が34.0%、女性が66.0%で、女性が介護にあたっている割合が大きく、年齢層別にみてみると、約7割が60歳以上です(グラフ4)5)。
また、ほとんど1日中同居の介護にあたっている者の割合を男女別にみても、妻や娘、子の嫁といった女性が7割以上を占めています。介護の負担の多くが妻、娘、嫁などの女性にかかっている傾向にあり、ほとんど終日介護をしているのも7割以上が女性です(グラフ5)。
女性への介護の負担は、男女の就労状況にも影響していることがデータからも見受けられます。高齢者の就労状況の男女差を見ていきましょう。
高齢者の就労状況の性差
平成28年(2016年)の日本の高齢者の就業者数は男性462万人、女性308万人、就業率は65歳以上で男性30.9%、女性15.8%であり、過去5年連続で増加しています。世界の主要国と比較しても日本の高齢者は高い就業率を誇っています。(グラフ6、グラフ7、グラフ8、表3)
男(万人) | 女(万人) | |
---|---|---|
平成24年(2012年) | 365 | 231 |
平成25年(2013年) | 390 | 247 |
平成26年(2014年) | 416 | 267 |
平成27年(2015年) | 443 | 288 |
平成28年(2016年) | 462 | 308 |
年齢層別の就業者の割合は、男性は、60~64歳は79.1%、65~69歳は54.8%、70~74歳は34.2%、女性は、60~64歳は53.6%、65~69歳は34.4%、70~74歳は20.9%で60歳を超えて働き続ける人は男女とも半数以上であり、70歳を超えても男性3割、女性の2割が就労していることがわかります(グラフ9)。
雇用形態とその理由
雇用形態は役員を除く高齢雇用者の75.1%が非正規職員・従業員であり、10年間で約2.5倍に増加しています。非正規職員・従業員の形態で働く理由としては、「自分の都合のよい時間に働きたいから」が男性28.7%、女性37.2%で最も多い理由となっています。女性に特徴的な理由としては、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」があげられます6)(リンク1)。
働きたい高齢者と仕事に就けない高齢者
高齢者のうち「70歳以上まで働きたい」、「働けるうちはいつまでも働きたい」と思っている人の割合は約8割を占めており7)(グラフ10)、高齢者の多くは働きたい意欲があることが伺えます。働きたい理由を男女別にみてみると、男女ともに「経済上の理由」が多いですが、「いきがい・社会参加」の理由の割合も増えており、とくに女性でその傾向が高くなっています。高齢であるほど、「健康に良いから」という理由も大きくなっています8)(リンク2)。
一方、仕事がしたいのに就けない理由としては、男女ともに「適当な仕事が見つからなかった」、「本人の健康」の割合が高くなっています。女性では男性に比べて「家族の健康」、「家庭の事情」の割合が高く8)(リンク2)、家族の介護・看護といった負担が女性に大きくのしかかっていることが影響していると考えられます。
生きがいや社会参加といった自分の人生を楽しむための目的で働きたい高齢者は多く、高齢者が生涯にわたって活き活きと暮らすためには、本人の健康はもちろん、家族の健康も保つことが大事です。
また、家族の健康が損なわれたときにも働くことのできる支援や体制が整った社会環境と、高齢者のライフスタイルに合った多様な働き方ができる雇用環境が必要とされるでしょう。