日本人はなぜ長生きか
公開日:2016年7月25日 19時00分
更新日:2023年1月 4日 14時29分
日本人の長生きの理由
日本人が長生きできる理由は、いくつか考えられます。厚生労働省が公表している令和3年(2021年)の簡易生命表1)によると、日本人の平均寿命は、男性81.47歳、女性87.57歳で、世界的にもトップクラスです。
では、日本人の平均寿命は、なぜこれだけ長いのか。その理由をいくつかみてみましょう。
日本食(和食)
日本には、「日本食(和食)」という、独特な食文化があります。例えば、日本食の特徴である「脂肪分の少なさ」を考えてみましょう。諸外国と比較すると、日本は脂肪摂取量が非常に少ないことがわかります(グラフ)。
その他、米飯を中心とした「穀物摂取量」や、魚の摂取量が多いという特徴があります。さらに、豆腐、納豆、味噌をはじめとする「大豆製品」の摂取も多く、これらは動脈硬化になりにくい食文化であるといえます。また日本人は、はるか昔から、緑茶を飲む習慣がありますが、緑茶に含まれるカテキンやビタミンCなど、「抗酸化物質」を多くとることで、動脈硬化やがんなどを予防する効果が期待できます。同様に、食物繊維や乳製品なども、日本の平均寿命の延伸に影響している可能性があります。これらは全て日本の食事である、和食の特徴といえます。
和食は、日本の伝統的な食文化であり、一汁三菜を基本に、新鮮な食材が素材そのものの味を活かしながら、多様な方法で調理されていることから、栄養のバランスが非常に優れているものです。
しかし、伝統的な和食が食生活の中心にあった時代では、脚気や各種の栄養欠乏症に悩まされ、短命な人が多かったという歴史があります。つまり、現代の日本の健康長寿を支えているのは、伝統的な日本食というよりは、現在の多少アレンジされた日本食であることが考えられます。
医療制度の充実
日本人が長生きである理由に欠かせないのが、医療制度の充実です。日本には複数の社会保険(医療保険、年金保険、労災保険、雇用保険、介護保険)制度があります。これらに加入することは義務付けられていますが、これを「国民皆保険制度」といいます。社会保険に加入しておくことによって、病気や怪我、入院など万が一のときに保障してくれる制度です。
そのため、受けたいときに受けたい医療を、金銭的な心配をせずに受けることができます。もちろん、医療費が高額となり、自己負担分の負担が難しい場合は「高額療養費制度」もありますので、比較的高額となる医療でも、受けやすい環境にあるといえるでしょう。
また、年に1回の定期健康診断を受ける体制が整っており、異常の早期発見・早期治療が可能となり、病気を重症化することなく治療する、あるいは病気そのものを未然に防ぐことができます3)。現時点では、後期高齢者(75歳以上)の健康診査の受診率は、平成25年度で25.1%でしたが、今後さらに高齢者が増加することで、後も上昇することが予測されます4)。
一方、諸外国においてはこの「国民皆保険制度」がなく、医療費はすべて自費という国があります。その場合、民間が運営する医療保険(社会保障)に加入し、必要な医療をまかなわなければならなくなります。このような国では、貧富の差が大きくなるため、貧困層は健康に対して気遣うことができず、病気に気づいた時には重症化しているということも多いようです。
さらに日本は、自費にはなりますが、人間ドックや脳ドック、がん検診など、より詳細な検査を含む健康診断を受けることができます。貧富の差が諸外国と比べて著しくはない日本は、多少の追加費用を払ってでもこの健康診断を受けるという方も、多く見受けられます。
こうした医療制度の充実が、日本国民全員の平均寿命を底上げし、結果として世界トップクラスの長寿国となっていると考えられます。さらに日本の医療制度は、健康長寿の実現に向け、治療だけでなく、疾病予防や介護予防にも積極的に目を向けて、政策として行っています5)。
このような国を挙げての取り組みも、日本人の健康長寿に大きく貢献していると考えられます。