生きがいを持つための方法
公開日:2019年5月31日 09時20分
更新日:2019年6月 3日 11時24分
高齢者が生きがいを持つためにはどのような要素や取り組みが必要なのでしょうか。生きがいに必要な要素と生きがいを持つための方法について考えていきましょう。
生きがいに必要な要素とは
高齢者の生きがいの概念は、「生きるために見出す意味や価値」と「生きていることに対しての充実感や達成感、満足感といった自分自身に見いだせる肯定的な感情」の二つの面があります1)。
そのため、生きがいを得るためには、自分自身が満足感や充実感、達成感を得たいという欲求があること、行いたいことや目標とすることがあること、生きるための価値や意味を見いだすことができ、打ち込むことのできる活動を持っていることが必要です。
生きがいに必要な要素
- 自分自身が満足感や充実感、達成感を得たいという欲求があること
- 行いたいことや目標とすることがあること
- 生きるための価値や意味を見いだすことができ、打ち込むことのできる活動を持っていること
生涯現役社会の高齢者
近年では、定年を過ぎ、65歳を過ぎても働き続ける高齢者も多くいます。内閣府発表の平成30年版高齢社会白書によると高齢者に対して「あなたは、何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいですか?」という質問に対しての回答では、65歳を超えて働きたいと回答した人は79.7%を占めています(図1)2)。
団塊世代が75歳を迎える2025年には、75歳以上が全人口の18%を占め、2060年には全人口の約40%を65歳以上が占めると推計されています3)。高齢者の占める割合が多くなっていくわが国では、高齢者が年齢に関係なく、持っている知識や技術を活かして活躍し、生涯現役で働くことが社会の活力となり、生涯現役で働くことは高齢者の生きがいともなるでしょう。
65歳以上の高齢者が働く理由
実際に働く高齢者に働く理由を聞いた調査では、60~64歳は「生活の糧を得るため」という回答が最も多くみられましたが、65~69歳では「健康にいいから」、「いきがい、社会参加のため」という理由が増えています3)。65歳以上の高齢者では、「自分自身のために働く」、「仕事に生きる価値や意味を見出している」人の割合が多いことがわかります(図2)。
65歳を過ぎても仕事をするために必要なこと
働く高齢者に65歳を過ぎても勤めるために必要なことを聞いた調査では、「健康・体力(66.8%)」が最も多く、次いで「仕事の専門知識・技能があること(47.2%)」という回答でした(図3)3)。
高齢者が生涯現役で活躍する社会のためには、65歳以上を雇用できる環境と、高齢者自身の健康な身体と仕事に必要な知識や技能が必要であると言えます。
高齢者が生きがいを持つための方法
生涯現役で働くことを生きがいとしている人がいる一方で、仕事だけが生きがいで生活を送ってきた中高年サラリーマンが、仕事を定年退職した途端に生きがいを失ってしまうケースも増えていると言います。子育てや家族のための家事を生きがいとしてきた中高年主婦の場合は、子どもの巣立ちやパートナーとの別れなどを機に生きがいを失ってしまう場合もあるでしょう。
生きがいは、その人の生きるために見出す意味や価値であり、その人自身が満足感や幸福感を得るものであるため、個人によってその内容は異なります。高齢期に入っても活き活きと人生を過ごすためには、高齢期に入ってからも健康と生きがいを保ち続けることが必要です。
そのためには、現役の頃から社会参加や地域とのつながりを持つこと、趣味や余暇を楽しむ余裕を持った生活をすることが大切であり、いろいろなことに興味を持って経験し、自分が価値を見出せるものに出会うことです。
健康と生きがいづくりの支援「健康生きがいづくりアドバイザー」
高齢者の健康と生きがいづくりを支援する専門職として一般社団法人健康・生きがい開発財団が養成している「健康生きがいづくりアドバイザー」と「生きがい情報士」という資格があります(リンク1)4)。
健康生きがいづくりアドバイザーは中高年者を対象として、健康や生きがいづくりに必要な知識や情報、機会の提供や相談にのる専門職です。自分の特技を生かして、健康と生きがいをその人自身が見つけられるような支援をフィットネスクラブや医療機関、福祉施設、企業、自治体などで行っています。
生きがい情報士はコンピュータ技術等を活用して幅広い生きがいの情報を検索、提供し、具体的なライフプランを立てて相談者の生きがいづくりを支援します。健康生きがいづくりアドバイザーが対象とする中高年よりも若い世代の支援も行います。
「お互いさま」精神でつくる生きがい
昔の日本の地域社会は「お互いさま」精神で家族や親せき、地域の人々の助け合いによって生活は成り立っていました。近所に相談し合える存在がいて、お互いの変化に気付き、お互いが手を差し伸べ合うという関係性がみられました。
しかし、戦後の復興から急速な経済成長に伴う産業構造の変化により、人々は都会に集中するようになり、核家族化が進みました。さらに多様化する個人が求める自由やプライバシーが尊重される世の中では近所づきあいばかりか、家族におけるつながりも弱まってきています。このような中で、地域の人と人のつながりは弱まり、地域への帰属意識は低下します。地域社会の脆弱化が進み「お互いさま」の精神は薄れつつあります。
歳を重ねていくうちに、一人では解決ができない様々な生活課題を抱えるようになります。その中でも、住み慣れた地域で自分らしく生きていくには、地域に暮らす人たちがお互いに、その人の状況にあわせた支援を受けられるように体制を整える必要があります。すなわち、住み慣れた地域で支援を必要とする全ての人たちの暮らしをお互いに支えられるよう「地域包括ケア」体制をさらにすすめていく必要があります。
「地域包括ケア」体制の整備を行うのは地域の行政の役割です。しかし、実際には地域の人々を含む多様な人たちが地域包括ケアの体制に参加することと「お互いさま」の精神の助け合いが必要です。
昔の日本の地域社会は「支え手(現役世代)」と「受け手(高齢者)」に分かれた社会でした。しかし、これからの日本の超少子高齢社会では地域に暮らす全ての人たち一人一人が役割をもち、お互いの暮らしと生きがいを共に創り、共に高め合う地域社会の再生が求められています5)。
地域によっては、地域の人々が主体的になって地域の課題を解決するための取組みが進んでいます(リンク2)。「お互いさま」の精神で、住み慣れた地域の課題を解決するためにできることをすることも生きがいづくりに役立つことでしょう。