高齢者男性の生きがい
公開日:2016年7月25日 08時00分
更新日:2019年2月 1日 18時10分
男性の生きがいとは
男性の生きがいについて語るために、とても良い例があります。
世界最高齢の70歳と75歳で3度のエベレスト登頂を果たした三浦雄一郎さんは、50代には食習慣と運動不足がたたって、肥満、高血圧、糖尿病、痛風という病を抱えていました。しかし、このままではいけないと一念発起し、足に重りをつけ、近所の山登りからトレーニングをはじめました。
最初は80歳の高齢者にも小山登りでおいていかれましたが、1年後には富士山を走って下りられるまでになりました。そして、3度のエベレスト登頂を果たしたのです。
この例は、65歳という「高齢者」に位置づけられる年齢から新たな何かを開始しても、世界で初めてといえるような快挙を成し遂げるまで、体力、気力が回復する可能性があるという、希望に満ちたお手本です。
その一方で、どのような競技のアスリートでも、一度目標を失うと、体の老化、心の老化から逃れることはできず、過去に獲得した体力や気力も、数年あるいは数か月程度の油断で、すべてを無くしてしまうことがあります。
このように、男性、特に高齢者男性の生きがいとは、人生の目標をいくつになっても持ち続けることにあるといえるでしょう。
濡れ落ち葉問題
濡れ落ち葉問題という言葉をご存知でしょうか。定年退職後趣味もなく暇を持て余した夫が、少しの間外出するだけでも、家の中での日常の生活の上でも、妻の後をひっきりなしにくっついて歩く様子を、想像できますでしょうか。このような状態のこと、濡れた落ち葉を手で振り払おうとしても、貼り付いて取れない様子に例えて、このような呼び方をします。男性の視点からみれば「濡れ落ち葉亭主」、妻である女性の視点からみれば「主人在宅ストレス症候群」ともいわれます(ただし、正式な病名ではありません)。
働き盛りの頃、一家の主でありなおかつ夫である男性は外で働き、女性である妻は家で子育てや家事をするなど、お互いに夢中になることがあったため気にならなかったことが、お互いの自由になる時間が増えることによって気になることが増えはじめ、それにより妻がストレスを感じるというのが原因になるようです。
濡れ落ち葉問題の対策
濡れ落ち葉問題の対策としては、夫である高齢者の男性が趣味を持つこと、あるいは社会参加を積極的にすることが必要であるといわれています。
また、夫婦の間で、共通の趣味を持つことも良いでしょう。2人で旅行に行けば、それだけで会話が増えます。また、共通の趣味があれば夫も妻の後を追うだけでなく、自ら率先して行動できる場面も出てくるでしょう。濡れ落ち葉のような疎ましい存在になる前に、趣味を持つこと、社会参加をしていくということは、高齢夫婦にとって極めて大切な習慣となります。
高齢者男性がどのような時に生きがいを感じるか
内閣府が公表している「平成27年版高齢社会白書」によると、生きがいを感じるときは、男女合わせた総数では「孫など家族との団らんの時(48.8%)」が最も多くなります。
女性と男性を比較すると、女性は「孫など家族との団らんの時(55.4%)」、「友人や知人と食事、雑談をしている時(50.9%)」、「おいしい物を食べている時(44.4%)」 に生きがいを感じていました。その一方で、男性は趣味やスポーツに熱中している時(49.0%)が最も多く、次いで、孫など家族との団らんの時(40.7%)夫婦団らんの時(38.1%)、旅行の時(36.4%)に生きがいを感じているという結果が出ました(グラフ1)。
これらのことから、男性は友人知人と過ごすよりも、自分の好きなことをして、あるいは家族と過ごすということに生きがいを感じているということが分かります。また、夫婦で過ごす時間が生きがいだといっている男性が多い一方で、妻である女性からみるとどうでしょうか。前述したような「濡れ落ち葉問題」にも気をつけなければなりません。
男性では、この他にも仕事をしている時に生きがいを感じる、社会奉仕や地域活動をしている時、勉強や教養に身を入れている時に生きがいを感じている人が多いようです2)。家庭のために一生懸命働いてきた世代だからこそ、仕事や社会奉仕などといった社会参加に対して、大きなやりがいを感じるのかもしれません。