高齢者の運動習慣
公開日:2019年5月31日 09時22分
更新日:2023年6月 8日 12時52分
高齢者の運動習慣の実態
適度な運動を続けることは健康長寿の実現に必要です。高齢者で運動習慣のある人はどのくらいの割合いるのか、どのくらいの頻度運動しているのか、1日の歩数と体力との関連についてみていきましょう。
高齢者の運動習慣がある人の割合
「運動習慣のある人」とは、1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続している人のことを言います。厚生労働省の調査では、運動習慣のある人は65歳以上の男性で46.2%、女性では39.0%となっています。男女ともに健康日本21(第二次)の目標値に届いていない状態です(図1)。
高齢者の1日の歩数の平均値
65歳以上の男性の1日の歩数の平均値は5,597歩、女性は4,726歩であり、健康日本21(第二次)の目標値である男性7,000歩、女性6,000歩には届いていません(図2)。
高齢者が運動を行う頻度
平成28(2016)年の国民健康・栄養調査の1週間の運動日数をみてみると全く運動をしていないか、毎日運動しているかのどちらかに偏っていることがわかります(リンク1)。
年齢および性別ごとにみてみると、全く運動をしていない割合が多かったのは65~74歳の男性(41.3%)と75歳以上の女性(41.2%)、毎日運動をしている割合が高かったのは男女ともに75歳以上(男性28.5%、女性21.7%)でした(表1)。
65歳以上男性 | 65歳以上女性 | 65~74歳男性 | 65~74歳女性 | 75歳以上男性 | 75歳以上女性 | |
---|---|---|---|---|---|---|
運動なし | 38.4 | 39.5 | 41.3 | 38.2 | 34.4 | 41.2 |
毎日運動 | 23.5 | 19.4 | 19.8 | 17.5 | 28.5 | 21.7 |
高齢者の体力
スポーツ庁が公表している平成29年(2017年)度の体力・運動調査結果をみてみると、高齢者の体力テストの合計点は年齢層が高くなるごとに体力テストの合計点数は低くなる傾向にありますが、年々体力テストの合計点数は増加傾向にあります(図3)。
また、65歳以上のどの年齢層においても運動・スポーツを実施している頻度が高いほど、体力テストの合計点も高いという結果がみられています(図4)。
高齢者の運動頻度と歩行連続時間の関連
65~79歳の運動頻度と連続して歩行できる時間との関連をみてみると、男女ともに運動頻度が高い人ほど連続して1時間以上歩行できる人の割合が高いことがわかります(図5)。
また、日常的に運動をしている高齢者や連続して歩行できる時間が長い人ほど生活の充実度が高いという結果も見られています(図6)。
高齢者の運動習慣の課題
高齢者の体力は年々増加傾向にはありますが、運動習慣は毎日運動をしている人と、全く運動していない人と二極化しており、とくに高齢女性の運動習慣のなさが目立ちます。
スポーツ庁の世論調査から運動をしない理由としては、60代の男性では「年を取ったから」「特に理由はない」「仕事や家事が忙しいから」「面倒くさいから」の回答数が多かった。また、70代の男性は「年をとったから」、「特に理由はない」という回答が多く見られました。
一方、60代の女性では「特に理由はない」、「年をとったから」、「仕事や家事で忙しいから」、「面倒くさいから」の回答数が多く、70代の女性では「年をとったから」が有意に多く、「特に理由はない」という回答も多く見られました(リンク2)。
運動習慣がある人ほど体力テストの点数や歩行連続時間が長く、また生活の充実度も高いことが分かります。高齢者の運動をしない理由として「年をとったから」が多く挙げられています。しかし「年をとったから」こそ、運動習慣を持つべきと言えます。運動は何歳から始めても効果があることが分かっています。
運動をしない理由として、「特に理由はない」、「面倒くさい」といった回答も多く、運動習慣を持つこと自体への意識が低いことや運動に対してのマイナスのイメージを持っていることも伺えます。
高齢者が運動習慣を持つためには
運動をしていない高齢者は、一人でできる運動を望んでおり、月に1~2回運動をしている高齢者は集団運動を望むようになるという研究報告があります5)。全く運動をしていない高齢者が運動習慣を持つためには、いきなり地域の運動グループへの参加を促すのではなく、まずは自宅で、一人で行えるエクササイズを指導するという機会を設ける工夫も必要かもしれません。高齢者が運動に取り組んでみようか、少し体を動かしてみようかという気持ちを動かす働きかけを考えることが大切であるといえるでしょう。