第34回 料理が苦手なら計測しよう
公開日:2021年9月10日 09時00分
更新日:2021年9月10日 09時00分
宮子 あずさ(みやこ あずさ)
看護師・著述業
この連載で、私はたびたび料理ができない、あるいは苦手な人の話を書いてきた。その背景には、訪問看護師として居宅支援をする中で、利用者の家事能力の違いが、生活の質をかなり決めるとの発見がある。
もちろん、掃除や洗濯も大事な家事。それでも私が料理に注目するのは、面倒くさいからと言って後回しにできず、必ずなんとかしなければならないからである。
掃除が面倒ならば、しない人はたくさんいる。洗濯が面倒だからと、着替えをけちる人もいる。しかし食事はそうはいかない。自分で作れなければ、なんらかの形で調達して、食べなければならない。
私は、料理をしないと決めたのであれば、それはそれでよいと思う。ただ、2019年10月11日掲載の
で書いたように、コンビニやスーパーで出来合いのものを買い続けるのは、お勧めできない。面倒だからと炭水化物ばかりの食事になりやすいからである。だから、週に何食かでも、宅配弁当を勧めるわけだが、宅配弁当はますます充実してきた。背景には、コロナの影響もあるだろう。ステイホーム、飲食店の営業時間短縮と、家で食べるしかない傾向が1年以上続いている。外食産業は競ってテイクアウトメニューを増やし、宅配弁当も進化を続けている。
とはいえ、料理が自分で作れれば、それに越したことはない。何より、食べたいものが食べられるのがうれしい。私はトマトが好きで、夏の間はトマトばかり食べている。
ある時は塩を振りそのままで。ある時は湯むきして刻み、冷たいパスタにかけて。凝った料理でなくとも、おいしいものは食べられるのだ。
でも書いたように、私は料理が大の苦手であった。今も大して好きではない。だからなるべくささっと効率よく済ませたいと思う。この時写真で紹介したレシピカードは、そのための工夫だったのだ。
そしてそのレシピカードには、調味料などの分量が、グラム単位で書かれており、この細かい計測こそ、大事なポイントなのである。なぜなら、私のように料理が苦手な者は、目分量が苦手。かつ、熱心に取り組まないから、経験も大して蓄積されない。よって、全て正確に測るほうが楽なのである。
私も夫も、料理の腕と熱意は似たり寄ったりで、かくしてわが家にはメジャーカップ、はかりなど、計測する道具がたくさんある。そして、測ったあとの調味料類は小さなボウルに小分け。その様子は、まるで化学実験のようだ。
料理の得意な人から作り方を聞くと、目分量での調理が実にうまい。そういう人は、「この料理は簡単ですよ」と言った後で、「お醤油とみりんと塩と......。どれも適当でいいんです」。笑顔でこう言われてしまう。
しかし、料理が苦手な者は、何も考えずに測るのが楽。これをわかっていれば、教えやすいのではないだろうか。シビアに言えば、訪問看護を受けるようになってからでは、遅い。男性も女性も、元気なうちに、簡単な煮炊きくらいはできるようになっておきたい。
料理は、段取りを考え、立ち仕事をし........頭と身体を適度に使う。定年を迎えるあたりに取り組んでおくと、先々の老い方にもよい影響があると思う。
著者
- 宮子 あずさ(みやこ あずさ)
- 看護師・著述業
1963年生まれ。1983年、明治大学文学部中退。1987年、東京厚生年金看護専門学校卒業。1987~2009年、東京厚生年金病院勤務(内科、精神科、緩和ケア)。看護師長歴7年。在職中から大学通信教育で学び、短期大学1校、大学2校、大学院1校を卒業。経営情報学士(産能大学)、造形学士(武蔵野美術大学)、教育学修士(明星大学)を取得。2013年、東京女子医科大学大学院看護学研究科博士後期課程修了。博士(看護学)。
精神科病院で働きつつ、文筆活動、講演のほか、大学・大学院での学習支援を行う。
著書
『宮子式シンプル思考─主任看護師の役割・判断・行動1,600人の悩み解決の指針』(日総研)、『両親の送り方─死にゆく親とどうつきあうか』(さくら舎)など多数。ホームページ: