やせ
公開日:2016年7月26日 10時00分
更新日:2019年6月19日 14時39分
やせの症状
「やせ」とはいうまでもなく体重が減少していることです。ある時点での体重も重要ですが、体重の急激な減少という変化があった場合には、その原因をしっかり考える必要があります。
「やせ」が進むと脂肪量が減少するので、骨が突出し褥瘡(じょくそう;床ずれ)などの原因となります。また皮膚が弾力を失い、硬く乾燥し、冷たくなります。髪もパサつき、抜けやすくなります。
病的な「やせ」のことを「るい痩(るいそう)」と呼びます。「るい痩」の場合、ベースに低栄養状態があることがほとんどです。低栄養が進むことによって、筋肉量の減少のほかにも倦怠感などの症状や貧血、血圧低下、浮腫、創傷治癒遅延(傷が治りにくくなること)、免疫能の低下などが起こります。
やせの原因
やせの原因は多彩ですが、(1)摂食の不足・障害、(2)消化吸収の障害、(3)内分泌・代謝障害、(4)体外への消失、などに分類することが可能です。
(1)摂食の不足・障害
高齢者の医療では重要な問題です。高齢者に起こる食事摂取に関する問題は「食べない」ことと「食べられない」ことに分けられます。
「食べない」ということは、食欲の低下は訴えずに食物摂取をしない場合です。食物を口元に運んでも摂取しない、あるいは、口腔内に食物を含んでもその先に進めていかず、最終的には、口の外に出してしまう、いわゆる「拒食」の状態もあります。多くの場合、認知症に伴うものであるため、mini-mental state examination (MMSE)などを用いた認知能の評価が参考になります。
「食べられない」とは、食欲が低下している場合や、食欲はあるものの、嚥下(えんげ:飲みくだすこと)しようとするとむせてしまう、あるいは飲み込んでも通過障害がある場合です。
食欲低下を訴える場合は、消化器系の器質的疾患や代謝疾患、抑うつ状態やうつ病などの精神医学的問題の可能性があります。また、服用している薬物との関連を検討する必要もあります。
嚥下しようとするとむせてしまう時は、嚥下機能を耳鼻科やリハビリテーション科の協力を得て評価すべきででしょう。
(2)消化吸収の障害
消化管のがんや腸閉塞、慢性膵炎、寄生虫、吸収不良症候群、蛋白漏出性胃腸症など、消化器系の異常で「やせ」が起こることがあります。
高齢者は便秘の方が多く下剤を常用されている方も多いと思われますが、行き過ぎた下剤の使用も「やせ」の原因となります。
(3)内分泌・代謝障害
代謝・内分泌系でやせの原因になるものとしては、血糖がコントロールされていない糖尿病、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫などがあります。またアジソン病などの副腎機能低下による食欲低下も「やせ」の一因となります。
(4)体外への消失
慢性の感染症などの消耗性疾患では、エネルギーを消費しやすくなります。
やせの診断
身長と体重の比率をみるBMIで18.5を下回ると「低体重」と判定されます。
病的な「やせ」である「るい痩(るいそう)」の診断基準は、主に標準体重を20%以上下回ること、もしくは6か月以内に10%以上の体重減少がある場合を指します。
やせの治療
基礎疾患があれば、まずはその治療を行います。栄養状態の改善のため、食形態の検討やカロリー補助食品の利用、胃瘻(いろう)造設などを必要に応じて行います。
嚥下障害がある場合、その原因が不可逆的なものであるのか、経口摂取を断念せざるを得ないのか、などについて評価が必要となります。
やせのケア・予防
「やせ」が病的な「るい痩」に進展するのを抑えるには、食欲や食事量の低下を早めに察知することが大切です。基礎疾患などがないか、早期にチェックすることで病的な「るい痩」を防ぐことができるケースもあります。
痩せている方は褥瘡を起こしやすいので、予防的スキンケア(皮膚を清潔にし、保湿剤などを用いて保湿を十分に行う、保護材を用いて皮膚を保護するなど)をしてあげるとよいでしょう。