胸痛
公開日:2016年7月25日 01時00分
更新日:2019年6月20日 09時42分
胸痛の症状
胸痛と一言でいっても、その症状はいろいろ様々です。
「胸が締め付けられるように痛い」「なんとなく胸が重たい感じがある」という胸部絞扼感(こうやくかん)、胸部不快感が主体の場合には、心臓の周りをめぐる冠動脈に狭いところや詰まりがある虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん:狭心症や心筋梗塞など)という病気を疑います。
突然出現した胸から背中の痛みは、大動脈解離(だいどうみゃくかいり:大動脈という血管が突然裂ける病気)や肺血栓塞栓症(はいけっせんそくせんしょう:別名エコノミークラス症候群ともいい、足にできた血栓が肺に飛んで肺動脈を詰めてしまう病気)の可能性があります。
「食後に胸が重たい・痛い」という場合は消化器系の症状、特に胆石や胃・十二指腸潰瘍などの病気を疑います。
「深呼吸をすると胸が痛い」ときには、自然気胸(しぜんききょう:肺に小さな穴が開いて空気漏れを起こし、胸腔にたまった空気で肺が圧迫される病気)の可能性があります。
「胸が刺すように痛い」「軽くちくちくする」といった症状も多いですが、このような場合はあまり心配しなくても良いかもしれません。
胸痛の原因
なんとなく「胸が痛い」というと心臓が原因のように思えますが、そんなことはありません。胸痛を症状とする病気は非常に多く、心臓であれば前述の虚血性心疾患や大動脈解離、肺血栓塞栓症などの緊急を要する病気の他に、急性心膜炎などの病気でも胸痛がおこります。肺では肺がんや胸膜炎、自然気胸などの病気で胸痛が現れることがあります。
そのほか、急性膵炎や胆石症、特発性食道破裂や逆流性食道炎、胃・十二指腸潰瘍など消化器系の病気で胸痛が出ることもあります。
意外なところでは肋骨の骨折や帯状疱疹など、内臓以外の病気で胸痛をきたすことがあります。さらに、検査ではどこにも異常所見がなく精神的な要因で激しい胸痛をきたす心臓神経症という心の病気もあります。
胸痛の診断
まずは問診を行い、どのような痛みが出ているのかを判断します。それにより、虚血性心疾患を疑う場合には心電図や胸部レントゲン写真、心臓超音波検査、冠動脈CT検査、心臓カテーテル検査、心筋シンチグラフィーなどを行います。大動脈解離や肺血栓塞栓症を疑う場合には胸部CT検査が追加されます。肺がんや胸膜炎、自然気胸などの肺疾患を疑う場合にも、胸部レントゲン写真や胸部CT検査が非常に有用です。消化器系の症状を疑う場合は腹部超音波検査、腹部CT検査などを行います。いずれの場合も、血液検査は非常に有用です。様々な検査を行っても全く異常がみられない場合に、はじめて心臓神経症と診断がつきます。
胸痛の治療
胸痛の原因となった病気によって治療法は全く異なります。
虚血性心疾患の場合
虚血性心疾患に伴う胸痛の場合、心臓にめぐる血液の流れをよくするために、カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術:けいひてきかんどうみゃくけいせいじゅつ)や手術(冠動脈バイパス術)が行われます。
大動脈解離の場合
大動脈解離の場合、裂けた血管の場所によって手術もしくは保存的治療(この場合は安静にして血圧を下げる治療)を行います。
肺血栓塞栓症の場合
肺血栓塞栓症では、血栓を溶かす薬を使用したり、カテーテルや手術で肺動脈に詰まった血栓を取り除きます。
自然気胸の場合
自然気胸の場合には、胸腔(きょうくう:肺が入っている空間)にたまった余分な空気を抜くために、胸に管を入れることがあります。
胸痛の予防・ケア
胸の痛みが現れる病気の中には、命に係わる病気も少なくありません。「今まで経験したことがないような痛み」や「痛みで脂汗や冷や汗が出る」「胸の痛みのほかに吐き気や息苦しい感じなど他の症状が一緒に出る」「血圧が測れない」などのような場合は、すぐに医師の診察を受けましょう。
ただし、胸が痛むからといって、必要以上に不安に感じる必要はありません。たとえば試験の前に緊張すると胸がドキドキしたり、叱られるとズキッと痛んだりしたことは、どなたにも経験があることと思います。このように、胸の症状は心の状態をよく反映するものです。胸痛によってパニックになると余計に症状がひどくなることもあります。
胸痛の診断には、問診が非常に大切です。「狭心症の7割は問診で診断できる」という説もあるくらいです。「胸が痛い」と思ったら、まずは落ち着いて冷静に、どのくらいの時間続く痛みか、どんなきっかけで痛みが出たか、痛くなる時間やタイミングは決まっているか(例えば食事のあとに痛みが出る、明け方に胸痛で目が覚めるなど)、痛い場所はどのあたりか、一緒にどんな症状が出たか、などについて記録しておくと、診断に非常に役立ちます。