浮腫
公開日:2016年7月25日 22時00分
更新日:2019年6月19日 14時58分
浮腫の症状
浮腫(むくみ)とは、皮膚の下にある皮下組織の部分に余分な水分がたまっている状態のことをいいます。
浮腫の症状としては、手足や顔が腫れぼったくなるのが一般的です。重力の関係で水分は下へ落ちるので、通常の場合は下肢、特に膝から下の下腿(かたい)と呼ばれる部分から足先に見られることが多いです。寝たきりの方の場合は常に背中側が下になっていますので、背中や仙骨部に浮腫が見られます。
浮腫の原因
浮腫の原因は数多くありますが、大きく分けて、浮腫が身体の両側にみられるかどうか、また病気によるものとそれ以外に分かれます。また、特に高齢者の場合には、原因が一つではなく複数の要因が合わさって起こる場合がとても多いです。そのうち、主な原因を列挙しておきます。
病気によるもの
1.全身性の浮腫(身体の両側に見られる浮腫)
全身性の病気によるもの
- うっ血性心不全、収縮性心膜炎、心タンポナーデなどの心臓病
- 肺高血圧症
- 腎臓病(腎不全、腎炎、ネフローゼ症候群など)
- 肝硬変、蛋白漏出性胃腸症、蛋白尿、栄養障害などによる低アルブミン血症
- 甲状腺機能低下症
- 遺伝性血管性浮腫
- ある種のアレルギー
静脈など局所の問題によるもの
- 上大静脈症候群
腫瘍などの圧迫により、頭・上肢から戻ってくる血液を受け入れる上大静脈が詰まってしまったもの。
- 慢性静脈不全
静脈にある逆流防止弁が壊れていたり、不全穿通枝(ふぜんせんつうし:深いところにある静脈と浅いところにある静脈をつないでいる血管(穿通枝)のうち、弁不全のあるもの。本来であれば深いところから浅いところに流れるはずの血液が逆流する)のあるもの。
その他
薬剤性:降圧薬(カルシウム拮抗薬)、ある種の糖尿病治療薬、向精神病薬、甘草を含む漢方薬など
2.身体の片側のみ、もしくは一部分のみに見られる浮腫
- リンパ浮腫
- 深部静脈血栓症
- 慢性静脈不全(片側の足にのみ弁不全や不全穿通枝があるもの)
- 熱傷・外傷・蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの感染症
など
病気以外の原因によるもの
- 長時間同じ姿勢を取ること、特に立位、椅子での座位
- 塩分・水分の摂りすぎ
- お酒の飲みすぎ
- 加齢
- 過労・ストレス
など
浮腫の診断
下腿に浮腫がある場合、すねの辺りを指で押して、指のあとが残るか残らないかによって、残る場合を圧痕性(あっこんせい)浮腫、残らない場合を非圧痕性(ひあっこんせい)浮腫と区別します。ほとんどの浮腫は圧痕性浮腫です。
浮腫の治療
まずは原因をしっかりと調べることが大切です。病気が原因の場合には、その治療を優先して行います。薬剤性浮腫の場合は、可能なら原因と思われる薬剤を中止します。静脈不全がある場合には、下肢を圧迫して静脈の逆流を防ぐ弾性ストッキングの着用や下肢静脈瘤の手術を行う場合があります。 それと並行して、身体の余分な水分を尿として体外に排出する利尿薬の投与などを必要に応じて行います。
浮腫の予防・ケア
高齢者の場合、急激な浮腫の進行とともに体重増加がみられたり、浮腫と同時に息切れや呼吸困難などの自覚症状がある場合には、緊急を要する病気の可能性があります。一度病院で診察を受けた方が良いでしょう。病的ではない浮腫の場合、夜に症状が増悪しても一晩眠ると症状が軽減していることがほとんどです。朝になっても全く浮腫が改善せず、日に日にひどくなるような場合も、一度原因となる病気がないかどうか確認することをお勧めします。
浮腫を予防する際のポイントは、「同じ体位を長時間取らない」ことにあります。立ち仕事の方は、定期的に足を曲げたり伸ばしたりする癖をつけましょう。休憩の際には、少し足を高めにして座るとベストです。座りっぱなしの方は、筋力向上のためにも1時間おきに立ち上がる運動をすると効果的です。寝たきりの方は、足ではなく背中や臀部に水が溜まりやすいので、定期的な体位交換が必要です。いずれの場合も、夜寝る際には足元を少し高くして寝ると、翌朝の浮腫が少し軽くなることが多いです。