尿失禁
公開日:2016年7月25日 10時00分
更新日:2019年6月19日 17時18分
尿失禁とは
尿失禁とは本人が尿をしようとしていない時に不意に尿がもれてしまうことをいいます。尿失禁で悩んでいる人は大変多いのですが、恥ずかしいと思い医師に相談しにくいようです。しかし、日常生活に大きな影響を与える症状ですので、是非、医療機関で相談しましょう。
尿失禁のタイプ(原因・診断と治療)
尿失禁には表に示す通り4つのタイプがあります。
タイプ | もれやすい場面 | 治療法 |
---|---|---|
腹圧性尿失禁 | おなかに力の入る時にもれる | 体操、手術 |
切迫性尿失禁 | 突然尿がしたくなってもれる | 体操、工夫、薬 |
いつ流性尿失禁 | 尿がいつもちょろちょろもれている | 尿を出す治療 |
機能性尿失禁 | 認知症や歩行ができない場合 | 環境の改善、介護 |
腹圧性尿失禁
1つ目は、骨盤の底にある筋肉が緩んだり、尿道をぎゅっと締め付ける尿道括約筋の力が弱くなって起こるもので、腹圧性尿失禁と呼ばれます。咳やくしゃみ、運動時などおなかに力がかかった時に尿失禁が起こります。
今のところ腹圧性尿失禁によい薬はなく、骨盤底筋体操と呼ばれるトレーニングを行う治療法がまず勧められます。効果が現れるまでに時間がかかりますが副作用はほとんどなく優れた方法です。しかし、効果が現れるまで続けられずにあきらめてしまう人が多いのが残念です。
重症の腹圧性尿失禁に対しては、尿道を支える人工的なテープを入れる手術が有効です。副作用はあまりなく、だんだん広く行われるようになってきました。
切迫性尿失禁
2つ目は、突然尿がしたくなって我慢がきかずにもれてしまうもので、切迫性尿失禁といいます。
原因としては膀胱に問題がある場合や膀胱をコントロールしている脳や神経に問題がある場合などが推定されています。腹圧性尿失禁の時に行う骨盤底筋体操がこのタイプの尿失禁にも効果がある可能性があります。
また、尿がしたくなったときあわてずに、ほかのことを考えるなどして尿を我慢することでトイレまで間に合うようになるといった工夫が有効なことがあります。尿がしたくなくても早めにトイレに行くことで、尿がもれることはなくなりますが、その分トイレに行く回数が増えてしまいます。
このタイプの尿失禁には抗コリン剤と呼ばれる薬が有効です。副作用として、口の乾燥、便秘などがあげられます。また、尿の出方が悪くなることがあります。
いつ流性尿失禁
3つ目はいつ流性尿失禁と呼ばれるもので、尿がうまく出せない場合に生じます。膀胱が尿でいっぱいになって、あふれるようにちょろちょろともれ出てきます。細菌が入りやすく、腎臓にも負担がかかるため、治療が必要です。尿がうまく出せない原因の治療を検討します。男性であれば前立腺肥大の治療をすると改善することがあります。場合によっては尿道から膀胱に管を入れて溜まった尿を排出する導尿を行います。
機能性尿失禁
4つ目は機能性尿失禁といい、膀胱以外の問題が原因で起こるものです。例えば足が悪くてトイレまで行けないため尿がもれてしまうものや、認知症のためトイレの場所が分からないためにトイレ以外で尿をしてしまうものです。周囲の環境をよくしたり、介護を行っている方が協力してあげることが重要です。
高齢者では、これらの4つのタイプが複数組み合わさって見られることがあります。
尿失禁のケア・予防
最近の尿失禁用パッドはずいぶん性能がよく、上手に使うことで快適な生活を送っている高齢者も多いと思います。しかし、本来は治るはずなのに必要のないパッドやおむつをしていたり、尿失禁のために外出を控えたり、楽しみが制限されたりしていては残念です。一度は医師に相談してみるとよいでしょう。