肥満
公開日:2016年7月26日 11時00分
更新日:2023年6月 2日 11時47分
「肥満」が健康に悪い理由
「肥満」とは、ただ単に体重が多いだけではありません。「肥満」の方の身体には、脂肪組織が過剰に蓄積しています。脂肪は皮下にも溜まりますし、内臓の周りにも溜まります。このうち、主に悪さをするのは内臓脂肪です。
内臓脂肪からは、「アディポカイン」というさまざまな物質が放出されるようになります。例えば、TNF‐αという物質はインスリンというホルモンの働きを阻害し、糖尿病をおこしやすくします。そのほか、血圧をあげる物質やコレステロールを高くする物質など、さまざまな作用をもつ物質が放出され、糖尿病や高血圧、脂質異常症(高脂血症)になりやすくなります。そして最終的には、脳血管障害(脳梗塞など)や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞)の危険性が高くなるのです。これら糖尿病、脂質異常症、高血圧の状態が重複して出現した状態が「メタボリック・シンドローム」です。
「肥満」で起こるのは「メタボリック・シンドローム」だけではありません。「肥満」による過体重は膝や脊柱の関節に負担をかけ、ひざの痛みや腰痛の原因となる変形性関節症の原因ともなります。
どうして「肥満」になるの?
食べすぎ・運動不足が「肥満」の一番の原因です。食べ物や飲み物から取る「摂取エネルギー」が日々の活動や基礎代謝(生きているだけで使用されるエネルギー量)などで使用される「消費エネルギー」よりも多くなれば、余ったエネルギーは脂肪として内臓や皮下に蓄積されます。
それ以外には、食べ方の問題(脂肪が蓄積しやすい夜に大量に食べる、1回の食事量が多い、甘いものや油ものの摂取が多いなど)などの環境要因や基礎代謝量(生きているだけで使用されるエネルギー量)の低下、遺伝などの影響があるとされています。
「肥満」はどうやって診断するの?
まず第一には、体重・身長の測定が目安になります。キログラムで表した体重をメートルで表した身長の2乗で割って得られる数字は体格指数(body mass index, BMI)と呼ばれ、広く用いられています。男女ともに基準値は22とされています。BMIが25を超えると肥満と診断されます(表1)。
BMI | 判定 |
---|---|
18.5未満 | 低体重(やせ) |
18.5以上25未満 | 普通体重 |
25以上30未満 | 肥満(1度) |
30以上35未満 | 肥満(2度) |
35以上40未満※ | 肥満(3度) |
40以上※ | 肥満(4度) |
※BMI35以上を「高度肥満」と定義
また、「メタボリック・シンドローム」の原因とも言われる内蔵脂肪は、おなかの脂肪をCTスキャンの断面図で計測する方法が一番正確です。日常の診療では全員にCTスキャンを行うことは困難ですので、それに変わる指標として腹囲(おなかの周り) を用います。腹囲が男性では85cm以上、女性では90cm以上ですと「メタボリック・シンドローム」の可能性があると判定されます。
「メタボリック・シンドローム」と診断するには、腹囲に加えて高血糖・血清脂質異常・血圧高値のうち2つに当てはまる必要があります(表2)。
診断基準項目 | 数値 | |
---|---|---|
必須項目 | (内臓脂肪蓄積) ウエスト周囲径* |
男性≥85cm 女性≥90cm |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 1.高トリグリセリド血症 かつ/または 低HDLコレステロール血症 |
≥150mg/dL <40mg/dL |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 2.収縮期(最大)血圧 かつ/または 拡張期(最小)血圧 |
≥130mmHg ≥85mmHg |
選択項目 3項目のうち2項目以上 | 3.空腹時高血糖 | ≥110mg/dL |
「肥満」は治療できる病気です。
肥満の治療は、食事療法と運動療法が基本です。そのほか、抗肥満薬や胃バイパス術などの治療がありますが、これらは副作用や合併症などの問題から、一般的に広く用いられる方法ではありません。BMIが30~35を超える高度肥満、なおかつ内臓などに合併症がある場合などの特別な例に対してのみ行われる治療です。
肥満にはさまざまな疾患が併発していることが多いため、食事療法や運動療法を始めるにあたっては、個人ごとに注意点が異なるはずです。無理なダイエットに走らず、心配な方はかかりつけ医や保健所などアドバイスをうけるとよいでしょう。
「肥満」にならないためにできる予防
「肥満」を防ぐためには、1回の食事量が多すぎないか、食べる時間は適切か、食べ物に偏りはないか、など、まず食生活を見直すことが大切です。
運動習慣も大切です。階段を使う、できるだけ歩く、など普段の生活で使うエネルギーを増やしましょう。