視力低下
公開日:2016年7月26日 02時00分
更新日:2019年8月14日 14時32分
目の構造
目(眼球)は「ものを見る」ための器官で、直径約24mmの球状をしており、おおまかに分けて、角膜(くろめ)・強膜(しろめ)・水晶体・虹彩(ちゃめ)・硝子体・網膜からなっております(図)。
眼球はカメラに例えることができます。ものを見る際には、虹彩で目の中に入ってくる光の量を調節して、角膜と水晶体でピントを合わせ、鮮明な像を網膜に映しこみます。
- カメラ・・・目(眼球)
- レンズ・・・角膜(くろめ)・水晶体
- しぼり・・・虹彩(ちゃめ)
- フィルム・・・網膜
- ボディ・・・強膜(しろめ)
網膜は光エネルギーを生物学的電気エネルギー(神経刺激)に変換し、その刺激が視神経を通じて大脳の後頭葉の視中枢へ達することにより私達はものが見えるのです。つまり眼で撮影した像を脳で現像しているわけです。
視力低下の症状
「ものがぼやける」、「目がかすむ」、「二重に見える」、「視野に幕がかかっている」といったものが視力低下の代表的な症状です。
時には自覚症状がなく、ランドルト環と呼ばれる「C」のマークを用いた検査で視力低下を指摘される場合もあります。眼科診療において視力といえばメガネやコンタクトレンズによる矯正視力のことで、通常は矯正視力1.0あれば十分な視力です。
視力低下の原因
大別すると、光の通り道(透光体)に障害がある場合、網膜に障害がある場合、視神経から視中枢にいたる神経回路(視路)に障害がある場合に分けられます。
透光体である角膜、水晶体、硝子体に障害が生じると、目の中に入ってくる光やものの像が遮られて視力低下を生じます。よくみられるのは角膜の混濁や白内障です。
網膜の中央部は黄斑部と呼ばれており、視力や色覚を司っています。この黄斑部が障害されると、ものの像が映りこんで光エネルギーを神経刺激に変換することができなくなり視力低下が生じます。この機序は加齢黄斑変性や糖尿病網膜症などにみられます。
網膜で変換された神経刺激は視神経を通って視中枢にいたります。この神経刺激の伝達路のどこが障害されても神経刺激が脳に達することができなくなり視力低下が生じます。緑内障などの視神経の病気や脳梗塞や脳腫瘍などの脳の病気がこれにあたります。
2007年の調査では途中失明の原因第1位は緑内障、2位は糖尿病性網膜症です。そして加齢黄斑変性症の割合が急激に増えてきています。
視力低下の診断
視力低下が起きた場合には両目か片目か、急に起きたのか徐々に進んだのかと言ったことが聞かれます。検査としては目に光を入れてまぶしさを感じられるかといった検査(対光反射)や目の動き、見える範囲を確認する検査(視野検査)、眼圧の測定、黒目を開いて眼底を見る検査、場合によっては脳の検査として頭部CTやMRIなどが行われます。
視力低下の治療
まずは原疾患の治療が優先されますが、残念ながら原因が治療ができない場合は眼鏡などで矯正します。しかし治療により改善できなくても、病気の進行を食い止めることができることも多いため、自己判断で通院を中断しないようにしましょう。
視力低下のケア・予防
失明の頻度の高い原因である緑内障は、ほとんど自覚症状がなく、緑内障と診断された人のうち95%は健康診断で見つかっています。自覚症状がなくても定期的な検査が勧められます。
高齢者に増えている眼疾患
高齢者の視力低下の原因疾患としては加齢黄斑変性症と網膜静脈閉塞症があります。
加齢黄斑変性症
加齢黄斑変性とは黄斑に年齢的な変化(変性)が生じて起こる病気です。物を見る中心である黄斑が障害されるため、視野の中心が見えにくくなり、「中心が暗く、黒くなる」「物が小さく見える」「ゆがんで見える」といった症状がでます。進行すると視力0.1以下に低下する場合もあります。
治療は程度により変わります。内服薬等で経過観察する場合もあれば、レーザーを網膜にあてて病気の進行を遅らせます。老化が原因という側面もあり治療が難しいのが現状です。
網膜静脈閉塞症
網膜には老廃物を運び去る網膜静脈という血管があり、この血管が詰まる病気が網膜静脈閉塞症です。50歳以上の高齢者に多く、特に高血圧を持病として持っている方が80%を占めます。網膜静脈閉塞症になると網膜に出血したり、網膜が腫れ上がった状態になります。治療では、まず詰まった血管が再び流れるように内服薬を試みますが、動脈硬化が原因で詰まった血管に再び血流が流れるのは稀です。そのため少しでも視力を守るため状況により網膜にレーザーを当てたりステロイドを眼の奥に注射したりします。