健康長寿ネット

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老年症候群とは

公開日:2016年7月27日 04時00分
更新日:2019年6月19日 14時17分

老年症候群の定義

 老年症候群とは、加齢に伴い高齢者に多くみられる、医師の診察や介護・看護を必要とする症状・徴候の総称のことです。老年症候群の症状・徴候は50項目以上が存在します。

老年症候群の特徴

 老年症候群の特徴は、複数の症状を併せ持つことです。そのため高齢者は循環器科・消化器科・呼吸器科・神経内科など細かく診療科が分類されている総合病院などを受診すると、複数の診療科を受診しなければならないことがよくあります。

 また、もともとは1つの病気で病院を受診していても、その合併症があらわれると合併症の専門科を受診しなければならなくなり、やはり複数の科に受診しなければならなくなります。

老年症候群が他の病気と違う点

 老年症候群には2つの状態が混在します。

生理的老化

 生理的老化とは病気によるものではなく、加齢により誰にでも起きる変化です。

 たとえばだんだんと耳が聞こえづらくなる、夕方になると目が見えにくくなる、就寝中のトイレの回数が多くなる、坂道を上ると息が切れる、小さな物忘れなどがあります。

病的老化

 疾患やけがなどによりおきる症状です。

 この病的老化はさらに合併症の症状として考えられるものと多臓器疾患の影響や、社会的条件に影響されて出現してくる二次的な症状があります。

 老年症候群にはこの「生理的老化」と「病的老化」が混在しています。ある老年症候群の症状があらわれたとき、その症状が病気の治療により改善するものであるのか、それとも生理的老化であったり、元の病気が治せないために改善が期待できないものであるのかを正しく理解することが重要です。

廃用症候群

 長期療養の場合重要になるのが廃用症候群についての理解と対策です。

比較的短期で出現する状態

  • 褥瘡(床ずれ)
  • 誤嚥
  • 失禁

月単位で出現する状態

  • 筋委縮
  • 関節拘縮(関節が硬くなる)

年単位で出現する状態

  • 認知機能低下

終末期に出現する状態

  • 顔色不良
  • 傾眠
  • 注意力障害(呼びかけにこたえる時間が短くなる)
  • 見当識障害(時間や場所が分からなくなる)
  • 飲水や食事の減少
  • 嚥下困難

 これらの症状は終末期に現れますが、他の病気でも起こりえます。そのためこの状態は改善する見込みがあるのかどうかを判断することが重要です。

老年症候群と関連する病気

ホルモン減少

 精力低下、認知判断力の低下、うつ、筋力低下の一部は老化に伴うホルモン減少と関連している可能性があります。最近では男性更年期や遅発性の男性ホルモン欠乏(遅発性性腺機能低下症:LOH)が注目されています。

ビンスワンガー白質脳症

 高齢者でなくても老年症候群の症状がみられる病気、それがビンスワンガー白質脳症です。50歳代でも尿失禁・認知症・妄想・歩行障害・転倒・誤嚥といった症状があらわれます。病気の主体となる脳の白質という部分ではラクナ梗塞と呼ばれる小さな梗塞や循環障害が30歳くらいから増加します。白質の部分の変化は個人差が大きく、この部位の変化は老年症候群と広く関連することが証明されています1)

老年症候群の危険因子と予防

 いろいろな研究で日常生活動作(ADL)が低下する原因として以下の項目が挙げられています。

日常生活動作が低下する危険性が2倍に増える因子

  • 情報関連機能の低下(認知機能・視力・聴力)
  • 転倒
  • うつ
  • 女性

日常生活動作が低下する危険性が5倍に増える因子

  • 脳血管障害

寝たきりの危険性を半分に減らすことができる

 寝たきりの危険性を減らすことができる項目も判明しています2)

  • 日本酒1合までの適度な飲酒
  • 長寿教室参加

 特に運動は重要な効果があり、継続して週に1度仲間と運動している人は7年間で日常生活活動度や運動機能にほとんど低下がみられなかったと報告されています。また継続的な運動は老年症候群の各項目に対し予防的に働いていました。海外でも運動が性ホルモンの分泌を促し、認知症の予防にも有効であると報告されています。

参考文献

  1. Sonohara, K., Toba, K., et al. : White matter lesions as a feature of cognitive impairment, low vitality and other symptoms of geriatric syndrome in the elderly. Geriat. Geront. Int. (2008); 8: 93-100
  2. 鳥羽研二 老年症候群の考え方 CLINICIAN 2012 no.605 vol.59 p10-16

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