悪心・嘔吐
公開日:2016年7月25日 19時00分
更新日:2019年6月19日 15時18分
悪心・嘔吐 とは
悪心(おしん)、嘔吐(おうと)はいずれも医学用語です。悪心とは、嘔吐の前に起こるむかつき(吐き気)のことをいいます。嘔吐とは、胃の中にあるものを吐き出すことをいいます。これらは同時に起こることもありますし、悪心のみ、または嘔吐のみがみられることもあります。
悪心・嘔吐の原因
悪心・嘔吐が同時に出るか、またはいずれかのみの症状が現れるかによって、原因と考えられる病気が異なります。
嘔吐には中枢性(ちゅうすうせい)嘔吐と末梢性(末梢性)嘔吐の2種類があります。
中枢性嘔吐
脳内にある嘔吐中枢が刺激を受けることによって起こる嘔吐であり、くも膜下出血・脳出血、脳腫瘍、髄膜炎などの脳の病気によって脳圧が高くなったとき、メニエール病や乗り物酔いなど内耳に刺激を受けた場合、抗がん剤やアルコールなどの薬の影響、ホルモン・電解質の異常、腎臓病などで起こります。
末梢性嘔吐(反射性嘔吐)
消化器疾患(急性胃腸炎や胃・十二指腸潰瘍、腸閉塞など)や肝臓・胆のうの病気(胆のう炎・胆管炎、胆石、急性膵炎など)、または腎臓(慢性腎臓病、腎盂腎炎など)や生殖器(婦人科系・泌尿器系)の病気の時に見られる嘔吐です。内臓からの反射により嘔吐が現れます。心筋梗塞のときに見られる悪心・嘔吐も反射性嘔吐の一つです。
悪心・嘔吐の診断
悪心・嘔吐の原因を知るには、まず正確な問診を行います。問診では、いつ症状が出現したか、またどのくらいの時間続いているか、症状は突然出たのか、何回吐いたかと吐物の量・内容(食べたものが混ざっているかどうか、色は何色かなど)、嘔吐の前に悪心があったか、食事の時間と嘔吐の関係などについて聞かれます。
悪心・嘔吐と同時に他の症状(頭痛やめまい、胸痛、下痢・腹痛、発熱、意識障害など)があったかどうかは、とても大切な所見です。
その後、血液検査を行い腎臓病や電解質障害があるかどうか、また肝機能や炎症反応を確認します。
悪心を伴わず、突然噴水のように激しく嘔吐した場合には、脳圧が高いことによる嘔吐を疑い、頭部CT検査などを行います。食事の直後に出現した悪心・嘔吐は急性胃炎や胃・十二指腸潰瘍などを疑い、必要に応じて上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)などを行います。吐物から便の臭いがする場合には、腸管が閉塞したイレウスなどの病気を疑い、腹部CT検査などを行います。下痢と一緒に悪心・嘔吐が出た場合はウィルスや細菌の感染症を疑います。この場合は問診だけである程度判断が付きますが、必要に応じて便中のウィルス・細菌検査を行います。
悪心・嘔吐の治療
悪心・嘔吐に対しては制吐剤(せいとざい;吐気止め)を使用し一時的に症状を抑えつつ、原因となる病気を診断し、治療します。制吐剤にはいろいろな種類があり、中枢性嘔吐か末梢性嘔吐か、薬の影響があるかどうかなどによって使い分けを行います。
悪心・嘔吐の予防・ケア
激しく嘔吐しているときには、身体の水分が吐物として出ていくため、脱水状態になりやすいです。特に高齢者はもともと脱水気味の方が多いため、気が付いた時には血圧低下などで命に関わる状態になることもあります。水を飲ませてもすべて吐いてしまう場合は、点滴による水分補給が必要です。
悪心・嘔吐とともに下痢や発熱がみられる場合、そして家族や施設など一緒に暮らしている方に同じような症状の方がいる場合には、ウィルスもしくは細菌感染症の疑いがあります。対処が遅れると集団感染を招く可能性もありますので、早めに病院を受診しましょう。
高齢者の場合、吐き続けることで吐物が誤って肺に入ってしまい、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を引き起こすことがあります。激しい嘔吐ではなくても、1か月以上悪心・嘔吐が続く場合には一度医師の診察を受けることをお勧めします。