介助者による体位変換
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年6月21日 12時59分
健康な人は眠っていても知らず知らずのうちに身体の向きを変えて寝返りを何回も行っています。しかし、障害をもち高齢になって身体を自由に動かせなくなると、寝返りがうまくできなくなります。
寝返りができない状態が続いてしまうと、身体の同じ部分に圧迫が集中し血液の流れが妨げられてしまい、床ずれ(褥瘡:じょくそう)が生じてしまいます。
特に、高齢者はやせてお尻の骨や背骨が突出しやすくなったり、皮膚が薄く弱くなったり、手足の関節が曲がって固まってしまう(拘縮:こうしゅく)ことがあるので床ずれは非常にできやすくなります。
また、一部分の血液の流れの障害が、全身の血液の流れにも影響し、心臓や肺などの機能低下を招くことになることもあります。ですから、家族や周りの人が気を付けて身体の向きや位置を変えて、血液の流れを確保してあげることが大切です。
2時間以上同じ姿勢のままでいることがないようにすることが基本的には大切であるといわれていますが、時間にこだわるだけでなく、特に骨が突出している肩や、腰、踵、頭にかかっている圧を除き、血流をよくすることが大切です。 (リンク1・2参照)
体位変換の方法
ここでは、自分で身体を動かせない人に対して、身体の向きや位置を変える方法(体位変換の方法)について説明します。
必要物品として、枕、タオル、クッションなどを用意します。いろいろな枕やクッションがありますが、その使用目的は次の3点です。
- 手足などの拘縮で身体が重なっているところに用いる
- 身体が浮いてしまっているところに当てて筋肉や関節の緊張をとる
- 骨がでているところなど一部だけが圧迫されないようにする
仰向け(仰臥位)から横向き(側臥位)への体位変換の方法について説明します。
方法(一人で行う場合)
1.介護する人の身体を向けたい側の反対に立ちます。
体位変換を受ける人は両手を胸に組んでいただき、身体をなるべく小さくまとめるようにしていただきます。可能ならば、膝を立てていただきます。身体に使用していたクッション等は一旦外します。
2.身体を介護する人の方に引き寄せます(写真1)。
頭の枕は介護する人の手前に引き寄せておきます。後頭部か肩にかけて介護する人の手をすっぽりと差し込みます。もう一方の手は腰の下に反対側の横腹を支える感じで身体を支え、まず上半身を手前に引き寄せます。
その際、身体が敷布団でずれると、そのずれによって床ずれを発生させる原因にもなるので、なるべくずれないように移動させます。
続いて、腰の下と、膝の下にすっぽりと手を差し込んで、下半身を引き寄せます(写真2)。
3.次に介護する人は、身体が向くほうに立ちます(写真3)。
4.向きを変える側に顔を向けます。
5.肩と膝に手を添えて手前に倒します。
6.背中に枕やクッションを入れます(写真4)。
7.下になった肩を少し引きます(写真5)。
肩が入りこんだり、肩の皮膚もよれている状態になっているので、一旦肩を浮かしておくことが大事です。肩も骨が突出している部分なので、側臥位になったときの床ずれ発生には注意が必要です。
8.お尻を少し後ろに引き、横向きでかがむような体位とします。
こうすることで安楽な姿勢が維持されます。
また腰の部分の皮膚のよれもとることができます。腰の骨も突出しているので側臥位のときに一番圧がかかりやすい部分になります(写真6)。
9.身体と身体が重なっている部分や、浮いた場所にクッション等を入れます。
筋肉の緊張が和らぎます(写真7、8、9)。