健康長寿ネット

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ノロウィルスの対応

公開日:2016年7月25日 04時00分
更新日:2019年8月 6日 10時25分

ノロウイルスによる感染症とは

イメージ図1:高齢女性がノロウィルスの感染を心配する様子を表す図。

 ノロウイルスとは、感染すると人の小腸で増殖し、下痢や嘔吐などを引き起こすウイルスです。人以外の細胞の中では、増殖しないとされています。潜伏期間(ウイルスに感染してから症状が出現するまでの時間)は、24~48時間です。

 主な症状は、嘔気(おうき)、嘔吐(おうと)、下痢、腹痛で、軽度の発熱を伴う場合もあります。この症状が1~2日続くと治癒し、元々が健康な成人であれば、後遺症もありません。軽い風邪のような症状で済んでしまうこともあります。

 しかし、乳幼児や寝たきりの高齢者など、免疫力の低い人の場合、下痢や嘔吐などの症状がきっかけとなって、脱水などの合併症を引き起こしたり、死亡にいたるケースもあります。場合によっては、自分の嘔吐物を誤嚥し、誤嚥性肺炎の原因となることもありますので、特に高齢者では、感染を予防していくことが重要となります。

 ノロウイルス感染は、冬場に多く夏場に少ないことが分かっています。ノロウイルスは、人の小腸で増殖しますが、一旦人の体外へ出たノロウイルスは、増殖はしないものの、汚染された環境の中で、生存し続けていることがあります。冬になり気温が下がると、ノロウイルスが生存し続けやすい環境になります。また、飛沫感染は、空気が乾燥している時期に起こりやすくなりますので、このような理由からも、冬に感染例が増える傾向があります。

介護施設や病院内でのノロウイルスへの対応方法

 ノロウイルスの感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染です。特に、高齢者施設や病院では、ノロウイルスに感染している患者が嘔吐することで、ノロウイルスを含んだ飛沫が飛散します。これを吸い込んでしまうことで、集団での発症を引き起こす可能性があります。また、介護者の手指を通じて感染(接触感染)するケースも後を経たないため、ノロウイルスの罹患者が嘔吐してしまった場合には集団感染を予防していくことが重要です。

 まず、ノロウイルス感染者が嘔吐した場合、嘔吐物は少なくとも1~2m飛沫するため、周囲にいる利用者や患者を、3m以上離れたところへ避難する必要があります。また、嘔吐した患者は、1人で歩き回ることで感染を拡大してしまう可能性があるため、シーツなどで覆い、浴室などへ誘導し、吐物を洗い流して更衣をするようにしましょう。

 更衣をした衣服や、嘔吐した場所がベット上など布物であった場合は、一度汚物を十分に落とした後、0.02%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムの消毒液に30~60分間浸すか、85℃のお湯で1分以上浸して熱湯消毒してから、ただちに洗濯します。

 嘔吐物は、早急に処理を行わないと感染を拡大しますので、迅速な対応が必要です。まず、窓を開けて換気をします。処理をする人は、使い捨てのマスク・手袋・エプロンを着用し、可能であればゴーグルも着用します。使い捨ての布やキッチンペーパーなどで、嘔吐物を外から内側に向かって取り除きます。取り除いた嘔吐物は、二重にしたビニールに入れて、その中に次亜塩素酸ナトリウムを入れておきます。

 次に、嘔吐物が落ちていた付近の広範囲に、新聞紙や布、ペーパータオルを敷きつめ、その上から0.1%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムを注ぎ、10分ほど浸してから、外側から内側に向かって拭き取ります。

 使用したエプロン、マスク、手袋は廃棄し、流水およびせっけんで充分に手を洗って、終了となります。次亜塩素酸ナトリウムからは塩素ガスが発生するため、処理終了からしばらくは窓を開けて換気をしておきましょう。

ノロウイルス感染を予防するためには

 ノロウイルス感染の予防方法で最も効果的なのは、手洗いです。石けんそのものには、ノロウイルスへの不活化効果などはありませんが、泡立てた石けんで充分に手洗いをすることで、手指の脂肪を取り除き、ウイルスをはがしやすくします。外から帰宅した後はもちろんのこと、食事の前やトイレの後などの手洗い励行が、非常に重要です。特に要介護者の排泄物や嘔吐物を処理する場合は、手袋を着用していたとしても、あるいはノロウイルスへの感染の有無にかかわらず、充分な手洗いをする習慣をつけておきましょう。ノロウイルスは、アルコールでの消毒だけでは、十分な効果がありません。

 図のとおり衛生的な手洗いをするときは、手を水で十分に濡らした後、石鹸をつけてよく泡立てて洗います。手のひら、手の甲、指先、指の間、親指、手首を、右手と左手で交互に手や指についている汚れをこすり落とすように丁寧に洗います。両手をまんべんなく洗ったら20~30秒ほどかけて、流水でしっかりと洗い流しましょう。洗い終わったら、清潔なタオルやペーパータオルで、水分をしっかり拭き取ります。

図:衛生的な手洗いについて石鹸を使ってきれいに洗う手順を示した図
図:衛生的な手洗い

 介護者の日常的な注意点としては、爪を短く切っておくこと、指輪などは外してケアをすること、手洗いの際に洗い残しが無いよう充分注意すること、などです。

 また、高齢者の日ごろの体調管理も、ケアの重要なポイントです。発熱や消化器症状がないかなど、日ごろの健康チェックを行い、異常の早期発見に努めていきましょう。

 さらに、ノロウイルスは感染していても症状が出ずに潜伏している可能性があります。そのために保菌者が触れたところを触れてしまい、感染症状を発症する可能性も考えられます。ドアノブ、蛇口、手すりなど、感染した人が手を触れる可能性があるところにもウイルスが付着する可能性があります。消毒液を染み込ませたペーパータオル等で日ごろの清掃時に消毒するよう心がけていきましょう。

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