経管栄養法の手順
公開日:2016年7月25日 16時00分
更新日:2019年8月14日 13時38分
経管栄養法を行っている高齢者への看護
経管栄養法とは
自分の口から食事を取れなくなった人に対し、鼻あるいは口から胃まで挿入されたチューブや、胃瘻(いろう:胃から皮膚までを専用のチューブで繋げる)を通じて、栄養剤を胃まで送る方法です。
経管栄養法にはいくつかの方法があります。
- 経鼻栄養法:鼻から挿入されたチューブを使う
- 経口栄養法:口から挿入されたチューブを使う
- 胃瘻による経管栄養法:胃瘻を通じて栄養剤を投与する
これまで長い間、「長期的な栄養補給には胃瘻が最適」といわれてきました。例えば、認知症やそのほかの疾患により、口からの食事が難しくなった場合など、胃瘻を増設するのが一般的でした。
しかしここ数年、第4の経管栄養法として、間歇的(かんけつてき)口腔食道経管栄養法が注目されています。これは、栄養剤を注入する度に、鼻または口からチューブを挿入し、注入終了後はチューブを抜去する方法です。しかし、間歇的口腔食道経管栄養法にはメリットとデメリットがありますので、状況を的確に判断しながら、導入する必要があります。
間歇的口腔食道経管栄養法のメリット
- 嚥下訓練を行う時に経鼻あるいは経管チューブが邪魔にならない
- 栄養剤投与の度にチューブを挿入すること自体が、嚥下訓練になる
間歇的口腔食道経管栄養法のデメリット
- 毎回、チューブを挿入するという、医療者側の手間がある
- 口からチューブを飲む際の反射が強い人、チューブを舌で押し出してしまう人、噛んでしまうような人は、適応とならない
経管栄養法の必要物品
ここでは、胃瘻からの経管栄養法について解説します。
必要物品
次のものを準備します。
- 注入用のボトル(ボトルとチューブがつながった製品もある)※ただし、半固形化栄養剤を使用するときは不要
- 接続用チューブ(必要に応じて)
- 栄養剤(指示のもの)
- 白湯(指示の量)
- 計量カップ(白湯を測る)
- 注入用フックあるいはスタンド
- 時計
- ハサミ
- 手袋(未滅菌で良い)
- 聴診器
- カテーテルチップタイプのシリンジ
- 指示箋
- チェックシート
- 内服薬があれば、それを熔解するための小さなカップと白湯
- 半固形化栄養剤を使用するときは加圧バッグ(PG加圧バッグ)
経管栄養法の手順
- 必要物品を用意する(栄養剤は保冷庫から出して室温に戻しておく)
- 声掛けをして、栄養剤注入を行うことに了解を得て、空腹感や嘔気などの有無についてを確認する
- 手洗いをして、手袋をする(未滅菌で良い)
- 注入用のボトルからのチューブにあるクレンメを閉じて、栄養剤をボトルへ注入する(図1)
- 注意1)
- クレンメを開放したままで栄養剤を注入すると、チューブから流れ出てしまうため、注意が必要
- 注意2)
- 指示箋を確認し、必要な量の白湯で栄養剤を希釈するが、栄養剤の種類によってはそのまま使用するものがある
- 座位あるいは30度から60度程度の半座位に体位を整える
- 胃瘻のチューブ(ボタン型の場合はボタン部分)を確認する
- 胃瘻チューブの周囲を確認する
- ボトルからのチューブ内を、栄養剤で満たす
- 胃瘻チューブを開放し、空気抜き・胃内残量を確認する
- チューブ型カテーテルの場合、チューブが曲がっていないか、抜けていないかを確認する
- 胃瘻チューブの先端に注射器を接続し、注射器を引きながら胃の内容物がないか確認する(図2)
- 胃瘻カテーテルと接続
A:チューブ型カテーテルではそのまま接続する
B:ボタン型カテーテルでは、注入用専用連結カテーテルに変更して接続する
- ●半固形化栄養剤を使用する場合
- 加圧バッグに半固形化栄養剤バッグをセットし、送気球で加圧バックの圧を150 mmHg ~300 mmHgに調整して加圧する
- ※300 mmHg でも滴下が確認できない時は注入を中止する
- 特に不快感などが無ければ、クレンメを開放し、注入を開始する
- 指示箋の指示に従い、滴下速度を調整する
※注入の速度の目安は、1時間に400ml程度(10秒間に20滴)程度が一般的だが、本人の状態や指示箋の内容によって調整する
- 注入開始後、瘻孔周囲からの漏れがないか確認する
- 注入後の状態を観察する:顔色、表情、呼吸状態、熱感、冷汗、悪心・嘔吐、息切れ、意識低下などの変化など
- 胃瘻部の観察:胃瘻周囲への栄養剤の漏れの有無を確認する
- 問題が無ければ、ボトルから白湯を流して、胃瘻チューブと接続チューブを外す
- 内服薬の投薬がある時は、白湯を使って溶解し、カテーテルチップを使って投与する
- 注入終了後、1時間程度様子を見て、問題が無ければ体位を戻す
※半固形化栄養剤を使用した場合は、注入終了後速やかに体位を戻しても良いとされている
- 記録を行う
胃瘻の手入れと医師への報告
胃瘻の手入れは、毎日行います。特に長期にわたって栄養剤の注入を続けている人は、胃瘻の周囲が汚れやすくなります。感染予防の意味でも、清潔を保つように注意しましょう。
実際には、微温湯をしみこませたガーゼで胃瘻周囲を丁寧にふき取り、胃瘻周囲を観察します。ただれやかぶれ、出血、痛み、できもの、膿などの排出を認めた場合は、医師への報告が必要になります。
また、栄養剤を注入している時に次のことに気づいたら、早めに対応します。
- 嘔気や嘔吐がある時:注入を止めて様子を見て、嘔気などが治まったらゆっくりと注入を再開する
- 嘔気や嘔吐が治まらない時:主治医に報告する
- 下痢がある場合:栄養剤の温度(常温)と注入速度に気を付ける
- 栄養剤がスムーズに注入できない:チューブの屈曲・閉塞を確認する。問題がなければ胃瘻と接続チューブを外して滴下を確認し、カテーテルチップで胃瘻チューブから白湯を注入してみる。注入できれば胃瘻と接続チューブを再び接続し、注入を再開するが、カテーテルチップでも注入できない場合はすぐに主治医に相談する