誤嚥・窒息
公開日:2016年7月24日 02時00分
更新日:2019年6月21日 13時19分
高齢者に多い誤嚥による事故
誤嚥による気道内異物や窒息は、乳幼児と高齢者に多く発生します。高齢者では、餅や肉塊などの食物による気道内異物が多く生じます。
また義歯や薬の包装容器による誤嚥事故(食道異物)の報告も多数あります。
気道内異物と窒息
脳梗塞や神経疾患の既往がある高齢者では、嚥下運動が障害され、飲み込みにくくなっていることがあります。また咳反射が弱くなっていることもあり誤嚥や窒息を生じやすくなっています。
誤嚥の典型的な症状としては、食事中に激しいむせと咳が生じ、呼吸困難になります。顔面が紅潮し、時に紫色(チアノーゼ)になります。重篤な場合、咳も出ず声も出なくなり、手で首をつかむような形になったまま意識を失うこともあります。急激に口唇や顔面が紫色になってきます。
窒息が生じた際の対応方法
窒息の生じた際には、以下の通り早急に気道内の異物を除去する必要があります。
指で掻き出す
異物が口の中やのどにたまって、外から見えている場合に、この方法を行います。患者さんの正面に立ち、義歯をはずし、ガーゼやハンカチを巻いた指を用いて異物を掻き出します。
背部叩打
異物が詰まったり固まったりしておらず、動く場合に有効です。患者さんを座らせるか横向きに寝かせて、左右の肩甲骨の間を、手のひらの付け根近くで数回叩きます。
腹部圧迫法(ハイムリッヒ法)
腹部の急激な圧迫により、胸部(胸郭内)・気管内の圧を上げて異物を吐き出させる方法です。患者さんを立たせるか座らせて、その背後にまわり、片手でげんこつを作り患者さんのみぞおちにおきます。患者さんを抱くように反対の手でその手首を握ります。手首をを握った手ではずみをつけながら勢いよくげんこつをみぞおちに押しつけ、急激に腹部を圧迫します。
重篤な場合
意識がない場合、早めに救急車を要請しましょう。
座らせることができない場合、患者さんを仰向けにして太ももの上にすわり、手のひらをみぞおちに重ねておきます。そのまま腹部を強く圧迫します。手のひらを左右の胸郭(あばらの部分)におき、強く圧迫する方法もあります(ハイムリッヒ法)。電気掃除機を用いた異物除去の報告もあります。意識がなく、脈が触れなければ、心肺蘇生法を行います。
誤嚥(食道内異物)の注意点
窒息に至らなくても、高齢者の誤嚥には注意が必要です。食物や胃液の気管内への流入は、肺炎の原因になります(嚥下性肺炎)。典型的な肺炎の症状(咳や発熱)が出ないことも多く、注意が必要です。
また、義歯や薬の包装容器などの鋭利なものは、食道や腸に引っかかり穴をあけることがあります。認知症や精神・神経症状を有する高齢者では、乳幼児と同様に予想外のものを口にする場合もあるので、注意が必要です。