ヒッププロテクター
公開日:2016年7月24日 00時00分
更新日:2019年2月 1日 18時59分
ヒッププロテクタ―とは
ヒッププロテクターとは、転倒時に股関節を外力から守って大腿骨頚部骨折を予防する方法で、この骨折の発生率が非常に高くなった状態、たとえば、転倒リスクが上昇した後期高齢者に使用すると有効とされています。日本でも2001年に高い予防効果が確認されています。
転倒時に股関節の外側の大転子部を打撲することで大腿骨頚部が骨折するので、硬いヘルメット式か、柔らかいパッド式のプロテクターが下着の大転子の位置に組み込まれています(図1)。
日本では数種類のヒッププロテクターが販売されていますが、どの製品も転倒時に装着していれば、一定の外力吸収(我々の試験では35%から63%減少)を得られるので、それに見合う骨折減少が得られると予測されます。
従って、転倒時に使用していればそのような強力な荷重減衰が得られ、骨折を免れる確率が高くなりますが、使用していなければ無効な点が問題です。つまり、骨折予防効果は転倒時着用率にかかっているので、コンプライアンス(法合遵守、職業倫理)が大変重要ですが、使いにくさのため、自発的使用に任せると使用率は経時的に低下します。
ヒッププロテクターの骨折予防効果
ヒッププロテクターによる大腿骨頚部骨折予防試験のメタアナリシス(複数の研究結果から、原データではなく平均値や標準偏差などから要約統計量を引き出す手法)(図2)によれば、施設等ごとの無作為化試験では、施設入所高齢者を対象に大腿骨頚部骨折を60%も減少させていますが、個人ごとの無作為化試験では有意な結果は得られていません。
このことは施設全体としてヒッププロテクターを使用するという条件があると成功することが示唆され、多くが上げ下ろしも自分で行えないほど自立の低下している者を対象とするので、おそらく介護側からのヒッププロテクター使用への支援が必要ということかもしれません。いずれにしても在宅レベル高齢者に対する有効性のエビデンス(根拠に基づいた医療)はありません。
ヒッププロテクターは、特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護施設入所者で大腿骨頚部骨折リスクを有する者が最もよい適応です。その際、施設介護者がヒッププロテクターの意義を十分理解して、使用を日常的に支援することが必要で、それがないとコンプライアンスは下がり骨折予防達成は困難と予想されます。
現在、ヒッププロテクター購入は自費なので、個人的経済負担は少なくありませんが、医療経済的解析研究によれば、ヒッププロテクターは社会全体でかかる費用は減少させながら、QOLで補正した生存年の獲得という一番優れた医療経済効果を社会にもたらし、公的に補助をする意義が大きいことが示めされています。