レビー小体型認知症
公開日:2016年7月26日 14時00分
更新日:2019年11月 8日 16時13分
レビー小体型認知症とは
レビー小体型認知症とは、老年期に認知症を呈する病気の一つで、変性性(脳の神経細胞が原因不明に減少する病態)の認知症では、アルツハイマー型認知症についで多い病気です。高齢者の認知症の約20%を占めています。早い方では40歳ころから発症する人もいます。
記憶障害を中心とした認知症と、動作が遅くなり転びやすくなるパーキンソン症状、繰り返す幻視がみられます。しかし、患者自身には病気であるという認識がありません。男性の方が女性の約2倍発症しやすく、他の認知症と比べて進行が早いのが特徴です。
レビー小体型認知症の症状
認知機能障害
認知機能の障害とはいつ・どこといった状況の把握が難しかったり、会話での理解力が低くなります。このような症状は良い時と悪い時とムラがあります。
幻視
レビー小体型認知症では発症初期から「知らない人がいる」といった実際には見えないものが生々しく見える症状の幻視がしばしば現れます。この幻視は、他の認知症とレビー小体型認知症を区別できる、特徴的な症状です。"壁に虫が這っている"、"子供が枕元に座っている" "ふとんが人の姿にみえる"といった錯視がしばしばみられます。これらの視覚性の認知障害は夜間に現れやすくなります。
パーキンソン症状
パーキンソン症状とはパーキンソン病に似た運動の障害で、体が固くなり動きづらくなる、手が震える、急に止まれないといった症状があります。ですからレビー小体型認知症の患者さんは転倒の危険が高く、寝たきりにもなりやすいといえます。
その他に自律神経障害もみられます。便秘や尿失禁、起立性低血圧などが現れ、場合によっては失神して倒れることもあります。
レビー小体型認知症で見られるその他の症状
気分や態度の変動が大きく、一見全く穏やかな状態から無気力状態、興奮、錯乱(さくらん)といった症状を一日の中でも繰り返したり、日中に惰眠(だみん)をむさぼったりすることも経験されます。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体という異常な蛋白を大脳皮質に広く認めます。レビー小体が現れる原因は脳の年齢的な変化と考えられています。脳の神経細胞が徐々に減っていき、特に記憶に関連した側頭葉と情報処理をする後頭葉が萎縮するため幻視が出やすいと考えられています。
レビー小体型認知症の診断
検査では脳のMRIが行われます。全体の脳萎縮を認めますが、アルツハイマー病と比較すると海馬の萎縮は軽度です。また脳の血流をみるSPECT検査では頭頂葉・側頭葉・後頭葉で血流低下を認めます。
レビー小体型認知症の治療
レビー小体型認知症そのものを治す治療はありません。現状では症状に対する薬を使用して効果をみていきます。
抗精神薬による精神症状のコントロールと抗パーキンソン病薬による運動症状の改善、自律神経障害に対しての血圧コントロールなどがあります。レビー小体型認知症の患者さんでは抗精神薬への反応が過敏である事があり、少量より時間をかけて様子をみながら薬の内容を検討する事が必要です。また、向精神薬は運動症状を悪化させる作用があるものが多く、逆に抗パーキンソン病薬は精神症状を増悪させる事があるため、薬剤調節は難しい場合もあり、個々の患者さんの生活や介護がしやすいように薬をうまく考える必要があります。アルツハイマー型認知症の治療薬が効果的な場合もあり、試みられることもあります。
レビー小体型認知症のケア
レビー小体型認知症の方で注意が必要なのは転倒です。転倒を防ぐにはリハビリテーションや日常生活での散歩などで運動能力の衰えを遅らせることです。
幻視については、本人は本当に見えている(ように脳が誤作動している)ため、「そんなことはない」と否定してはいけません。脳の病気でそのように見えることを理解し、非常に不安感が強い時は一人にしない、といった対応が必要です。
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