若年性認知症の支援
公開日:2016年7月26日 16時00分
更新日:2022年4月27日 09時46分
「認知症」という病気は同じでも、高齢者と若年者では生活のしにくさは少し異なります。そのため、生活の支援は、若年性認知症の方とその家族の抱える問題を知り、その知識を持って行うことが必要です。
受診・受療の支援
若年性認知症の場合、社会で活躍中の年齢で発症するため、病気による能力低下の影響が、生活の中で顕著に現れます。病気と気づかれやすい一方で、他の病気を疑われる、診断確定に時間がかかるなど、適切な治療までに遠回りすると、その間の生活にも影響します。
認知症が疑われた時には、鑑別診断ができる専門の医療機関への受診がお勧めです。そして、本人が自ら受診する気持ちになれるよう、不安な気持ちに寄り添うことが大切です。病気と診断されることの不安に加え、鑑別診断のための色々な検査も負担にもなります。ご家族だけではなく、職場の上司、同僚や友人の助言、かかりつけ医の先生のお力添えも非常に有力です。
また、今後色々な制度を利用するためにも、病名を確認して、本人も告知を受け、同時に継続して相談できる支援者を見つけることが重要です。
生活の支援
- 経済的支援
就労が困難で収入が減ったり、医療費や介護サービス利用料で経済的に負担になったりするため、お金に関する制度は早めに利用を検討することをお勧めします。
「自立支援医療(精神通院)」:認知症の治療にかかる医療費の自己負担分が助成されます。
(リンク1 「自立支援医療(精神通院医療)の概要」厚生労働省)「精神障害者保健福祉手帳」:国および自治体の障害者のための制度が利用できます。自立支援医療以外にも医療費の助成を受けられる自治体もあります。
(リンク2 「みんなのメンタルヘルス総合サイト『精神障碍者保健福祉手帳』厚生労働省)「障害年金」:受給要件を満たしている場合、障害を事由とした年金の給付を受けることができます。
(リンク3 「障害年金」日本年金機構) - 日常生活支援
40歳以上の場合には介護保険サービス(リンク4 「介護保険」)、40歳未満の場合には障害者の自立支援サービスを受けることができます。
(リンク5 「障害者自立支援法のサービス利用について」) - 就労支援
経済面・心理面ともに、就労が継続できる方法を職場と相談できると理想的です。職場の理解が得られる場合、仕事内容の変更や、障害者雇用の検討ができるかを相談してみるとよいでしょう。ただし、それが本人の負担になったり、休職して休業保障は受けられてもすることがなくて自閉的な生活になったりするようであれば、退職して生活の再設計を検討した方がよい場合もあります。
心理・社会的支援
若年性認知症の場合、同じ立場の人と出会う機会がなかなか得られず、病気のことを話題にする機会が少ないことがあります。自身の生活を前向きに考えるためには、つらさや苦しさを、聞いてくれる人に話すことが必要です。認知症の症状や周辺症状への対応のみならず、本人や家族の想いそのものを受け止め支えていく人や場所が必要です。
本人の場合は、症状が進行すると想いを語ったり人の話を聞いて考えたりすることが難しくなるため、初期の段階で臨床心理士やソーシャルワーカーなどの、想いを聞きそれに対する専門的支援を行う支援者と関わったり、家族会で同じ立場の人と出会ったりすることが大切です。
また、告知直後のサポートは最も重要であり、それによりその後の病気の受け止めや生活の仕方は大きく変化します。
認知症の症状の進行に合わせて適切な助言を行い、継続して寄り添っていくことが、必要な心理・社会的支援になります。
関連書籍
公益財団法人長寿科学振興財団は超高齢社会における喫緊の課題として認知症の実態、診断・予防・ケアについて学術的研究成果を「認知症の予防とケア」と題して研究業績集にまとめました。研究業績集の内容を財団ホームページにて公開しております。是非ご覧ください。