介護保険の福祉用具:移動用リフト
公開日:2019年2月13日 16時10分
更新日:2023年8月 2日 11時09分
移動用リフトとは
移動用リフトとは、ベッド上から車いすへの移乗などの際に、要介護の方の体を持ち上げて移動する目的で使用されます。
要介護の方が、ご自身で起き上がれる、ベッドの端に座ることが出来る、支えがあれば立ち上がれるなどの状態であれば、特に使用する必要はありません。しかし、例えば特殊寝台等で「起き上がる」という動作を助けたとしても、ご自身でベッドから降りて車いすへ移乗できない場合、介護者が抱えて車いすへ移乗する必要があります。
これを繰り返すと、介護者の方は腰を痛めてしまうことがあります。一般に、人が持ち上げることが出来るのは、20~30kg程度といわれています。つまり、1人の介護する方が1人の要介護の方を持ち上げることは困難であり、介護する方だけではなく、要介護の方にも「ベッドからの転落」や「車いすに(安全に)移乗できない」などの問題も発生します。
さらに、自宅での介護中に、介護者の方がケガをする(腰を痛めることも含む)ようなことがあれば、お互いのQOL(生活の質)が低下してしまい、自宅で安全に生活することも、難しくなってしまいます。
移動用リフトの種類
自分で身体を動かすのが難しい要介護者の移動を補助し、介護者の負担を軽減するのが移動用リフトです。介護保険の対象となる移動用リフトには、いくつかのタイプがあります。
床走行式リフト
移乗を介助するもっとも手軽な機器は床走行式のリフトです(写真1)。
上下の動きは油圧、空気圧、水圧を使用したポンプの動きにより、コントロールされます。水平方向の移動は台車にキャスタ輪がついており、これを介助者が押して移動させます。このリフトは、床などに固定する必要が無いため、取り付け工事は不要です。多くの場所で利用することができます。
ただし、いくつかの点で、家屋の改造が必要です。例えば、
- 畳の上では使用しにくいため、フローリングの床にする必要がある
- 移動する範囲に、段差が無いようにする
- ベッドの脇で回転させられるだけのスペースを確保する
床走行式リフトは、安定性を維持するため、台車の面積が比較的大きく、移動のスペースも広く必要です。また入浴用に使用するには、浴槽までの移動経路を平坦にすることと、浴槽の下にキャスタ輪が入るスペースを作る必要があります。
シート状の吊り具は、「しきこみ」が容易ではないため、熟練するまで時間がかかり、使用方法について指導を受ける必要があります。しかし、ベッドから車椅子への移動には、介護者が1人で可能であり、介護者が高齢な場合や、介護者と要介護の方の体格差が大きい場合、腰痛がある場合などには、有効な道具となります。
天井走行型リフト
天井走行型リフトは、天井にレールを設置し、レール上を走行するクレーン型のリフトです。電動または手動で、ベッドからの昇降動作や、レールに従った移動ができます。
日本では家屋の特徴として、比較的狭い部屋が多いことや、畳の生活であること、天井の高い家屋が少ないことなどから、床走行式リフトよりも適している場合があります。
しかし、このタイプのリフトを設置するには、使用場所までレールを設置しなければならず、大がかりな住宅の改造が必要となり、費用が非常に高額となります。レールを設置するために、新たに柱を立てるケースもあります。
据置式リフト
据置式リフトは、寝室のベッド上にやぐらを組み、本体部分が上のレールに沿って移動してきます。取り付けられているハンガーによって身体を吊り上げ、車いすへの移乗や、簡易トイレなど部屋内を移動することができます。
部屋の内に取り付けをするため、家屋改造の必要がありません。簡単に取り付けが行えるため、必要な場所に必要な時に取り付けすることができます。
一方で、ベッドを中心とした位置でレールが固定されるため、移動できる範囲が限られています。ベッドから、ベッドサイドに置いた車いすや簡易トイレへの移動として、利用できます。
尚、据置式リフトの中には、やぐらの脚を部屋の四隅に立て、リフトの本体がレールに沿って横に移動する動きと、レール自体が縦に移動するタイプもあります。この場合は、部屋の中で4方向の移動ができ、移動範囲を部屋全体とすることができます。
介護保険の利用について
介護保険の要介護認定を受けている場合、移動用リフトは介護保険を利用することで、1割負担で貸与できます。しかし、65歳以上で現役並みに所得がある利用者の自己負担は2割又は3割となります。
また、移動用リフトは、「つり具」の部分は別に用意する必要があります。「つり具」の部分は、要介護の方の体格に合ったもので、移動用リフトに適合するタイプのものを、別途、「特殊福祉用具」として、介護保険を利用して、購入することができます。