介護保険の福祉用具:自動排泄処理装置
公開日:2019年2月13日 16時00分
更新日:2019年2月21日 13時42分
自動排泄処理装置とは1)
自動排泄処理装置は特殊尿器とも呼ばれ、尿などを受けるレシーバーと、レシーバーに繋がっている本体でできており、本体にはレシーバーで受けた排泄物を流して溜めるポンプとタンクが収まっています。要介護者が寝ているベッドサイドに本体を置き、本人の手の届く範囲に置いたレシーバーに排尿すれば尿が自動的に吸引されていく仕組みです。
尿意があってもトイレまで歩くことが難しい場合や、トイレまで行くのに時間がかかり間に合わない場合に本人や介護者の介助によってレシーバーをあてて使用します。
自動排泄処理装置の種類
自動排泄処理装置は「特殊尿器」と呼ばれていますが、尿だけではなく、便を吸引できるものもあります。自動排泄処理装置には、大きく分けて3つの種類があります。
- 受容器に採った便と尿を自動的に吸引してタンクに溜めつつ陰部を温水洗浄、温風乾燥するもの
- 女性用、男性用受容器または吸収性不織布を常時身体に装着して、採尿した尿を自動的に吸引し、導尿チューブを通して蓄尿タンクに貯めておくもの(装着型)
- 排尿時に男性のペニス、女性の会陰部に受尿器をあてて、採尿した尿を自動的に吸引し、導尿チューブを通して蓄尿タンクに貯めておく構造をもったもの(手持ち型)
自動排泄処理装置の交換可能部品の詳細については、「自動排泄処理装置の交換可能部品」のページをご覧ください。
自動排泄処理装置のメリット2)3)
自動排泄処理装置は、主に寝たきりの状態にある方が、介護保険によるサービスを利用できます。そのメリットとしては、大きく5つが考えられます。
- 男女ともに、おむつや尿吸収パッドに比べ、排尿感、排便感が良い
- 排泄物が付着することによる「皮膚刺激」が少なく、衛生的
- 不適切に使用されていた、おむつや尿パッドから、開放される
- 介護者がその場にいなくても排泄が可能なため、介護者への気遣いのストレスがなくなる、その結果、本人は十分な水分補給ができる
- 特に夜間帯の「介護者の負担」を軽減できる
前述の通り、自動排泄処理装置にはいくつかの種類がありますが、中でも便と尿を自動吸引して、なおかつ陰部を温水洗浄する用具であれば、本人の気遣いは大きく軽減されるでしょう。それと同時に、介護者による「昼夜における介護負担」も、軽減されるといえます。
自動排泄処理装置はどのような人が使えるのか4)
自動排泄処理装置は、だれでも使用することができますが、介護保険による給付を受けられるのは、介護保険の対象となる人のみです。介護保険の対象者とは、65歳以上もしくは40歳以上で特定疾患などがあり、要介護認定を受けている人を指します。 ただし、自動排泄処理装置は要支援1・2、要介護1・2・3の人は、原則的に保険給付の対象となりません。要介護4・5の人のみが対象となります。
介護保険とおおよその費用4)
自動排泄処理装置はレシーバーと本体に分けられますが、本体は福祉用具貸与(レンタル)の対象用具です。要介護者が、自分の家で自立した日常生活を送れるように助ける用具を福祉用具といい、貸与による使用を基本としています。一方、他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が強い性質のものや、使用することで、もとの形態・品質が変化してしまい、再利用できないものなどは特定福祉用具販売の対象用具となり、購入して使用します。自動排泄処理装置交換可能部品であるレシーバーやチューブ、タンク等、尿や便の経路になるものは購入のみとなり、本体は貸与も購入も可能ですが、2018年の改定により、介護保険を利用できるのは、レンタルの場合のみとなります。
貸与に係る費用の1割を利用者が負担します。しかし、65歳以上で現役並みに所得がある利用者の自己負担は2割又は3割となります。
要介護度別に1ヵ月間の支給限度額が決まっているため、他に利用している介護サービスと組合せて、限度額に応じた福祉用具をレンタルする必要があります。限度額を超えた部分は全額自己負担となるので注意が必要です。
自動排泄処理装置の利用状況
在宅医療への移行が進められる中、おむつではなく、こうした自動排泄処理装置を利用する方も、増えてきているようです。自動排泄処理装置が、介護保険利用により使用できるようになったのは、2012年からです。この頃の貸与件数は5,800件ほどでしたが、2015年には、14,000件を超えました。2016年から減少し、2017年の貸与件数は12,500件程度です。
一件あたりの貸与費用も、多少の増減があります。2012年には8,400円程度、2015年には9,000円を少し上回っていました。2016年には8,800円程度になりましたが、2017年は8,900円を少し超えました。これは、実際に貸与される製品の種類やその金額によっても変わってきますので、おおよそは9,000円程度で推移すると考えられます(図1、表1)。
年 | 件数(千件) | 1件あたり平均貸与金額(円) |
---|---|---|
2012年 | 5.8 | 8,396.6 |
2013年 | 11.8 | 8,705.1 |
2014年 | 14.2 | 8,926.8 |
2015年 | 14.5 | 9,016.6 |
2016年 | 13.7 | 8,790.5 |
2017年 | 12.5 | 8,976.8 |