介護保険の福祉用具:簡易浴槽
公開日:2019年2月13日 15時20分
更新日:2019年2月14日 12時01分
「入浴する」ことの大切さ
体を清潔に保つ生活動作には、入浴やシャワー浴などがあります。中でも「湯船につかる」という入浴は、日本人にとって欠かせない文化とも言えます。
入浴は、皮膚をきれいにし、痒みをとり、免疫力をあげるだけではなく、リラックス効果が期待できる生活動作です。適切な温度の浴槽に、適切な時間をかけて入浴することで、夜間の睡眠を促すという作用もあります。また、千葉大学などの研究グループによる高齢者14,000人を対象とした3年間の大規模調査より、入浴習慣のある高齢者は、要介護リスクが低くなるという調査結果もあります1)。
簡易浴槽とは2)
簡易浴槽とは、要介護者である高齢者が、居室などで簡単に入浴ができるよう、入浴動作を助けるためのものです(図1)。ベッド上からの移動ができず、自宅の浴槽では入れることが困難な場合、この「簡易浴槽」を使うことで、介護者、家族の方の負担軽減を図ります。
簡易浴槽の種類
簡易浴槽は、ポータブル浴槽とも呼ばれ、入浴時は風呂からお湯をくみ上げる機能がある製品や、使用後の排水ができる排水ユニットと一体になった製品もあります。
簡易浴槽の選び方
簡易浴槽を選ぶ時は、このお湯の入れ方や排水の仕方をよく確認し、自宅で使用しやすいかどうかをしっかり確認する必要があります。給水ユニットで浴室の浴槽から湯を引く場合は、ホースとの距離が長いと湯の温度が下がってしまうことがあり、利用場所と湯のある場所の関係を考えて選ぶとよいでしょう。
簡易浴槽はどのような人が使えるのか
簡易浴槽は、だれでも購入することができますが、介護保険による助成が受けられるのは、介護保険の対象となる方です。
介護保険の対象者とは、65歳以上もしくは40歳以上で特定疾患などがあり、要介護認定を受けている人を指します。
介護保険とおおよその費用3)4)
簡易浴槽は、特定福祉用具販売の対象用具です。
要介護者が、自分の家で自立した日常生活を送れるように助ける用具を福祉用具といいますが、原則的には「貸与(レンタル)による使用となります。
しかし、他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が強い性質のもの(例えば、入浴や排泄に関係するもの)や、使用することで、もとの形態・品質が変化してしまい、再利用できないものなどは、「特定福祉用具販売」の対象用具となり、購入して使用することになります。簡易浴槽もその一つです。
簡易浴槽は、利用者がいったん全額を支払った後、費用の9割(一定以上所得者の場合は8割又は7割)が介護保険から払い戻されます。(償還払い)例えば、1万円の腰掛便座を購入した場合、利用者の負担額は1,000円です。
毎年4月1日から翌年3月末日までの1年間で購入できるのは10万円までで、利用者負担が1割の方の場合、最大で9万円が介護保険から給付されます。限度額を超えた部分は全額自己負担となるので注意が必要です。
簡易浴槽使用時の注意点
簡易浴槽は一般的に、浴室での入浴が困難である、介護者の負担が大きいなどの状況下で、使用されるものです。つまり、要介護者のベッドに近い場所や、リビングなどの比較的広い「部屋」の中で使用することが多いでしょう。
この場合、以下の点に注意すると、より安全で快適な入浴介助が行えると考えられます。
- お湯を流すホースの距離:ホースが長すぎると、簡易浴槽に注がれるお湯の温度が下がってしまいます。
- 手早く入浴する:簡易浴槽には「加温」の機能は付いていないため、適温を維持することが難しくなります。脱衣や更衣に必要な物品(タオルや着替え、腰かけるいすなど)は、予め用意しておきましょう。
- 入浴時は目を離さない:簡易浴槽は、普通の浴槽のように、全体が固い素材ではできていない製品があります。不用意に寄り掛かったり、1ヵ所に体重をかけてしまうと、簡易浴槽の形状が崩れるだけではなく、入浴している要介護者も体勢を崩してしまう可能性があります。事故を避けるためにも、入浴中は介護者の目を離さないよう、十分に注意しましょう。