介護保険の福祉用具:階段昇降機
公開日:2019年2月13日 14時50分
更新日:2023年8月 9日 14時31分
階段昇降機とは1)
階段昇降機とは、高齢者や障害者がいすに座ったまま、階段を安全に昇降するための装置の総称です。
階段昇降機を利用する目的は次のとおりです。
- 階段昇降動作の困難な障がい者や高齢者の移動を助け日常生活の自立に寄与する
- 住宅内における垂直移動の省力化により生活の利便性の向上を図る
- 階段事故の発生を防止する
在宅での介護が必要となった場合、要介護の方の居室が1階であれば問題ありませんが、2階以上の高さの部屋になる場合は、階段昇降による事故が起こりやすくなります。
また、介護する方にとっても、例えば通院などで外出する場合に、2階から要介護の方を降ろすのは、非常に負担が大きな動作です。
階段昇降機は、要介護の方の階段昇降による事故や介護者の負担などの在宅介護の問題を解決し、要介護の方が以前の生活に近い生活が送れるよう、設置される福祉用具となります。
階段昇降機のタイプ
階段昇降機には、いくつかのタイプがあります。
いすに座って移動するタイプ
いすに座って移動するタイプは、写真1のとおり階段の側壁に取り付けられたレールに沿って、いすが電動で昇降するタイプのものです。このタイプの階段昇降機は大きく、直線階段用と曲線階段用とに分類されています。
自宅の階段が、まっすぐ直線で上階へ上がる場合は「直線階段用」、途中で一度曲がりながら上階へ上がる場合は「曲線階段用」を使用します。
また、車いすなどから移動するためのスペースを確保するために、階段の形状に関わりなく、一番下の段が曲線になっているタイプもあります。このタイプの場合は、階段の反対側にある広めのスペースで、車いすから階段昇降機のいすへと移動し、180度回転しながら階段側に位置を変え、そこから上に向かって移動していきます。介護施設などに設置されているのは、このタイプが多いようです。
いずれも、電動で操作しますが、いすに座って手元のコントローラーで「上」「下」と操作すると、壁に取り付けたレールに沿って、いすごと移動します。
車いすを乗せて移動するタイプ
車いすを乗せて階段を昇降する階段昇降機もあります。屋内用と屋外用があり、屋外用のものは、防塵・防滴仕様になっています。エスカレーターが無い駅や、階段で上がる公園の入り口など、公共施設で多く見かけられます。車いすにのったまま、階段昇降機のプラットフォーム部分に乗り、そのまま壁に取り付けたレールに沿って昇降します。
プラットフォームの大きさによって、2人乗り(車いす1台および介助者2名分)、3人乗りなどのタイプがあります。
尚、このタイプは車いすごとプラットフォームに乗れるため、階段下側での曲線部分はありません。直線で昇降します。
可搬型の階段昇降機
河搬型の階段昇降機は、壁に専用のレールを設置せず、必要な時に必要な場所で使用することができます。一般的な製品として、エレベーターの無い駅のホームへ上がるために、荷物を載せて移動する階段昇降機がありますが、これに人が座って乗れるよう、安全面などの配慮がなされたものです。
階段面に接する部分は、キャスター(車輪)とキャタピラで構成されており、階段の踊り場では手動で旋回します。このタイプの階段昇降機は、いすに座っている要介護の方本人が操作するのではなく、介護者(介助者)が後面にあるハンドル部分を持って操作します。
平面に置かれた状態では、いすの部分がお尻よりも膝の方が高くなっています。階段を昇降する状態で、いすの部分が床と並行になりますが、前向きに落ちてしまうことが無いよう、型から腰にかけてベルトで体を固定します。基本的に、らせん階段や曲がり階段では使用しません。
尚、可搬型階段昇降機は、「可搬型階段昇降機安全指導員」が、操作指導を行います。これは、公益財団法人テクノエイド協会が管理する民間資格ですが、この資格を有する介護士などの専門職が増えています。
介護保険の利用2)
階段昇降機は現時点において、介護保険制度の対象外となっています。
しかし、在宅での必要性が高まっているため、自治体によっては、レールや操作装置などの設置工事費に対し、助成を受けられるケースが増えています。助成を受けられるかどうか、助成の割合はどの程度になるかは、自治体によって違いますので、お住まいの自治体に確認すると良いでしょう。購入すると非常に高額ではありますが、メーカーによっては貸与で利用できるケースもあります。
尚、可搬型階段昇降機の中には、専用車いすが設置された製品があり、これについては介護保険を利用した貸与が可能です。こちらについても、お住まいの自治体やケアマネジャーに確認してください。
参考文献
- 公益財団法人テクノエイド協会 可搬型階段昇降機とは