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介護保険の福祉用具:歩行器

公開日:2019年2月13日 16時40分
更新日:2019年7月17日 11時42分

福祉用具の歩行器とは1)

 福祉用具の歩行器とは、「転倒しやすい」状態にある高齢者の「歩く」動作を助ける福祉用具です。高齢になると、「歩く」という動作が難しくなりますが、その理由としては、次のようなことが挙げられます(表1)。

表1:歩行しにくくなる理由と歩行の状況
要因理由歩行の状況
感覚障害 麻痺、血行障害、むくみ、しびれなどにより、足の感覚に障害が起こる 転倒しやすい
視覚障害 老人性白内障や緑内障などにより、視覚に障害が起こる 特に夕方や夜間に転倒しやすい
筋力低下 変形性脊椎症、変形性膝関節症、大腿骨頸部骨折などの骨関節疾患、および脳卒中後遺症による麻痺などが原因で、筋力が低下する 転倒しやすい(ふらつき、つまづき、滑るなど)
バランス障害 老化、四肢麻痺、脳卒中後遺症、パーキンソン病などにより、バランスが保ちにくくなる 異常歩行や、転倒しやすい状態
関節の可動域制限 五十肩、骨折、変形性関節症、骨粗しょう症などにより、肩関節、膝関節、股関節、足関節の可動が制限される 歩行時の姿勢が悪い、歩幅が少ない、転倒しやすい
すくみ足 パーキンソン病、多発性脳梗塞などにより、足が上手く前に出せない 転倒しやすい

歩行器の種類2)

 歩行器には、いくつかの種類があります。

車輪の無い歩行器

 車輪の無い歩行器は、車輪やキャスターが無く、フレームの下端接地面には滑り止めのゴムが付いています。左右のフレームを交互にずらしながら進むタイプ(持ち上げ型歩行器)(図1)や、フレーム全体を持ち上げ前に置くことを繰り返して進むタイプのもの(交互型歩行器)があります。これらの多くは、歩行訓練のために使用されています。

図1:持ち上げ型歩行器

 尚、持ち上げ型歩行器には、折りたためるタイプと、折りたたみが出来ない固定タイプがあり、折りたためるタイプの方が、少し重量が重くなります。交互型歩行器は歩行動作が少し難しくなりますが、四肢の筋力低下の方に向いている歩行器です。

車輪のある歩行器

 車輪のある歩行器とは、車輪またはキャスターが付いた歩行器です。持ち上げ型歩行器の前脚に車輪またはキャスターが付いたものを「前輪歩行器」、持ち上げ型方歩行器の4本の脚すべてに車輪またはキャスターが付いたものを「四輪歩行器」といいます。いずれも、グリップ部分を握ったり体重をかけると、車輪またはキャスターにストッパーがかかり、歩行器が止まる仕組みになっています。

 車輪のある歩行器には、屋内用と屋外用があります。屋内ではコンパクトなサイズで細かい動きができるようにされており、屋外用では障害物に対応するため車輪が大きくなってバランスの良いように工夫されています。使用場所や身体の状態に合わせて選ぶことができます。

シルバーカー

 座って休憩することができ、買い物などの物を運ぶ機能を持つ、本邦独自の四輪車のことを、シルバーカーと呼んでいます。写真1のようにコンパクトで収納が容易であり、高齢者の外出時におけるニーズを充足する機能を備えており、高齢の女性に広く普及しています。

 シルバーカーの需要が多いため、買い物に便利な収納の多いシルバーカーや、狭い道でも動くことのできるコンパクトなシルバーカーもあります。女性の使用が多いため、色柄やデザインなどオシャレなシルバーカーも増えています。

 多くの高齢者に普及しているものの、一般的には公的助成の対象にはなっていません。

写真1:シルバーカー

歩行器の介護保険の利用について4)

 介護保険の要介護認定(要支援1以上)を受けている場合、歩行器は、介護保険を利用することで、1割負担で貸与できます。しかし、65歳以上で現役並みに所得がある利用者の自己負担は2割又は3割となります。

 歩行器と似た様な用途で利用する福祉用具には「歩行車」と呼ばれるものや「シルバーカー」と呼ばれるものがあります。これらの福祉用具は、歩行を助けるものではありますが、必ずしも「介護」として利用されるものでは無いため、介護保険の適用とはなりません。

 詳しくは、お住まいの自治体に問い合わせるか、ケアマネージャーに確認すると良いでしょう。

歩行器の利用状況3)

 介護保険を利用し、歩行器を貸与する人は年々増えています。2003年頃は100万件にも満たないほどでしたが、2007年頃には200万件を超えました。さらに2013年頃には500万件を超え、2017年には840万件を超えています(図2、表2)。

 一方、介護保険にて歩行器を貸与した場合の金額は、やや変動しています。2003年頃には3,200円を超えていましたが、2007年頃には3,000円を割り込んでいます。さらに2013年には2,869円まで下がっていますが、ここからやや増加傾向となり、2016年には2,900円を超えました。

図2:歩行器の貸与件数および金額の推移を示す折れ線グラフと棒グラフ。貸与金額は2013年以前まで減少傾向でしたが2013年以降上昇傾向に転じており、件数について年々増えていることを表す。
図2:歩行器 貸与件数および貸与金額の推移5)より作図

 歩行器は、軽量化やコンパクト化などとともに、多機能化やデザイン性向上など、どんどん進化しています。こうした背景もあり、歩行器を貸与する人は増えているものの、歩行器自体の貸与金額が多少高くなっているためと考えられます。

表2:歩行器 貸与件数および貸与金額の推移5)
件数(千件) 1件あたり平均貸与金額(円)
2007年 2,064.8 2,997.7
2008年 2,477.4 2,978.8
2009年 2,941.4 2,959.8
2010年 3,451.2 2,930.5
2011年 4,017.9 2,904.0
2012年 4,629.7 2,879.1
2013年 5,293.1 2,868.5
2014年 6,007.0 2,879.4
2015年 6,798.7 2,893.2
2016年 7,603.0 2,911.5
2017年 8,412.9 2,933.9

参考文献

  1. 公益財団法人テクノエイド協会 福祉用具シリーズ Vol.12 歩行補助用具の活用(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 公益財団法人テクノエイド協会 介護保険給付福祉用具情報 貸与9.歩行器(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 厚生労働省 社保審-介護給付費分科会 第141回参考資料1 福祉用具貸与(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 厚生労働省 平成30年度介護報酬改定における各サービス毎の改定事項について 16.福祉用具貸与 P154-158(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 厚生労働省 介護給付費等実態統計(旧:介護給付費等実態調査):結果の概要(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

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