老化の総合評価
公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2019年2月 1日 17時37分
老化の指標とは
老化を遅らせる研究を行うには、老化の進み具合を判断できる指標が必要となります。しかし、人間の老化において生理機能、知的機能、運動機能、外見上の変化などの加齢変化は必ずしも同じ早さで進むわけではありません。老化の進み方は個人差が大きいものなのです。
例えば、年齢が同じであっても見た目が異なる人が多いということ、同じ年齢であっても病気になる人とそうでない人がいること、高齢であってもマスターズ陸上などで活躍する高齢者がいるなどというのが、良い例なのではないでしょうか。
また、生理機能の中でも、感覚器機能、肝機能、腎機能、循環器機能、免疫機能、呼吸器機能、消化管機能、内分泌機能など臓器ごとに、加齢変化は異なっています。
近年、加齢により大きく変化する検査項目を参考として、老化の進行レベルを客観的に評価しようとする試みがなされています。この時に必要となる指標を「老化の指標」といいます。
老化の指標の選択の基準
加齢に伴い変動し、老化や加齢を予測できる体の中にある因子を、「老化バイオマーカー」といいます1)。例えば、性ホルモンであるエストロゲンやテストステロンなどがこれにあたります。近年では、加齢は生活習慣病とも強い関わり合いがある事がわかり、高齢化社会を迎えた現代において、老化を客観的に評価する老化バイオマーカーの利用価値は高まっています。
しかし、現在のところ標準化された老化の推定法は、まだ明確になっていません。老化の指標を正確に測るために、老化のバイオマーカーの選択基準と、根本的な老化因子の確認、そして新たな統計モデルの開発が必要とされています。
老化の指標の種類
老化について4つの側面から評価する指標として「栄養」「体力」「認知・こころ」「社会」が挙げられます2)3)。これらの4つの側面は、何を見ていくのでしょうか。
1. 栄養面の機能
高齢期には、栄養状態を良好に保つことが老化を抑制します。BMI値(体重÷身長の2乗で算出される値)、総コレステロール値、アルブミン値、血中ヘモグロビン値の4つの検査値から評価されます。
2. 体力面の機能
体力をしっかり維持していくことが、高齢期には老化を抑制します。握力、歩行速度、開眼片足立ちの3つの検査から評価します。
3. 認知・こころの機能
よく頭を使うこと、前向きな気持ちを持つことも、老化を抑制します。認知・こころの状態、抗うつ度と3つの認知機能検査から評価します。
4. 社会面の機能
社会面では、活動的な生活を送ることや、地域とのつながりを保つことが老化の抑制につながります。生活の活動度を「生活機能」と「外出頻度」から評価します。
これら4つの側面で老化の評価を行った上で、要介護度などについての評価がなされることになります。
老化指標に影響する重要な6つの要因
また、4つの老化指標に影響する重要な要因が、6つあるとされています2)3)。
1. 血圧・脈拍
1つめは「血圧・脈拍」です。高血圧は動脈硬化を引き起こし、心疾患や脳卒中を引き起こします。
2. 血液検査
2つめは「血液検査」です。糖尿病の指標や腎臓の働きの指標となります。
3. 体組成測定
3つめは「体組成測定」で、体重に占める骨格筋割合を表します。この結果は体力面に大きな影響を与え、骨格筋が多い場合は、代謝の高まりと老化予防に期待がもてます。
4. 現病歴・既往歴
4つめは「現病歴・既往歴」です。ここでは老化の指標に特に影響を与える疾患として高血圧、心疾患、脳卒中、糖尿病、骨関節疾患にかかっているかどうか、過去に何らかの病気にかかっていたかどうかを評価します。
5. 動脈硬化度測定
5つめは「動脈硬化度測定」で、これは血管の老化や血管の狭さを示します。
6. 口腔機能
6つめが「口腔機能」です。口腔機能が良好であると、栄養状態も良くなり、体力も維持できます。また口腔機能が働いていると、脳にも良い影響を与えることで知られています。嚥下力と咀嚼力で口腔内を評価します。