スーパーセンテナリアン
公開日:2019年8月 9日 10時00分
更新日:2022年2月10日 10時51分
人は誰でも寿命を迎えます。寿命が長いほど幸せとは限りませんが、多くの人にとって健康で長く生きられることは理想ではないでしょうか。医療技術の進歩や健康保険制度など、いろいろな要因で男性女性とも平均寿命が延び、世界一の長寿国となった日本ですが、長寿の人の中でも110歳を超える「スーパーセンテナリアン」と呼ばれる存在が注目されています。
センテナリアン
センテナリアンとは、百歳以上の長寿者を指す言葉で「1世紀以上を生き抜いた」という意味があります。百寿者とも呼ばれています。
2018年9月1日時点の住民基本台帳による都道府県・指定都市・中核市からの報告数によると、百歳以上の高齢者の数は、老人福祉法が制定された1963年で153人、1981年に1,000人を超え、1998年に1万人を超えました。さらに2012年に5万人を超え、2018年には69,785人となっており、急速に増加しています。また、2018年の百歳以上の高齢者の男女比を見てみると、女性が61,454人で全体の約88%となっています(表1)1)。
センテナリアンの増加および女性が圧倒的に多いという点は、日本のみならず、世界においても確認されています2)。
男性(人) | 女性(人) | 合計(人) | 女性の占める割合(%) | |
---|---|---|---|---|
平成10年(1998年) | 1,812 | 8,646 | 10,158 | 82.2 |
平成11年(1999年) | 1,973 | 9,373 | 11,346 | 82.6 |
平成12年(2000年) | 2,158 | 10,878 | 13,036 | 83.4 |
平成13年(2001年) | 2,541 | 12,934 | 15,475 | 83.6 |
平成14年(2002年) | 2,875 | 15,059 | 17,934 | 84.0 |
平成15年(2003年) | 3,159 | 17,402 | 20,561 | 84.6 |
平成16年(2004年) | 3,523 | 19,515 | 23,038 | 84.7 |
平成17年(2005年) | 3,779 | 21,775 | 25,554 | 85.2 |
平成18年(2006年) | 4,150 | 24,245 | 28,395 | 85.4 |
平成19年(2007年) | 4,613 | 27,682 | 32,295 | 85.7 |
平成20年(2008年) | 5,063 | 31,213 | 36,276 | 86.0 |
平成21年(2009年) | 5,447 | 34,952 | 40,399 | 86.5 |
平成22年(2010年) | 5,869 | 38,580 | 44,449 | 86.8 |
平成23年(2011年) | 6,162 | 41,594 | 47,756 | 87.1 |
平成24年(2012年) | 6,534 | 44,842 | 51,376 | 87.3 |
平成25年(2013年) | 6,791 | 47,606 | 54,397 | 87.5 |
平成26年(2014年) | 7,586 | 51,234 | 58,820 | 87.1 |
平成27年(2015年) | 7,840 | 53,728 | 61,568 | 87.3 |
平成28年(2016年) | 8,167 | 57,525 | 65,692 | 87.6 |
平成29年(2017年) | 8,192 | 59,579 | 67,771 | 87.9 |
平成30年(2018年) | 8,331 | 61,454 | 69,785 | 88.1 |
センテナリアンの健康状態2)3)4)
センテナリアンの健康状態はどうなっているのでしょうか。全体の80%の方が要介護であったり、認知症であったり、寝たきりであったりと、なんらかの機能の低下がみられます。認知症がなく、自立をしている方、つまり機能の高い方は全体の2割程度となっています。病歴を持つセンテナリアンは、ほとんどの方に既往があるか、慢性疾患を持っているようです。
センテナリアンには、次のような特徴があります。
- アルブミン値の低下(栄養低下)
- 炎症反応が亢進する
- 糖尿病が少ない
- 動脈硬化が少ない
これらの特徴が互いに関係しているか確認するために、栄養状態の良い人、悪い人を比較してみたところ、栄養状態の良いセンテナリアンは認知機能も高く、炎症反応が低いことが分かりました。これらのことから、健康長寿を目指すならば、栄養状態を保つことが大切だと考えられます。
スーパーセンテナリアン2)5)
1998年から2018年の20年間で約7倍に増えたセンテナリアンですが、センテナリアンよりさらに長寿となる「スーパーセンテナリアン」と呼ばれる人たちがいます。スーパーセンテナリアンとは、110歳以上の長寿者を指しており、センテナリアンよりは人数は少ないですが、健康長寿のモデルとして注目されています。
平成27年(2015年)の総務省の国勢調査によると、2015年の時点で日本にはスーパーセンテナリアンが男性9人、女性137人の合計146人いることが分かっています6)。現在ではさらに増えていると考えられますが、それでも総人口に対してとても少数であることには変わりはありません(図1)。
世界のスーパーセンテナリアン
世界には、どれくらいのスーパーセンテナリアンがいるのかを見てみましょう。
GERONTOLOGY RESEARCH GROUPによる2019年の世界のスーパーセンテナリアンのランキングデータによると、上位34人すべてが女性となっています。また、上位34人中、14人がなんと日本人女性です(2019年6月21日時点)。世界には何か国もあるにもかかわらず、多くの日本人がスーパーセンテナリアンの上位を占めていることに驚かされます。日本人が長寿であることはこのデータからも裏付けられます。
長寿化による問題
センテナリアン、スーパーセンテナリアンと呼ばれる長寿者が増加しているのは、昔に比べて栄養状態が改善されたこと、医療技術や医療保険制度の整備、介護の仕組みが進んだこと、生活環境が改善されたことなど、いろいろな要因があります。長生きできること、その環境が整っていることは喜ばしいことですが、いくつかの課題もあります。
センテナリアンのうち認知症が無い人はセンテナリアン全体の30~40%、そのうち認知症がなく自立しているが視聴力に問題がある人が14%、自立していてさらに視聴力にも問題のない人はセンテナリアン全体のわずか4%程度です。その他にも高血圧や白内障などの病気、骨折による身体機能の低下などがある方も多く、増加している長寿者の健康維持、介護を含めた生活のサポートが必要とされています2)。
寿命が延びているのは望ましいことですが、同時に病気やその治療費、介護費用などの新たな問題も発生しています。健康寿命も伸ばす健康長寿となるためにも、糖尿病や高血圧が少ないとされるスーパーセンテナリアンの研究に期待されています。
参考文献
- 日本老年医学会:老年医学系統講義テキスト.初版,西村書店,東京都,2013年,P56-57