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ナイアシンの働きと1日の摂取量

公開日:2016年7月25日 21時48分
更新日:2023年8月17日 13時18分

ナイアシンとは1)

 ナイアシンは水溶性ビタミンB群の一つで、ニコチン酸とニコチンアミドの総称です。さらに、アミノ酸の一つであるトリプトファンから、体内で、ナイアシンが合成されるため、トリプトファン含有量も考慮してナイアシン当量で表します。トリプトファン60mgがナイアシン1mgに相当するので、ナイアシン当量(mgNE)は、以下の式で表します。

ナイアシン当量(mgNE)=ナイアシン(mg)+1/60 トリプトファン(mg)

ナイアシンの吸収と働き1)

 生鮮食品中では、ナイアシンは、主にピリジンヌクレオチド(NAD、NADP)の形で存在しますが、食品を調理・加工する際に分解され、動物性食品ではニコチンアミド、植物性食品ではニコチン酸になります。生野菜や刺身など生の細胞を食べる食品の場合は、ピリジンヌクレオチドは消化管内で分解されてニコチンアミドになります。ニコチンアミドやニコチン酸は小腸から吸収されます。食品により分解率や吸収率が異なりますが、日本で一般的に食べられている食事中のナイアシンの利用効率は約60%と推定されています。

 ニコチン酸やニコチンアミドは、体内でピリジンヌクレオチドに生合成された後、脱水素酵素の補酵素として糖質、脂質、タンパク質の代謝、エネルギー産生に関与しています。また、補酵素として、脂肪酸やステロイドホルモンの生合成、ATP産生、DNAの修復や合成、細胞分化など、幅広い反応に関与しています。

ナイアシンの1日の摂取基準量1)2)

 ナイアシンはエネルギーの代謝に関与するビタミンであるため、推定平均必要量はエネルギー1,000kcalに対し4.8mgとして算出されています。半数の人が必要を満たすと推定されるこの推定平均必要量に推奨量算定係数の1.2を掛けた値が、推奨量となり、約97.5%の人が必要量を満たすと考えられる量になります。1日に必要なナイアシンの量(推奨量)は、表1のとおり18~49歳男性では15mgNE、50~74歳男性では14mgNE、75歳以上では13mgNEで、18~29歳女性で11mgNE、30~49歳女性で12mgNE、50~74歳女性では11mgNE、75歳以上の女性で10mgNEとなっています(表1)。

 ナイアシンは水溶性ビタミンですが、ニコチンアミドは1型糖尿病の治療薬として、ニコチン酸は脂質異常症(高脂血症)の治療薬として使われることがありますが、大量摂取した際に、副作用として、消化不良、重篤な下痢、便秘、肝機能低下、劇症肝炎など、消化器系や肝臓に障害が生じた例が報告されています。そのため、耐容上限量(過剰摂取による健康障害をおこすことのない最大限の量)は、18~29歳男性では300mgNE、30~64歳男性では350mgNE、65歳以上で300mgNEです。18歳以上の女性では、250mgNEと設定されています(表1-1、1-2)。

表1-1:ナイアシンの食事摂取基準(男性)(mgNE/日)a,b,1)
年齢等推定平均必要量推奨量目安量耐容上限量b
0~5(月)d 2
6~11(月) 3
1~2(歳) 5 6 60(15)
3~5(歳) 6 8 80(20)
6~7(歳) 7 9 100(30)
8~9(歳) 9 11 150(35)
10~11(歳) 11 13 200(45)
12~14(歳) 12 15 250(60)
15~17(歳) 14 17 300(70)
18~29(歳) 13 15 300(80)
30~49(歳) 13 15 350(85)
50~64(歳) 12 14 350(85)
65~74(歳) 12 14 300(80)
75以上(歳) 11 13 300(75)
表1-2:ナイアシンの食事摂取基準(女性)(mgNE/日)a,b,1)
年齢等推定平均必要量推奨量目安量耐容上限量c
0~5(月)d 2
6~11(月) 3
1~2(歳) 4 5 60(15)
3~5(歳) 6 7 80(20)
6~7(歳) 7 8 100(30)
8~9(歳) 8 10 150(35)
10~11(歳) 10 10 150(45)
12~14(歳) 12 14 250(60)
15~17(歳) 11 13 250(65)
18~29(歳) 9 11 250(65)
30~49(歳) 10 12 250(65)
50~64(歳) 9 11 250(65)
65~74(歳) 9 11 250(65)
75以上(歳) 9 10 250(60)
妊婦(付加量) +0 +0
授乳婦(付加量) +3 +3
  1. NE=ナイアシン当量=ナイアシン+1/60 トリプトファン。
  2. 身体活動レベル2の推定エネルギー必要量を用いて算定した。
  3. ニコチンアミドのmg量、( )内はニコチン酸のmg量。参照体重を用いて算定した。
  4. 単位はmg/日。
  • 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
  • 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
  • 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
  • 耐容上限量:過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量。

 令和元年国民健康・栄養調査における日本人のナイアシンの1日の摂取量の平均は30.7mgNEでした。食品群別の摂取量で見ると、肉類からの摂取量が最も多く、次いで魚類、穀類の順に多く摂取されています3)

ナイアシンが不足するとどうなるか1)

 ナイアシンが欠乏するとペラグラ(pellagra)という病気になることが知られています。18世紀にスペイン人医師によって医学書に初めてこの病気が紹介されました。

 ペラグラのおもな症状には、赤い発疹ができる皮膚症状、口舌炎や下痢などの消化管症状、神経障害の三つがあげられます。

ナイアシンを多く含む食品

 ナイアシンの摂取基準は、ナイアシンだけでなく、体内でナイアシンを合成するアミノ酸の一つであるトリプトファン含有量も考慮してナイアシン(ナイアシン当量)で表します。ナイアシンは、魚介類、肉類、きのこ類、穀類に多く含まれています。熱に強いため、加熱による損失は少ないと考えられますが、水溶性ビタミンのため、食品を洗ったりゆでたりする際に、水に溶けだす場合がありますので、調理の際は工夫が必要です。

 一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品からナイアシン(ナイアシン当量)を多く含む食品を表2から表5にまとめました。

ナイアシンを含む肉類と魚類の写真。ナイアシンとは、水溶性ビタミンB群の一つで、ニコチン酸とニコチンアミドの総称です。過剰摂取すると消化器系や肝臓に障害が生じるなど副作用が報告されています。設定された1日当たりの摂取基準量と耐容上限量を守ることが大切です。
表2:魚介類に含まれるナイアシン(ナイアシン当量)(mgNE)(可食部100g当たり)3)4)より作成
食品名ナイアシン当量(mgNE)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
加工品 かつお節 61.0 1人分:1.5g~2.5g
すけとうだら たらこ 生 54.0 1腹(小):50g
びんながまぐろ 生 26.0 1柵:150g
かつお 春獲り 生 24.0 1柵:250g
かつお 秋獲り 生 23.0 1柵:250g
きはだまぐろ 生 22.0 1柵:150g
  • 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(頭部、内臓、骨、ひれなど)を除いたものです。
表3:肉類に含まれるナイアシン(ナイアシン当量)(mgNE)(可食部100g当たり)3)4)より作成
食品名ナイアシン当量(mgNE)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
ぶた スモークレバー 26.0 1食分:100g
ぶた 肝臓(レバー) 生 19.0 1人前:100g
うし 肝臓(レバー) 生 18.0 1人前:100g
にわとり [若鶏肉] むね 皮なし 生 17.0 1枚:250~300g
にわとり [若鶏肉] ささみ 生 17.0 1本:45~60g
ぶた [大型種肉] ロース 赤肉 生 13.0 1枚:200g
表4:きのこ類に含まれるナイアシン(ナイアシン当量)(mgNE)(可食部100g当たり)3)4)より作成
食品名ナイアシン当量(mgNE)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
しいたけ 乾しいたけ 乾 23.0 大1個:5g
ひらたけ 生 11.0 1パック:100g
まつたけ 生 8.3 中1本:30g
えのきたけ 生 7.4 1袋:100g
エリンギ 生 6.7 1本:30~40g
ぶなしめじ 生 6.4 1パック:100g
  • 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(いしづき)を除いたものです。
表5:穀類に含まれるナイアシン(ナイアシン当量)(mgNE)(可食部100g当たり)3)4)より作成
食品名ナイアシン当量(mgNE)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
こむぎ [パン類] ベーグル 3.7 1個:約90g
こめ [水稲めし] 玄米 3.6 小盛り1杯:100g
こむぎ [パン類] ロールパン 3.1 1個:30g
こめ [水稲めし] 発芽玄米 2.8 小盛り1杯:100g
こむぎ [パン類] ライ麦パン 2.7 1枚(6枚切り):60g

食品に含まれる成分について

 食品に含まれる成分は、食品成分データベース 文部科学省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)から検索が行えます。

 食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。

 下記のようなさまざまな情報を知ることができます。

  • 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
  • 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
  • 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
  • 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能

複数の食品の成分を検索する方法

 複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。

  1. 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
  2. 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
    ※灰分:
    一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
  3. 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。

参考文献

  1. 日本人の食事摂取基準(2020年版)各論 ビタミン(水溶性ビタミン) 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. 令和元年国民健康・栄養調査 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 日本食品標準成分表・資源に関する取組 文部科学省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.

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