ビタミンEの働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 21時52分
更新日:2023年12月26日 10時47分
ビタミンEとは1)
ビタミンEは4種のトコフェロールと4種のトコトリエノールの合計8種類の化合物の総称です。ビタミンEには強い抗酸化性作用があり、生体膜の機能を正常に保つことや、赤血球の溶血の防止、生殖を正常に保つことに関与しています。
トコフェロールは天然ではα(アルファ)、β(ベータ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)の4種類がありますが、体内で最も多く、また生理作用が最も強いのはα-トコフェロールです。α-トコフェロールの生理作用を100とした場合、β-トコフェロールの生理作用は40、γ-トコフェロールは10、δ-トコフェロールは1とされています。
ビタミンEの吸収と働き1)
脂溶性ビタミンであるビタミンEは、脂質とともに腸管からリンパ管を経由して体内に吸収されます。抗酸化作用が非常に強く、生体膜を構成する不飽和脂肪酸や他の脂溶性成分を酸化障害から守るために、細胞膜のリン脂質二重層内に存在しています。過酸化脂質の生成を抑制し、血管を健康に保つほか、血中のLDLコレステロールの酸化を抑制したり、赤血球の破壊を防いだりする作用もあることが知られています。また、細胞の酸化を防ぐため、老化防止にも効果があります。
ビタミンEの1日の摂取基準量1)2)
ビタミンEは脂質とともに腸管からリンパ管を経由して体内に吸収されますが、体内に分布するビタミンEの大部分がα-トコフェロールであることから、食事摂取基準ではα-トコフェロールの目安量で1日に必要なビタミンE量を示しています。2020年版食事摂取基準では、1日当たりのビタミンEの摂取の目安を男性は、18歳~49歳で6.0mg、50歳~74歳で7.0mg、75歳以上で6.5mg、女性は、18歳~29歳で5.0mg、30歳~49歳で5.5mg、50歳~64歳で6.0mg、65歳以上で6.5mgと設定しています(表1-1、1-2)。
また、ビタミンEは体内に蓄積しにくいために、通常の食事では過剰症がみられることはまずありませんが、サプリメントなどで極端に過剰摂取した場合は、健康障害がみられる可能性は否定できません。そのため、1日当たりの耐容上限量を、50~69歳の男性で850mg、50~69歳の女性で700mg、70歳以上の男性で750mg、70歳以上の女性で650mgと定めています(表1-1、1-2)。
年齢等 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|
0~5(月) | 3.0 | - |
6~11(月) | 4.0 | - |
1~2(歳) | 3.0 | 150 |
3~5(歳) | 4.0 | 200 |
6~7(歳) | 5.0 | 300 |
8~9(歳) | 5.0 | 350 |
10~11(歳) | 5.5 | 450 |
12~14(歳) | 6.5 | 650 |
15~17(歳) | 7.0 | 750 |
18~29(歳) | 6.0 | 850 |
30~49(歳) | 6.0 | 900 |
50~64(歳) | 7.0 | 850 |
65~74(歳) | 7.0 | 850 |
75以上(歳) | 6.5 | 750 |
年齢等 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|
0~5(月) | 3.0 | - |
6~11(月) | 4.0 | - |
1~2(歳) | 3.0 | 150 |
3~5(歳) | 4.0 | 200 |
6~7(歳) | 5.0 | 300 |
8~9(歳) | 5.0 | 350 |
10~11(歳) | 5.5 | 450 |
12~14(歳) | 6.0 | 600 |
15~17(歳) | 5.5 | 650 |
18~29(歳) | 5.0 | 650 |
30~49(歳) | 5.5 | 700 |
50~64(歳) | 6.0 | 700 |
65~74(歳) | 6.5 | 650 |
75以上(歳) | 6.5 | 650 |
妊婦 | 6.5 | - |
授乳婦 | 7.0 | - |
- α-トコフェロールについて算定した。α-トコフェロール以外のビタミンEは含んでいない。
- 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 耐容上限量:過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量。
令和元年国民健康・栄養調査におけるビタミンEの1日の摂取量の1日の摂取量の平均は6.7mgです。日本人の食事摂取基準の目安量と比べても、平均的には摂取できていると言えます。食品群別の摂取量を見ると、野菜類からの摂取量が最も多く、次いで油脂類、魚介類、調味料・香辛料の順に多く摂取されています。
ビタミンEが不足するとどうなるか
ビタミンEが不足すると、神経や筋障害の症状がみられることがあります。そのため、血行も悪くなり、冷え性や頭痛、肩こりなどを起こしやすくなります。また、抗酸化力が低下するため、肌を紫外線などの刺激から守りにくくなり、シミやシワができやすくなります。また、血液中のコレステロールも酸化しやすくなるため、これが血管壁に入り込んで溜まり動脈硬化の原因につながります。
ビタミンEの過剰摂取の問題
過剰症としては、血液が止まりにくくなることが知られていますが、実際には、摂取量の3分の2が便として排出されるため、脂溶性ビタミンの中では比較的体内に蓄積されにくく、通常の食事の範囲では過剰症はほとんど起こりません。
近年、研究によりビタミンEの過剰摂取が骨量を減らし、骨粗鬆症のリスクを高める可能性が示唆され、注目されています3)。
ビタミンEを多く含む食品
摂取基準では、α-トコフェロールの目安量で1日に必要なビタミンE量を示しています。α-トコフェロールは、アーモンドなどの種実類、油脂類、穀類、魚介類、豆類、野菜類などに多く含まれています。
光に弱いため、ナッツなどのビタミンEを多く含む食品を保存するときは、光を避ける必要がありますが、酸や熱には強いので調理による損失はほとんどありません。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品からビタミンEを多く含む食品を表2から表7にまとめました。
食品名 | ビタミンE(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
アーモンド 乾 | 30.0 | 10粒:14g |
らっかせい 乾 大粒種 | 11.0 | 殻付き10粒:25g |
らっかせい ピーナッツバター | 4.8 | 大さじ1:10g |
ぎんなん 生 | 2.5 | 1粒:2~3g |
くるみ いり | 1.2 | 1粒:5g |
食品名 | ビタミンE(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
ひまわり油(ハイリノール・ミッドオレイック・ハイオレイック) | 39.0 | 大さじ1:12g |
オリーブ油 | 7.4 | 大さじ1:12g |
有塩バター | 1.5 | 大さじ1:12g |
ごま油 | 0.4 | 大さじ1:12g |
食品名 | ビタミンE(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
クロワッサン リッチタイプ | 1.9 | 1個:50g |
アマランサス 玄穀 | 1.3 | 大さじ1:10g |
水稲めし 玄米 | 0.5 | 小盛り1杯:100g |
ロールパン | 0.5 | 1個:30g |
食パン 角形食パン | 0.4 | 1枚(6枚切り):60g |
食品名 | ビタミンE(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
うなぎ 養殖 生 | 7.4 | 中1尾:150~200g |
すけとうだら たらこ 生 | 7.1 | 1腹(小):50g |
にじます 海面養殖 皮つき 生 | 5.5 | 1切れ:80~150g |
ぶり はまち 養殖 皮つき 生 | 4.6 | 1切れ:80g |
ぎんだら 生 | 4.6 | 1切れ:130g |
めかじき 生 | 4.4 | 1切れ:100g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(頭部、内臓、骨、ひれなど)を除いたものです。
食品名 | ビタミンE(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
豆乳 調製豆乳 | 2.2 | コップ1杯:200g |
きな粉 全粒大豆 黄大豆 | 1.7 | 大さじ1:6g |
全粒 国産 黄大豆 ゆで | 1.6 | 1パック:100g |
がんもどき | 1.5 | 1個:95~125g |
油揚げ 生 | 1.3 | 1枚:20~30g |
挽きわり納豆 | 0.8 | 1個:30~50g |
食品名 | ビタミンE(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
らっかせい 未熟豆 生 | 7.2 | 殻付き10個:25g |
モロヘイヤ 茎葉 生 | 6.5 | 1束:100g |
西洋かぼちゃ 果実 生 | 4.9 |
1個:1~1.5kg |
赤ピーマン 果実 生 | 4.3 | 1個:100g |
しそ 葉 生 | 3.9 | 10枚:7g |
にら 葉 生 | 2.5 | 1束:100g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(野菜の皮や根、芯など)を除いたものです。
食品に含まれる成分について
食品に含まれる成分は、
から検索が行えます。食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。
下記のようなさまざまな情報を知ることができます。
- 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
- 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
- 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
- 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能
複数の食品の成分を検索する方法
複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。
- 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
- 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分※です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
- ※灰分:
- 一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
- 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。
参考文献
- 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.