健康長寿ネット

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コレステロールの働きと1日の摂取量

公開日:2016年7月25日 21時57分
更新日:2023年8月17日 13時04分

コレステロールとは

 コレステロールは、高等動物の細胞成分として広く存在する代表的なステロイド化合物の一種で、水に溶けず有機溶媒に溶けることから、脂質に分類されます。

コレステロールの種類

 コレステロールは、水に溶けないため、血液中を流れるときはたんぱく質と結合したリポタンパク質の状態で存在します。結合しているリポタンパク質の種類により、高密度リポタンパク(high density lipoprotein、HDL)コレステロールと低密度リポタンパク(low density lipoprotein、LDL)コレステロールに大別されます。HDLコレステロールは善玉コレステロールとも呼ばれ、血管の壁に溜まっているコレステロールを肝臓に運ぶ働きがあります。一方LDLコレステロールは、肝臓に蓄積されたコレステロールを体のあちこちに運んでいるため悪玉コレステロールと言われています。

コレステロールの吸収と働き1)

 コレステロールは、細胞膜の主要な構成成分であり、脳や肝臓、神経組織などに多く含まれています。また、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモン、胆汁酸、ビタミンDの原料となり、生命維持に欠かせない重要な物質です。

 体内で必要なコレステロールの大部分は、糖質や脂肪酸から生じたアセチルCoAという物質から、主に肝臓と小腸で、1日に体重1kgあたり12~13mg(体重50kgの人で600~650mg/日)生産されています。食品からのコレステロールは、吸収量の個人差が大きいのですが、体内で合成されるコレステロールの1/3~1/7を占めるに過ぎません。さらに、わたしたちの体は、食事からのコレステロールの摂取量が多い場合には、体内での合成量は少なくなるように調節され、反対に食事からのコレステロールの摂取量が少ない場合には、体内での合成量が多くなるように調節されています。そのため、コレステロールの供給は常に一定に保たれるように調節されており、食事によるコレステロールの摂取量が血中コレステロール値に影響するという根拠は十分でないことが分かっています2)

コレステロールの1日の摂取基準量1)3)

 食事によるコレステロールの摂取は血中のコレステロール値に直接的に影響を与えないことから、コレステロールの摂取量の基準値は定められていませんが、日本人の食事摂取基準(2020年版)では、脂質異常症の重症化予防を目的として、コレステロールを200mg/日未満に留めることが望ましいとされています。

 令和元年度国民健康・栄養調査の結果による成人のコレステロールの摂取量は、グラフ1、表1に示す通りです。男性は、20~29歳が399mg、30~39歳が346mg、40~49歳が361mg、50~59歳が360mg、60~79歳が378mg、80歳以上が314mg、(再掲)20歳以上が366mg、(再掲)65~74歳が380mg、(再掲)75歳以上が336mgで、女性は、20~29歳が295mg、30~39歳が305mg、40~49歳が322mg、50~59歳が308mg、60~69歳が324mg、70~79歳が334mg、80歳以上が300mg、(再掲)20歳以上が317mg、(再掲)65~74歳が339mg、(再掲)75歳以上が306mgとなっています(グラフ1)。

グラフ1:1日のコレステロール摂取量を示すグラフ。男性よりも女性の方がコレステロール摂取量が多いことを示す
グラフ1:一日のコレステロール摂取量(mg)3)
表1:一日のコレステロール摂取量(mg)3)
年齢男性女性
20~29歳 399 295
30~39歳 346 305
40~49歳 361 322
50~59歳 360 308
60~69歳 378 324
70~79歳 378 334
80歳以上 314 300
(再掲)20歳以上 366 317
(再掲)65~74歳 380 339
(再掲)75歳以上 336 306

 令和元年国民健康・栄養調査食品群別の摂取量で見ると、コレステロールの主な摂取源としては、卵類が最も多く約半分を占めています。そのほか、肉類、魚介類からの摂取も多くなっています(グラフ2)。

グラフ2:コレステロールを多く含む食品を示すグラフ。卵類が最も多い
グラフ2:コレステロールの食品群別摂取構成比(20歳以上)(%)3)

 食事からのコレステロールは、血中コレステロール値に直接の影響を与えないとは言うものの、血中コレステロール値が高い人は、コレステロールの過剰な摂取は好ましくありません。しかし、グラフ2からもわかるように、コレステロールは卵、肉、魚などの動物性たんぱく質を多く含む食品に含まれているため、特に高齢者では、コレステロールの摂取量を制限しようとするとたんぱく質不足を生じ、低栄養を生じる可能性があるため、注意が必要です。

コレステロールが不足するとどうなる1)

 コレステロールが欠乏すると、細胞膜や血管が弱くなったり、免疫力が低下したり、脳出血などを起こしやすくなったりします。しかし、現在の、食生活では、コレステロールが欠乏することはあまりありません。

 一方、血中のLDLコレステロールが高くなり、HDLコレステロールが低くなった脂質異常症では、コレステロールが血管壁に蓄積され動脈硬化を誘発し、さらに虚血性心疾患、脳梗塞のリスクが高まります。

コレステロールを多く含む食品1)3)4)

 コレステロールは、卵類、魚介類、肉類、菓子類に多く含まれます。食事によるコレステロールの摂取量は、血中コレステロール値に影響はないと言われておりますが、コレステロールの量が調節されずバランスが崩れるなどの異常が起こると、血液中のLDLコレステロール値が高くなりますので、摂取量に注意が必要です。

 LDLコレステロールが多く含まれる動物性脂質は、一般的にとり過ぎる傾向があるので、なるべく控えて、HDLコレステロールを増やす効果のある青魚(DHA/EPA)や、コレステロールを減らす効果のある植物性脂質をバランス良く摂取することが大切です。

 一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、日常的によく摂取する食品に含まれるコレステロール量について表2から表5にまとめました。

表2:卵類に含まれるコレステロール量(mg)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名コレステロール量(mg)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
鶏卵 卵黄 生 1,200 1個:16g
うずら卵 全卵 生 470 1個:10~12g
鶏卵 全卵 生 370 1個(Mサイズ殻付):60g
表3:魚介類に含まれるコレステロール量(mg)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名コレステロール量(mg)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
かたくちいわし 田作り 720 1尾:11g
さくらえび 素干し 700 大さじ1:5g
あんこう きも 生 560 1人分:60g
しろさけ イクラ 480 大さじ1:18g
うなぎ きも 生 430 1個:10~15g
しらす干し 半乾燥品 390 大さじ1:5g
  • 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(頭部、内臓、骨、ひれなど)を除いたものです。
コレステロールを多く含む動物性食品のイクラ1人前を表す写真。
表4:肉類に含まれるコレステロール量(mg)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名コレステロール量(mg)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
ぶた スモークレバー 480 1食分:100g
にわとり 肝臓 生 370 1人前:100g
ぶた 肝臓 生 250 1人前:100g
うし 肝臓 生 240 1人前:100g
にわとり 心臓 生 160 1個:15~20g
にわとり 手羽さき 皮つき 生 120 1本(骨付き)60g
鶏肝臓の串の写真。肉の内臓類はコレステロールを多く含む動物性食品。
表5:菓子類に含まれるコレステロール量(mg)(可食部100g当たり)4)5)より作成
食品名コレステロール量(mg)食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量)
シュークリーム (200) 1個:75~100g
スポンジケーキ (170) 1切れ:50g
ベイクドチーズケーキ (160) 1個:約80g
カステラ (160) 1切れ:50g
カスタードプリン (120) 1個:75~100g
  • ( )の付いた数値は、類似食品の収載値から推計や計算により求めた成分であることを示す。
コレステロールを多く含む「カステラ」の写真。動物性食品の卵を使う。食事によるコレステロールの摂取は血中コレステロール値に影響を与えないため1日の摂取量の基準値は定められていません。

食品に含まれる成分について

 食品に含まれる成分は、食品成分データベース 文部科学省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)から検索が行えます。

 食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。

 下記のようなさまざまな情報を知ることができます。

  • 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
  • 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
  • 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
  • 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能

複数の食品の成分を検索する方法

 複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。

  1. 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
  2. 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
    ※灰分:
    一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
  3. 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。

参考文献

  1. 日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書 各論 脂質 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  2. コレステロール摂取量に関する声明(2015年5月1日)日本動脈硬化学会(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 令和元年国民健康・栄養調査 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 日本食品標準成分表・資源に関する取組 文部科学省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  5. 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.

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