ナトリウムの働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 21時43分
更新日:2023年8月17日 13時34分
ナトリウムとは
ナトリウムは成人の体内に約100g含まれている元素で、主に細胞の外側に存在し、細胞内外のミネラルのバランスを保つためには不可欠の元素です。食塩(塩化ナトリウム)、重炭酸塩、リン酸塩として、約50%は細胞外液中に、40%は骨格に存在し、細胞内液中にはわずかに含まれるだけです。
ナトリウムの吸収と働き1)
ナトリウムはナトリウムイオンと塩素イオンが結合した食塩の形で摂取されることが多く、小腸で吸収された後、大部分が腎臓から尿中へ排泄されます。体内のナトリウム量は腎臓での再吸収量の調節によって維持されています。
ナトリウムはカリウムとともに体内の水分バランスや細胞外液の浸透圧を維持しているほか、酸・塩基平衡、筋肉の収縮、神経の情報伝達、栄養素の吸収・輸送などにも関与しています。また、水分を保持しながら細胞外液量や循環血液の量を維持し、血圧を調節しています。ナトリウムを過剰にとると、この液量が増大するため血圧が上がったり、むくみを生じたりします。そのほかに、胆汁、膵液、腸液などの材料でもあります。
ナトリウムの1日の摂取基準量1)2)
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、ナトリウムの排泄量から換算された18歳以上の男女共通1日推定平均必要量を、600mg(食塩相当量1.5g)と見積もっています(食塩相当量はナトリウムに2.54を乗じて算出します。つまり、食塩に換算すると0.6g×2.54=1.5gということになります)。
しかしながら、日本人の通常の食生活を考慮すると、1日に1.5gの食塩量というのは、現実的な数値ではありません。そこで、生活習慣病の一次予防を目的として日本人が当面の目標とすべき食塩の摂取量は、日本の食文化、現状の摂取量を考慮して、18歳以上女性では1日6.5g未満、男性では7.5g未満とされています(表1-1、1-2)。
年齢等 | 推定平均必要量 | 目安量 | 目標量 |
---|---|---|---|
0~5(月) | - | 100(0.3) | - |
6~11(月) | - | 600(1.5) | - |
1~2(歳) | - | - | (3.0未満) |
3~5(歳) | - | - | (3.5未満) |
6~7(歳) | - | - | (4.5未満) |
8~9(歳) | - | - | (5.0未満) |
10~11(歳) | - | - | (6.0未満) |
12~14(歳) | - | - | (7.0未満) |
15~17(歳) | - | - | (7.5未満) |
18~29(歳) | 600(1.5) | - | (7.5未満) |
30~49(歳) | 600(1.5) | - | (7.5未満) |
50~64(歳) | 600(1.5) | - | (7.5未満) |
65~74(歳) | 600(1.5) | - | (7.5未満) |
75以上(歳) | 600(1.5) | - | (7.5未満) |
年齢等 | 推定平均必要量 | 目安量 | 目標量 |
---|---|---|---|
0~5(月) | - | 100(0.3) | - |
6~11(月) | - | 600(1.5) | - |
1~2(歳) | - | - | (3.0未満) |
3~5(歳) | - | - | (3.5未満) |
6~7(歳) | - | - | (4.5未満) |
8~9(歳) | - | - | (5.0未満) |
10~11(歳) | - | - | (6.0未満) |
12~14(歳) | - | - | (6.5未満) |
15~17(歳) | - | - | (6.5未満) |
18~29(歳) | 600(1.5) | - | (6.5未満) |
30~49(歳) | 600(1.5) | - | (6.5未満) |
50~64(歳) | 600(1.5) | - | (6.5未満) |
65~74(歳) | 600(1.5) | - | (6.5未満) |
75以上(歳) | 600(1.5) | - | (6.5未満) |
妊婦 | 600(1.5) | - | (6.5未満) |
授乳婦 | 600(1.5) | - | (6.5未満) |
- 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
- 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 目標量:生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。
ナトリウムが不足するとどうなるか1)
ナトリウムは通常の食生活であれば欠乏することはありません。しかし、多量の発汗、激しい下痢の場合には欠乏し、疲労感、血液濃縮、食欲不振を起こします。近年の地球温暖化の影響による熱中症が問題になっていますが、熱中症対策としては、水分だけでなく適度な塩分の摂取は必要です。
ナトリウムの過剰摂取による問題
現在の日本人の食生活では、摂取不足よりもむしろナトリウムの過剰摂取による高血圧やがんを主とする生活習慣病が問題となっています。日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン(JSH2014)では、食塩摂取量として1日6g未満が推奨されています。また、腎臓に障害がある場合も、塩分の6g未満の塩分制限が必要です。しかし健康に特に問題のない高齢者の場合は、無理な減塩は食欲低下や脱水症状を起こすことがありますので、極端な塩分制限には注意が必要です。
令和元年国民健康・栄養調査における食塩の1日の摂取量は平均すると9.7gでした。食品群別摂取量を見ると、6.5g(67.0%)は調味料から摂取されており、内訳は、しょうゆ1.6g、みそ1.2g、塩1.2g、その他の調味料2.3gです3)。
ナトリウムを多く含む食品
ナトリウムは、塩、しょうゆ、みそなどの食塩(塩化ナトリウム)を含む調味料の他、ハム、ウインナー、練り製品、即席めんなどの加工食品や野菜の漬け物などにも多く含まれています。また、うま味調味料などの食品添加物の多くには、グルタミン酸ナトリウムなどのナトリウム塩の形でナトリウムが含まれています。汁物にも食塩は多く含まれるので、具だくさんのみそ汁にしたり、ラーメンやうどんなどを食べるときは、汁を半分残すようにしたりしましょう。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、日常的によく摂取する食品に含まれるナトリウム量と食塩相当量について表2から表7にまとめました。
食品名 | ナトリウム量(mg) | 食塩相当量(g) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|---|
食塩 | 39,000 | 99.5 | 小さじ1:6g |
うすくちしょうゆ | 6,300 | 16.0 | 小さじ1:6g |
こいくちしょうゆ | 5,700 | 14.5 | 小さじ1:6g |
米みそ だし入りみそ | 4,700 | 11.9 | 小さじ1:6g |
減塩みそ | 4,200 | 10.7 | 小さじ1:6g |
めんつゆ 三倍濃厚 | 3,900 | 9.9 | 小さじ1:5g |
食品名 | ナトリウム量(mg) | 食塩相当量(g) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|---|
生ハム 促成 | 1,100 | 2.8 | 1枚:15g |
ロースハム | 910 | 2.3 | 1枚:20g |
ばらベーコン | 800 | 2.0 | 1枚:17g |
ウインナーソーセージ | 740 | 1.9 | 1本:20g |
食品名 | ナトリウム量(mg) | 食塩相当量(g) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|---|
蒸しかまぼこ | 1,000 | 2.5 | 1切れ(5mm厚さ):8g |
かに風味かまぼこ | 850 | 2.2 | 1本:10g |
焼き竹輪 | 830 | 2.1 | 1本(大):70g |
魚肉ソーセージ | 810 | 2.1 | 1本:75g |
はんぺん | 590 | 1.5 | 1枚(大):100g |
食品名 | ナトリウム量(mg) | 食塩相当量(g) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|---|
即席中華めん 油揚げ 乾(添付調味料等を含む) | 2,200 | 5.6 | 1人分:78g |
中華スタイル即席カップめん 油揚げ 焼きそば 乾(添付調味料等を含む) | 1,500 | 3.8 | 1人分:128g |
食品名 | ナトリウム量(mg) | 食塩相当量(g) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|---|
たかな漬 | 1,600 | 4.0 | 1人分:20g |
漬物 たくあん漬 塩押しだいこん漬 | 1,300 | 3.3 | 1切れ:10g |
漬物 ぬかみそ漬 | 990 | 2.5 | 1切れ:10g |
食品名 | ナトリウム量(mg) | 食塩相当量(g) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|---|
梅干し 塩漬 | 7,200 | 18.2 | 中1個:10g |
カリウムにはナトリウムを排泄する働きがあるので、食事の時にはカリウムを豊富に含む野菜や果物を一緒にとる工夫も大事です。
食品に含まれる成分について
食品に含まれる成分は、
から検索が行えます。食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。
下記のようなさまざまな情報を知ることができます。
- 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
- 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
- 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
- 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能
複数の食品の成分を検索する方法
複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。
- 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
- 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分※です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
- ※灰分:
- 一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
- 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。
参考文献
- 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.