三大栄養素の炭水化物の働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 21時56分
更新日:2023年8月17日 13時07分
炭水化物とは
ブドウ糖や果糖などの単糖から、構成されているものを総称して炭水化物と言います。炭水化物には大きく分けると、体内に吸収されてエネルギー源になる「糖質」と、消化吸収されずエネルギーにならない「食物繊維」とに分けることができます1)。
炭水化物の種類1)
炭水化物は構成している単糖の数が1個のものを単糖類、2個のものを二糖類、2~10数個のものを少糖類、それ以上のものを多糖類と言います。
単糖類には、ブドウ糖、果糖、ガラクトースなどがあり、二糖類にはショ糖、乳糖、麦芽糖などがあります。これらは、すべて体の中でエネルギーになる「糖質」です。ショ糖は、調味料として普段使っている砂糖のことで、ブドウ糖と果糖が結合したものです。また、乳糖はブドウ糖とガラクトースが結合したもので、牛乳に多く含まれています。よく牛乳を飲むとお腹がゆるくなることがあります(乳糖不耐症)。これは乳糖を分解する酵素が足りなくて、消化不良を起こしているのです。
少糖類はオリゴ糖とも言い、腸内の善玉菌を増やす効果があるとして、特定保健用食品にも利用されています。
多糖類には、代表的なエネルギー源となるでんぷんや、グリコーゲンがあります。どちらもブドウ糖が多数結合したものです。また、果物に多く含まれるペクチン、こんにゃくに含まれるグルコマンナン、寒天に含まれるアガロースなどの食物繊維も多糖類に分類されます。
炭水化物の吸収と働き
炭水化物のうち、ショ糖やでんぷんなどの糖質は、体の中で1gあたり約4㎉のエネルギーを産生します。
炭水化物は体内では、主に血液中にブドウ糖の形で存在しており、血液中のブドウ糖の濃度が血糖値となります。食事をして血糖値が高くなるとインスリンによって血糖値は低くなり、反対に、空腹になり血糖値が低くなってくるとグルカゴンといったいくつかのホルモンによって血糖値は高くなります。このように、血糖値は厳密に一定の濃度(80~140mg/㎗)に保たれているのですが、インスリンの分泌量が少なかったり、感受性が悪くてうまく働かなかったりしてこの調整がうまくできず、血糖値が高くなりすぎてしまうのが糖尿病です。
炭水化物の1日の摂取基準量
炭水化物の1日の摂取基準量は男女とも1日に食事から摂取するエネルギー(㎉)の50~65%に相当する量になります(表1)。
例えば、1日に摂取するエネルギーが2,000㎉の場合、50~65%に相当するエネルギー量は、2,000㎉×0.5~0.65=1,000㎉~1,300㎉。炭水化物は1gが約4㎉ですから、1,000㎉~1,300㎉÷4㎉=250g~325g。つまり1日に250gから325gの炭水化物を摂取することが望ましいということになります。
そのため、炭水化物の1日の摂取基準量を満たすため、まずは1日のエネルギー必要量(摂取カロリー)を把握しておくとよいでしょう(リンク1)。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢等 | 目標量a,b | 目標量a,b |
0~5(月) | - | - |
6~11(月) | - | - |
1~2(歳) | 50~65 | 50~65 |
3~5(歳) | 50~65 | 50~65 |
6~7(歳) | 50~65 | 50~65 |
8~9(歳) | 50~65 | 50~65 |
10~11(歳) | 50~65 | 50~65 |
12~14(歳) | 50~65 | 50~65 |
15~17(歳) | 50~65 | 50~65 |
18~29(歳) | 50~65 | 50~65 |
30~49(歳) | 50~65 | 50~65 |
50~64(歳) | 50~65 | 50~65 |
65~74(歳) | 50~65 | 50~65 |
75以上(歳) | 50~65 | 50~65 |
妊婦 | - | 50~65 |
授乳婦 | - | 50~65 |
- 範囲については、おおむねの値を示したものである。
- アルコールを含む。ただし、アルコールの摂取を勧めるものではない。
- 目標量:生活習慣病の予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量。
炭水化物が不足するとどうなる
人がエネルギーとして使える栄養素は、炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質の3種類がありますが、すぐにエネルギーに変えられるのがブドウ糖です。しかし、体の中では、糖質は少量のグリコーゲンとして肝臓や筋肉の中に蓄えているだけで、余分なエネルギーのほとんどは脂肪として体の中に蓄えられています。
エネルギーとして血液中のブドウ糖を消費してしまうと、肝臓や筋肉の中に蓄えられているグリコーゲンを分解するのですが、その量はそれほど多くないため、グリコーゲンも尽きてしまうと、エネルギーが不足し、疲れやすくなります。
特に、脳は、ブドウ糖を唯一のエネルギー源にしています。脳は、昼夜、活動時休息時問わず、ほぼ一定の速度でブドウ糖を燃焼しており、脳だけで1日に120gものブドウ糖を消費するともいわれています。そのため糖質が不足すると、脳や神経への栄養が行き届かなくなくなるため、判断力が鈍り、注意力が散漫になってきます。
1日の炭水化物を何からどれくらい食べたらよいのか
炭水化物を摂取基準どおりに食事から摂取にはどういった食品をどれくらいの量を食べたらよいのでしょうか。炭水化物はご飯、パン、麵類などの「主食」に多く含まれています。主食を1日にどういった食品から、どのくらいの量を食べたらよいかの目安に、厚生労働省と農林水産省が作成した「食事バランスガイド」が参考になります。食事バランスガイドは摂取基準にもとづいて1日の食事の適量をわかりやすくしています。食事バランスガイドの活用法、主食の摂取量の目安について詳しくはリンク2、3をご覧ください。
炭水化物を多く含む食品
炭水化物は、ご飯、パン、麺類などの穀類、いも及びでん粉類などに多く含まれています。また、砂糖及び甘味類や果実類などの甘いものにも多く含まれていますが、甘いものは血糖値を急激に上げてしまうため、穀類やいも及びでん粉類を多く摂ったほうが良いでしょう。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品から炭水化物を多く含む食品を表2から表5にまとめました。
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量(g) | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む) |
---|---|---|
とうもろこし コーンフレーク | 83.6 | 1食分:40g |
ライ麦パン | 52.7 | 1枚(6枚切り):60g |
ぶどうパン | 51.1 | 1枚(6枚切り):60g |
ロールパン | 48.6 | 1個:30g |
角形食パン | 46.4 | 1枚(6枚切り):60g |
おにぎり | 39.4 | 1個:80g |
水稲めし 精白米 うるち米 | 37.1 | 小盛り1杯:100g |
マカロニ・スパゲッティ ゆで | 32.2 | 乾1人前:80g |
そば ゆで | 26.0 | 1玉:170g |
そうめん・ひやむぎ ゆで | 25.8 | 乾1わ:100g |
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量(g) | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む) |
---|---|---|
はるさめ 緑豆はるさめ 乾 | 87.5 | 1食分:15g |
さつまいも 塊根 皮つき 生 | 33.1 | 中1本:200~250g |
じゃがいも 塊茎 皮つき 生 | 15.9 | 中1個:150~200g |
ながいも 塊根 生 | 13.9 | 1本:600~1000g |
さといも 球茎 生 | 13.1 | 中1個:50~60g |
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量(g) | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む) |
---|---|---|
上白糖 | 99.3 | 大さじ1:9g |
三温糖 | 99.0 | 大さじ1:9g |
黒砂糖 | 90.3 | 大さじ1:15g |
はちみつ | 81.9 | 大さじ1:21g |
メープルシロップ | 66.3 | 大さじ1:21g |
黒蜜 | 50.5 | 大さじ1:18g |
食品名 | 可食部100g当たりの炭水化物量(g) | 食品の目安単位と重量(廃棄部分を含む) |
---|---|---|
ぶどう 干しぶどう | 80.3 | 大さじ1:13g |
かき 干しがき | 71.3 | 1個:35g |
いちご ジャム 高糖度 | 63.3 | 大さじ1:23g |
バナナ 生 | 22.5 | 1本:200g |
りんご 皮つき 生 | 16.2 | 1個:250g |
かき 甘がき 生 | 15.9 | 中1個:150~200g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(皮や根、芯など)を除いたものです。
- 調理法により食品の成分値、食品重量が変化します。食品重量については、例えばゆでる場合、食品の水分が流れ出て重量が減る食品とゆで湯を吸収して重量が増える食品がありますので、ゆで100gとは、生100gをゆでた場合の重量ではなくゆでた状態での100gです。
- 加熱調理(ゆで、蒸し)をした食品は、ゆで汁(食塩水)は廃棄し、他調味料は含まれていません。成分量は加熱調理後の可食部100g当たりの成分量となります。
食品に含まれる成分について
食品に含まれる成分は、
から検索が行えます。食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。
下記のようなさまざまな情報を知ることができます。
- 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
- 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
- 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
- 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能
複数の食品の成分を検索する方法
複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。
- 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
- 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分※です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
- ※灰分:
- 一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
- 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。
参考文献
- 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.