ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量
公開日:2016年7月25日 21時38分
更新日:2024年10月 4日 12時33分
ミネラル成分の鉄分とは1)
鉄分はからだの中に約3gあるといわれています。そのうち約65%は血液中のヘモグロビンの構成成分となり、酸素運搬という重要な役割を果たしています。
食品中に含まれる鉄分は、ヘム鉄と非ヘム鉄とに分けられます。たんぱく質と結合しているヘム鉄は肉や魚などの動物性食品に多く含まれています。ヘム鉄以外の無機鉄を非ヘム鉄と言い、こちらは植物性食品に多く含まれています。
鉄分の吸収と働き1)
食品中に含まれる鉄分のうち、ヘム鉄は還元型であるため、たんぱく質が結合したそのままの形で十二指腸から空腸上部で吸収されます。非ヘム鉄はそのままの形では吸収されず、還元された後、吸収されます。吸収された鉄分は、酸化され、アポトランスフェリンというたんぱく質と結合してトランスフェリンとなり、血液に乗って体中に運ばれます。輸送された鉄分は、ヘモグロビンとなって酸素の輸送に関与するほか、筋肉中に酸素を蓄えるミオグロビンの構成成分になります。他に、肝臓や脾臓、骨髄などにフェリチンやヘモシデリンとして20~30%貯蔵されています。赤血球の鉄分が足りなくなるとこの貯蔵鉄が使われます。
鉄分の1日の摂取基準量1)2)
鉄分は日本人が不足しやすい栄養素の一つです。1日に必要な鉄分の推奨量は表に示すとおり18~64歳の女性では月経なしの場合6.5mg、65歳以上の女性で6.0mgです。18~74歳の男性では7.5mg、75歳以上の男性で7.0mgです(表1-1、1-2)。
食事摂取基準の上限量(過剰摂取による健康障害をおこすことのない最大限の量)は、女性では18歳以上で40mg、男性では18歳以上で50mgと設定されています(表1-1、1-2)。
年齢等 | 推定平均必要量 | 推奨量 | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | 0.5 | - |
6~11(月) | 3.5 | 5.0 | - | - |
1~2(歳) | 3.0 | 4.5 | - | 25 |
3~5(歳) | 4.0 | 5.5 | - | 25 |
6~7(歳) | 5.0 | 5.5 | - | 30 |
8~9(歳) | 6.0 | 7.0 | - | 35 |
10~11(歳) | 7.0 | 8.5 | - | 35 |
12~14(歳) | 8.0 | 10.0 | - | 40 |
15~17(歳) | 8.0 | 10.0 | - | 50 |
18~29(歳) | 6.5 | 7.5 | - | 50 |
30~49(歳) | 6.5 | 7.5 | - | 50 |
50~64(歳) | 6.5 | 7.5 | - | 50 |
65~74(歳) | 6.0 | 7.5 | - | 50 |
75以上(歳) | 6.0 | 7.0 | - | 50 |
年齢等 | 推定平均必要量(月経なし) | 推奨量(月経なし) | 推定平均必要量(月経あり) | 推奨量(月経あり) | 目安量 | 耐容上限量 |
---|---|---|---|---|---|---|
0~5(月) | - | - | - | - | 0.5 | - |
6~11(月) | 3.5 | 4.5 | - | - | - | - |
1~2(歳) | 3.0 | 4.5 | - | - | - | 20 |
3~5(歳) | 4.0 | 5.5 | - | - | - | 25 |
6~7(歳) | 4.5 | 5.5 | - | - | - | 30 |
8~9(歳) | 6.0 | 7.5 | - | - | - | 35 |
10~11(歳) | 7.0 | 8.5 | 10.0 | 12.0 | - | 35 |
12~14(歳) | 7.0 | 8.5 | 10.0 | 12.0 | - | 40 |
15~17(歳) | 5.5 | 7.0 | 8.5 | 10.5 | - | 40 |
18~29(歳) | 5.5 | 6.5 | 8.5 | 10.5 | - | 40 |
30~49(歳) | 5.5 | 6.5 | 9.0 | 10.5 | - | 40 |
50~64(歳) | 5.5 | 6.5 | 9.0 | 11.0 | - | 40 |
65~74(歳) | 5.0 | 6.0 | - | - | - | 40 |
75以上(歳) | 5.0 | 6.0 | - | - | - | 40 |
妊婦(付加量)初期 | +2.0 | +2.5 | - | - | - | - |
妊婦(付加量)中期・後期 | +8.0 | +9.5 | - | - | - | - |
授乳婦(付加量) | +2.0 | +2.5 | - | - | - | - |
- 推定平均必要量:半数の人が必要量を満たす量。
- 推奨量:ほとんどの人が必要量を満たす量。
- 目安量:一定の栄養状態を維持するのに十分な量であり、目安量以上を摂取している場合は不足のリスクはほとんどない。
- 耐容上限量:過剰摂取による健康障害を未然に防ぐ量。
令和元年国民健康・栄養調査における鉄分の一般食品からの1日の摂取量は平均7.6mgです。食品群別の摂取量で見ると、豆類からの摂取量が最も多く、次いで野菜類、穀類、調味料・香辛料類、肉類の順で多く摂取されていました。
鉄分が不足するとどうなるか1)
鉄分が不足すると鉄欠乏性貧血になります。貧血になるとからだが重い、息がきれる、顔色が悪い、疲れやすいと感じるようになります。貧血予防のためには、鉄分だけを補えばいいというわけではありません。ヘモグロビンは鉄(ヘム)とたんぱく質(グロビン)が結合してできています。そのためたんぱく質も摂取する必要があります。また、赤血球の合成に必要な、ビタミンB12や葉酸も十分に摂取しましょう。
鉄分の過剰摂取の問題
通常の食事では過剰になることはありませんが、サプリメントなどによる過剰摂取も問題です。長期にわたり過剰に摂取しつづけると鉄沈着症を発症する恐れがあります。また、非ヘム鉄サプリメント摂取で便秘、胃部不快感など副作用を訴える人がいることも報告されています。
鉄分を多く含む食品1)3)
鉄分は、肉類、魚介類、藻類、野菜類、豆類に多く含まれています。鉄分には、ヘム鉄と非ヘム鉄があります。全体的に、鉄分は吸収率が低いミネラルですが、鉄分の中でも吸収の良いヘム鉄は、レバー、魚介類などに多く含まれます。一方、非ヘム鉄は、のりなどの海藻類などに多く含まれます。
一般的な食品スーパーなど身近なところで購入できる食品で、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品から鉄分を多く含む食品を表2から表6にまとめました。
食品名 | 鉄分量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
ぶた スモークレバー | 20.0 | 1食分:100g |
ぶた 肝臓(レバー) 生 | 13.0 | 1人前:100g |
にわとり 肝臓(レバー) 生 | 9.0 | 1人前:100g |
ぶた レバーペースト | 7.7 | 大さじ1:12g |
うし 第三胃(センマイ) 生 | 6.8 | 1片:10g |
ビーフジャーキー | 6.4 |
食品名 | 鉄分量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
あゆ 天然 内臓 生 | 24.0 | |
かたくちいわし 煮干し | 18.0 | |
加工品 干しえび | 15.0 | 大さじ1:6g |
加工品 削り節 | 9.0 | |
しじみ 生 | 8.3 | 10個:30g |
うるめいわし 丸干し | 4.5 | 1尾:40g |
あさり 生 | 3.8 | 10個(殻付き):80g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(頭部、内臓、骨、ひれなど)を除いたものです。
食品名 | 鉄分量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
あおのり 素干し | 77.0 | 小さじ1:2g |
かわのり 素干し | 61.0 | 1枚:3g |
ほしひじき 鉄釜 乾 | 58.0 | 大さじ1:2g |
いわのり 素干し | 48.0 | 1枚:3g |
あまのり 焼きのり | 11.0 | 1枚:2g |
刻み昆布 | 8.6 | |
カットわかめ 乾 | 6.5 | 1人分:10g |
食品名 | 鉄分量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
パセリ 葉 生 | 7.5 | 1枝:15g |
切干しだいこん 乾 | 3.1 | |
だいこん 葉 生 | 3.1 | 1本分(根中1本800g):150g |
こまつな 葉 生 | 2.8 | 1株:40g |
えだまめ 生 | 2.7 | 10さや(さやつき):30g |
サラダな 葉 生 | 2.4 | 1株:80g |
かぶ 葉 生 | 2.1 | 1個:80g |
ほうれんそう 葉 通年平均 生 | 2.0 | 1株:20g |
- 可食部とは、食品全体あるいは購入形態から廃棄部位(野菜の皮や根、芯など)を除いたものです。
食品名 | 鉄分量(mg) | 食品の目安重量(廃棄部分を含む)(単位:重量) |
---|---|---|
きな粉 全粒大豆 黄大豆 | 8.0 | 大さじ1:6g |
がんもどき | 3.6 | 1個:95~125g |
糸引き納豆 | 3.3 | 1個:30~50g |
油揚げ 生 | 3.2 | 1枚:20~30g |
蒸し大豆 黄大豆 | 2.8 | 1パック:100g |
たんぱく質、アミノ酸、アスコルビン酸(ビタミンC)と一緒に摂取すると、吸収が高まることが知られており、吸収率が低い非ヘム鉄も、一緒に食べる食品を工夫することで、吸収率を高めることができます。反対に、米ぬかなどに多く含まれるフィチン酸、紅茶や緑茶に多く含まれるタンニン、ホウレンソウなどに含まれるシュウ酸は鉄分の吸収を抑制するため、注意が必要です。
また、鉄分の吸収率は体内の鉄貯蔵量が少ない場合は高くなり、多い場合は低くなります。このように、食事に含まれているヘム鉄と非ヘム鉄の割合や、吸収を高める他の栄養素の含有量、体内の鉄分の貯蔵状態によって違ってきますが、鉄分の吸収率はだいたい15%程度になると見積もられています。
食品に含まれる成分について
食品に含まれる成分は、
から検索が行えます。食品成分データベースは、「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をデータソースとして、食品成分に関するデータをインターネットを通じて提供しているものです。
下記のようなさまざまな情報を知ることができます。
- 日・月・年単位の期間内で検索の多い食品のアクセスランキング
- 各栄養素を多く含む食品成分ランキング
- 食品群名/食品名、可食部100gあたりの成分表(一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等)など食品の詳細について掲載。重量を変更し、お好みの量で表示が可能
- 日常の食生活において複数の食品を組み合わせた場合の成分値の表示が可能
複数の食品の成分を検索する方法
複数の食品の成分を検索する方法についてご紹介します。
- 「フリーワードで検索」において食品名を入力するとワードに合致する食品がチェックリストで表示されます。本来検索したい食品以外も表示される場合がありますので、該当する食品を選択してください。
- 検索結果で表示される成分項目は、一般成分の基本成分である廃棄率、エネルギー(kcal)、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分※です。一般成分の基本成分のみの表示は、「結果を表示」ボタンを押してください。重量は変更ができますので、摂取する量を入力し重量換算を行ってください。
- ※灰分:
- 一定条件下で灰化して得られる残分で、食品中の無機質の総量を意味する。また、水分とともにエネルギー産生に関与しない一般成分として、各成分値の分析の確からしさを検証する際の指標のひとつとなる。食品成分表に記載される数値の測定規準としては、550℃で残存炭素がなくなり、恒量となるまで灰化すると規定されている。
- 一般成分に追加して表示したい成分がある場合は、「表示成分選択」ボタンから、食品を追加したい場合は「フリーワードで検索」ボタンから検索し、追加することができます。
参考文献
- 香川明夫(監修):八訂 食品成分表2021. 女子栄養大学出版部, 東京, 2021.