酵素の働きと健康効果
公開日:2016年7月25日 21時29分
更新日:2021年10月11日 11時33分
酵素とは1)
体の中では、さまざまな化学反応が起こっています。それぞれの反応を引き起こすために触媒として必須のたんぱく質が酵素です。ヒトを含む生物が、摂取した食べ物を消化・吸収・代謝したり、体の中で起こるほとんどの化学反応には、酵素がなくてはなりません。しかし酵素は、それぞれある特定の反応しか触媒することができません。例えば、たんぱく質を分解する酵素は、たんぱく質を分解することしかできず、でんぷんや脂質を分解することができません。でんぷんや脂質を分解するためには、また、別の酵素が存在し、それぞれ、でんぷんや脂質しか分解できないのです。これを酵素の特異性と呼びます。そのため、ヒトの体内には、約5,000種類もの酵素があると言われています。
酵素の性質1)
ほとんどの酵素の主要な構成要素はたんぱく質です。そのため、他のたんぱく質と同じように加熱により構造が変化して、酵素の機能を失ってしまいます。
もう一つの大きな特徴は、限られた環境条件の下でしか、働かないことです。多くの酵素はヒトや動物の体内で働くために、摂氏35度から40度の温度で最もよく働きます。さらに、それぞれの酵素で、ある特定の範囲のpH※1の条件の下でしか、酵素は働くことが出来ません。ヒトの体液のpHは7.35〜7.45なので、多くの酵素は中性付近のpHで最もよく働きます。しかし、胃の中は胃酸により強い酸性であるため、胃で働くたんぱく質を分解する酵素であるペプシンは、pH2という非常に低いpHの条件下で最も活性が高くなり、中性付近ではほとんど働きません。
- ※1 pH:
- pH(ピーエッチ)は酸性かアルカリ性かを示す指標のこと。酸性からアルカリ性の度合いを0から14の数字で表すものです。 pH7を中性とし、ph7未満を酸性、ph7より大きければアルカリ性とします。 pH7よりも値が小さいほど酸性の性質が強く、値が大きいほどアルカリ性の性質が強いことをあらわします。
酵素の働き1)
酵素は、消化、吸収、代謝など、体の中のあらゆる反応になくてはならないものです。
消化酵素
体の中で働く酵素の中で、大事なものの一つが食べた食品を消化する酵素です。消化酵素は大きく分けると、でんぷんを分解する酵素、たんぱく質を分解する酵素、脂質を分解する酵素に分けられます。でんぷんをブドウ糖に分解する酵素はアミラーゼ、たんぱく質をアミノ酸に分解する酵素はプロテアーゼ、脂肪を脂肪酸とグリセロールに分解する酵素はリパーゼと言います。プロテアーゼの中にも、例えば、消化酵素のペプシン、トリプシン、キモトリプシンや、パパイヤに含まれているパパイン、パイナップルに含まれているブロメラインなど多くの種類があります。
また、体の中では消化の他に代謝においても重要な役割を果たしています。
吸収された栄養素からエネルギーを作り出す反応、体内の有害物質を処理し尿などと一緒に排泄する反応の他、体の成長、免疫反応、体の調節機能などにかかわる多くの反応に酵素が関与しています。
酵素の健康効果とは1)2)
酵素は、体の中で起こるほぼすべての反応に関与していますので、体内で作りだされる酵素の量が少なくなると、体の調子も悪くなってしまう可能性があります。他のたんぱく質と同様に、酵素は、体の中で、遺伝子の情報に基づいて合成されていますが、歳を取るにつれて酵素を合成する力も衰えてきます。そのため、高齢者は消化や代謝の力が弱くなってしまいます。
食品由来の酵素を摂取して消化を助けてもらうことについては、まだ議論の余地が残っているものの、食べたものを消化吸収するためには多くのエネルギーが必要であり、過剰な食品を消化しなければならない状況は胃や腸などの消化器官に負担をかけることは事実です。とくに高齢者は消化器官に負担をかけないためにも、腹八分目に気を付けた食事をすることは健康のためには大切なことです。