介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の訪問型サービスとは
介護予防訪問介護とは1)
介護予防訪問介護とは、要支援1、要支援2に認定された方を対象に、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者宅を訪問し、本人が自分で行うのが困難な入浴、排せつ、食事等の介護や、調理、洗濯、掃除等の家事を行う介護サービスです。
介護予防訪問看護のサービスを利用できる条件は、「日常生活上の基本動作がほぼ自立し、状態の維持もしくは改善の可能性が高い」というものです。この条件に当てはまる場合に、本人が自分で行うのが困難な掃除、買い物、洗濯、調理等の家事について、家族や地域による支え合いや他の福祉施策等の代替サービスが利用できない場合に提供されます。
以前は自分で行っていたものの、今は出来ていない(していない)家事を、ホームヘルパーがお手伝いすることにより、利用者の「またやりたい」という意欲の向上にもつながると考えられます。利用者が自分でできることを増やしていき、自立した日常生活を送れるように支援する介護サービスです。
介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)へ移行した訪問型サービス
本稿の「介護予防訪問介護」と「介護予防通所介護(デイサービス)」は、2015年4月より介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)に移行され、2017年度までにすべての市町村で実施することとされました。
これまで、要支援者の方の訪問介護や通所介護のサービスは、国が定めた全国一律の基準で提供されてきました。この総合事業では、要支援者に対して今までと同じサービスを提供しつつ、多様な生活支援のニーズに地域全体で対応していくため、多様な担い手による新しいサービスも提供されます。
介護予防訪問介護は総合事業の「訪問型サービス」として、現行の訪問介護に相当するものと、それ以外の多様なサービスを提供することになります。
なお、「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」の2つは、「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行となりましたが、「訪問看護」「介護予防訪問看護」「通所リハビリテーション」「福祉用具貸与」などは、引き続き介護予防給付によるサービスが提供されます。詳しくは市町村の窓口や地域包括支援センター、担当のケアマネジャーにお問い合わせ下さい。
訪問型サービスの内容1)
訪問型サービスは、現行の訪問介護に相当するものと、それ以外の多様なサービスから成り立ちます。多様なサービスについては、訪問型サービスA(緩和した基準によるサービス)、訪問型サービスB(住民主体による支援)、訪問型サービスC(短期集中予防サービス)、訪問型サービスD(移動支援)の4つに分類されています。
現行の訪問介護
訪問介護員による身体介護、生活援助のサービスを行います。現行の訪問介護の対象者は既にサービスを利用している方で、サービスの利用の継続が必要な場合や、以下のような訪問介護員によるサービスが必要な場合となります。
- 認知機能の低下により日常生活に支障がある症状・行動を伴う者
- 退院直後で状態が変化しやすく、専門的サービ スが特に必要な者
※状態等を踏まえながら、多様なサービスの利用を促進していくことが重要です。
多様な訪問型サービスの分類
訪問型サービスA
訪問型サービスAは、基準緩和により提供されることになった訪問型サービスで、主に雇用労働者(訪問介護員)が生活援助として、日常生活に対する援助を行うサービスです。
訪問型サービスAの具体的なサービス例としては、調理、掃除等やその一部介助、ゴミの分別やゴミ出し、重い物の買い物代行や同行を行います。料金は、国が示す単価(包括報酬)を下回る単価で市町村が設定します。
訪問型サービスB
訪問型サービスBは、住民主体による支援であり、ボランティアによる生活援助を主体として、日常生活に対する援助を行うサービスです。
訪問型サービスBの具体的なサービス例として、布団干し、階段の掃除、買い物代行や調理、ゴミ出し、電球の交換、代筆等を行います。料金については、支援が主体であるため、多くはボランティアで行われます。
訪問型サービスC
訪問型サービスCは、短期集中予防サービスであり、通所型サービスCの利用者に対して、市町村の保健師等が居宅での体力改善に向けた相談指導業務等のプログラムを行うサービスです。保健・医療の専門職により提供される支援は、3~6か月の短期間で行われます。
訪問型サービスCを利用するためには、ケアプランを作成し、モニタリングを定期的に行います。個別サービス計画をもとにケアマネジメントを行い、体力の改善に向けた支援が必要なケース、健康管理の維持・改善が必要なケース、閉じこもりに対する支援が必要なケース、ADL(日常生活動作)やIADL(手段的日常生活動作)の改善に向けた支援が必要なケースの場合に利用することができます。
訪問型サービスCのプログラムには以下のようなものがあります。
- 栄養改善プログラム
- 口腔機能の向上プログラム
- 認知機能の低下予防・支援
- 運動器の機能向上
- 膝痛・腰痛対策
- 閉じこもり予防・支援
- うつ予防・支援
- ADL/IADLの改善
(1)栄養改善プログラム
地域包括支援センターが作成した介護予防ケアプランに基づき、管理栄養士が個別計画書を作成します。この計画に基づき、訪問により必要な相談、指導等を実施します。
具体的なプログラムの実施内容は、「栄養改善マニュアル」等を参考に、低栄養状態を予防・改善するために、体重チェック、食生活評価、栄養バランスのよい食事の献立の指導など、効果的な内容の指導などが含まれます。
また、低栄養状態を改善するために特に必要と認められるものに対しては、栄養改善プログラムの一環として配食の支援を行います。
(2)口腔機能の向上プログラム
地域包括支援センターのアセスメント、医師や歯科医師による指示書、ケアマネジャーによる情報提供などに基づき、歯科衛生士、言語聴覚士等が個別計画書を作成します。この計画に基づき、訪問により必要な相談、指導等を実施します。
具体的なプログラムの実施内容は、「口腔機能の向上マニュアル」等を参考に、口腔機能の向上に関する教育、口腔内清掃の方法指導、口腔機能向上のための体操などを指導します。
(3)認知機能の低下予防・対策プログラム
認知機能低下が予想される対象者に対して、頭の体操・脳刺激活性化訓練・回想法・ストレッチ体操などを行います。初期集中支援チームの関与による認知症の早期診断・早期対応や、地域支援推進員による相談対応等を行い、認知症の人本人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる地域の構築を推進していきます。
(4)運動器の機能向上プログラム
運動機能が低下している又はおそれのある対象者に、理学療法士等を中心に看護職員、介護職員等が協働して運動器の機能向上に係る個別の計画を作成します。その計画に基づき、ストレッチング、バランストレーニング、コンディショニングトレーニング、有酸素運動、筋力向上トレーニング、機能的トレーニングなどを受けることができます。
(5)膝痛・腰痛対策
膝痛や腰痛がある対象者に対して、ストレッチング、下肢筋力強化などの運動を行いながら、日常生活活動、余暇活動などで必要な膝・腰の動きを改善し、膝痛・腰痛の改善を図ります。
(6)閉じこもり予防・支援
閉じこもりがちの高齢者は、心身の機能低下をきたしやすく、それがまた閉じこもりを引き起こすという悪循環に陥りやすいため、レクリエーション、運動や創作活動、地域の仲間との語らいを通じて、こころとからだの元気を高め、閉じこもりを予防します。
(7)うつ予防・支援
保健師、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士等で、うつの早期発見、健康相談、受診勧奨、治療介入など適切な対応を行います。うつ予防として気晴らしのレクリエーションや食事会など、様々なプログラムで予防していきます。
(8)ADLとIADLの改善
様々なプログラムを活用して日常生活をできる限り自立した生活へむけて、ADLとIADLの改善を行います。
訪問型サービスD
訪問型サービスDは、介護予防・生活支援サービス事業と一体的に行う移動支援で、主にボランティアが主体となって外出時に移送前後の補助を行うサービスです。
訪問型サービスDの具体的なサービス例には、通所型サービスの送迎、買い物、通院、外出時の支援を行います。利用方法や利用料金は訪問型サービスBと同じです。