介護予防訪問リハビリテーションとは
公開日:2019年2月12日 10時45分
更新日:2019年10月23日 09時00分
介護予防サービスの介護予防訪問リハビリテーションとは1)2)
介護予防訪問リハビリテーションとは、高齢者が要介護状態等になることを予防する目的で行われる、介護予防サービスの一つです(図1)。
自宅などに住む高齢者の元へ、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家が訪問し、リハビリテーションを行います。高齢者が、可能な限り自立した日常生活を自宅などで送ることができるよう、心身機能の維持回復、日常生活の自立などの目標を立て、リハビリテーションを行います。
高齢になると誰でも、日常生活における生活機能が低下します。だからといってすぐに要介護の状態になるわけではありません。現在の生活機能の維持や回復を目指すことで、要介護状態になることを予防することが必要です。そのために行われるのが、リハビリテーションです。
リハビリテーションと聞くと、「病気やケガからの回復」というのが一般的なイメージかもしれませんが、「今ある機能を維持し、加齢とともに衰えてくる機能を回復させる」ことも、リハビリテーションに含まれます。そのためには、高齢者の運動機能や栄養状態の維持や回復といった「心身機能の改善」、日常生活の活動や社会への参加を促して「一人ひとりの生きがいや自己実現のための取り組みの支援」などにより、QOLの向上を目指すことが必要とされています。
専門家の違いによるリハビリテーションの違い3)
介護予防訪問リハビリテーションは、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門家によって提供されますが、それぞれの違いを見てみましょう。
理学療法士
理学療法士とは、身体に障害(あるいは機能低下)のある者に対し、主としてその基本的動作能力の回復を図るため、治療体操その他の運動を行わせたり、電気刺激、マッサージ、温熱その他の物理的手段を加える者のことをいいます。理学療法士は、「身体機能の維持や向上」を促すようなリハビリテーションを担当します。
作業療法士
作業療法士とは、身体または精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作、その他の作業を行うようにさせる者のことをいいます。作業療法士は、手芸や工作、料理などといった「手先を使う動作および機能の維持や向上」を促すようなリハビリテーションを担当します。
言語聴覚士
言語聴覚士とは、音声機能、言語機能又は聴覚に障害(あるいは機能低下)のある者について、その機能の維持向上を図る目的で、言語訓練その他の訓練、これらに必要な検査及び助言、指導その他の援助を行う者をいいます。言語聴覚士は、「家族や周りの人との会話やコミュニケーションに必要な機能の維持や向上」を促すようなリハビリテーションを担当します。
介護予防訪問リハビリテーションで行われること
介護予防訪問リハビリテーションでは、おおよそ次のような訓練やリハビリテーションが行われます。
- 移動、食事、排泄、入浴等の日常生活活動に関する、ADL(日常生活動作)の訓練
- 家事、外出等のIADL(手段的ADL)訓練
- 作業耐久性の向上、作業手順の習得、就労環境への適応等の職業関連活動の訓練
- 福祉用具の使用等に関する訓練
介護予防の中で必要とされるのが、ADLの訓練と、IADLの訓練です。
IADLの訓練とは例えば、「自分で電話をかけられる」や「電車やバスを使って一人で外出する」などが、できるようになることです。このような、日常生活上で何気なく出来ていたことも、加齢とともに「できない」あるいは「できるがしていない」ことが増えてきます。
リハビリテーションの目的には、さまざまな「機能の維持や回復」がありますが、それと同時に、日常生活の活動や社会への参加を促し、一人ひとりの生きがいや自己実現を支援する、というものもあります。その為には、単に「動けるようになる」だけではなく、何らかの「手段」を合わせた行動ができるよう、支援していくことが必要なのです。
介護予防訪問リハビリテーションの対象者と利用料(目安)2)4)
介護予防訪問リハビリテーションは、要支援1あるいは要支援2の方が対象となります。
また、介護予防訪問リハビリテーションの利用料の目安は1回20分、週に6回限度とし、自己負担額は292円です(表1)。
サービス費用の設定 | 利用者負担(1割)(1回につき) |
---|---|
20分 | 292円 |
ただし、介護予防訪問リハビリテーションのサービス事業所と、同一敷地内または隣接する建物に居住する人の場合は、自己負担額が表1の額の90%(10%減算)となります。
また、介護予防訪問リハビリテーションは「指定介護予防訪問リハビリテーション」と呼ばれることもあります。これは、サービス事業所の医師による診療および指示に基づき、実施される介護予防訪問リハビリテーションのことで、現在では一般的に行われているサービスです。医師が診療を行っていない利用者への介護予防訪問リハビリテーションには「指定」という文字がつきません。この場合は、20円分が減算されます。
2018年4月の介護報酬改定により、「リハビリテーションマネジメント加算(1か月あたり230円分)」が加算されることになりました。加算の条件としては、以下などがあります。
- 指定介護予防訪問リハビリテーション事業所の医師が、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士に対し、当該リハビリテーションの目的、当該リハビリテーション開始前又は実施中の留意事項、やむを得ず当該リハビリテーションを中止する際の基準、当該リハビリテーションにおける利用者に対する負荷等のうちいずれか1つ以上の指示を行うこと。
- おおむね3月ごとにリハビリテーション計画を更新すること。
- 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が、介護支援専門員を通じて、従業者に対して日常生活上の留意点、介護の工夫等の情報を伝達すること。