介護保険の高額介護合算療養費制度とは
公開日:2018年12月18日 13時00分
更新日:2023年8月 1日 13時40分
高額介護合算療養費制度とは
高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険における1年間(毎年8月1日から始まり翌年7月31日まで)の医療保険と介護保険の自己負担の合算額が著しく高額であった場合に、自己負担額を軽減する制度のことをいいます。申請をすることによって負担額の一部が払い戻されます。実際には、2008年4月1日から利用できるようになった、比較的新しい制度です1)。
高額介護合算療養費制度の対象者とは
高額介護合算療養費制度を利用するには、いくつかの条件があり、条件に該当する世帯は対象となります。
- 国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療制度の各医療保険における世帯内であること
- 1年間の医療保険と介護保険の自己負担合算額が、各所得区分に設定された限度額を超えた世帯であること
医療保険制度を利用する世帯に、介護保険の受給者がいる場合には、被保険者からの申請に基づき、高額療養費の算定対象となる世帯単位で、医療保険と介護保険の自己負担を合算した額が限度額を超えた場合、支給の対象となります。
医療機関や調剤薬局の窓口、あるいは介護サービス事業者などに対し、自己負担限度額を超えて支払った場合に、その差額分を2つの方法で支給されることになります。
- 介護保険に係る部分は「高額医療合算介護サービス費」として支給
- 医療保険に係る部分は「高額介護合算療養費」として支給
尚、自己負担分ではなく、保険制度が負担する部分の費用負担は、医療保険者・介護保険者双方が、自己負担額の比率に応じて負担します。
それぞれの限度額は、後期高齢者医療制度の対象者の世帯(70歳以上世帯)では、若い世代よりも低くなっており、被保険者の負担能力に応じてきめ細やかな対応がなされることが特徴です。
高額介護合算療養費制度の限度額の設定
高額介護合算療養費制度の限度額は、世代間の公平や負担能力に応じた負担等の観点から、患者の受診行動に与える影響も含めて、所得や年齢などによって設定されています。
2018年8月から、70歳以上の高額療養費制度の見直しが行われました。
現役並み所得区分については現役世代と同様に、細分化した上で限度額を引き上げ、一般区分については、限度額を据え置きました2)。
そのため、2018年8月以前に高額介護合算療養費制度を活用された方は、限度額などが異なっているため、注意が必要です(表1)。
70歳以上※1 | 70歳未満※1 | |
---|---|---|
年収約1,160万円以上 | 212万円 | 212万円 |
年収770万~1,160万円 | 141万円 | 141万円 |
年収370万~770万円 | 67万円 | 67万円 |
一般 年収156万~370万円 |
56万円 | 60万円 |
市町村民税世帯非課税 | 31万円 | 34万円 |
市町村民税世帯非課税 (所得が一定以下) |
19万円※2 | 34万円 |
※1 対象世帯に70~74歳と70歳未満が混在する場合、まず70~74歳の自己負担合算額に限度額を適用した後、残る負担額と70歳未満の自己負担合算額を合わせた額に限度額を適用します。
※2 介護サービス利用者が世帯内に複数いる場合は31万円となります。
しかし、療養病床に入院した場合、かかった食費や差額ベッド代、居住費などについては、今までの高額療養費等の制度と同様に別途自己負担する必要があります。これを月額に換算すると、表2のようになります。
世帯収入 | 外来(個人ごと) | 1か月の上限額 (世帯ごと) | |
---|---|---|---|
現役並み | 年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1%<多数回140,100円※4>(1か月の上限額(世帯ごと)を含む) | |
現役並み | 年収約770~約1,160万円 | 167,400+(医療費-558,000)×1%<多数回93,000円※4>(1か月の上限額(世帯ごと)を含む) | |
現役並み | 年収約370~約770万円 | 80,100+(医療費-267,000)×1%<多数回44,400円※4>(1か月の上限額(世帯ごと)を含む) | |
一般 | 年収156万~約370万円 標報26万円以下 課税所得145万円未満※3 |
18,000円 (年144,000円※5) |
57,600円 <多数回44,400円※4> |
低所得者 | 住民税非課税世帯 | 8,000円 | 24,600円 |
低所得者 | 住民税非課税世帯 (年金収入80万円以下など) |
8,000円 | 15,000円 |
※3 世帯収入の合計額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)の場合や、「旧ただし書き所得」の合計額が210万円以下の場合も含みます。
※4 過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」の該当となり、上限額が下がります。
※5 一年間のうち一般区分または住民税非課税区分であった月の外来の自己負担額の合計額について、14.4万円の上限が設けられています。
高額介護合算療養費制度の利用の流れ
高額介護合算療養費制度を利用するためには、まず、費用の支給対象となるかどうかを知っておく必要があります。もしも費用の支給に該当した場合には、まず介護保険者(市町村)に申請を行います。申請が受理されると、介護保険者(市町村)から介護自己負担額証明書が送られてくるため、この介護自己負担額証明書を添えて医療保険者に申請書を提出します。こうすることで、高額医療合算介護サービス費が支給されます。
申請手続きや具体的な支給額などについては、加入されている医療保険(健康保険組合など)や介護保険の窓口まで相談することをおすすめします。