特定疾病・65歳未満の要介護認定
公開日:2018年12月18日 21時29分
更新日:2019年2月 1日 18時41分
65歳未満の要介護認定を受けるには
65歳未満の第2号被保険者が要介護認定を受けるには、以下に掲げる16の特定疾病が原因で日常生活の自立が困難になっており、要介護・要支援状態が6ヶ月以上にわたって続くことが予想される場合とされています。
1. がん(がん末期)
以下のいずれかの方法により悪性新生物であると診断され、かつ、治癒を目的とした治療に反応せず、進行性かつ治癒困難な状態(注)にあるもの。
- 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されているもの
- 組織診断又は細胞診により悪性新生物であることが証明されていない場合は、臨床的に腫瘍性病変があり、かつ、一定の時間的間隔を置いた同一の検査(画像診査など)等で進行性の性質を示すもの。
注)ここでいう治癒困難な状態とは、概ね余命が6月間程度であると判断される場合を指す。なお、現に抗がん剤等による治療が行われている場合であっても、症状緩和等、直接治癒を目的としていない治療の場合は治癒困難な状態にあるものとする。
2. 関節リウマチ
指の小関節から股・膝のような大関節まであらゆる関節に炎症が起こり、疼痛・機能障害が出現する。とくに未明から早朝に痛みとこわばりが強い。筋、腱にも影響し筋力低下や動作緩慢が顕著になる。
3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
筋萎縮・筋力低下、球麻痺、筋肉の繊維束性収縮、錐体路症状を認める。それに反して感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡は原則として末期まで認めない。
4. 後縦靱帯骨化症
靭帯の骨化は頚椎に最も多く、頚髄の圧迫では手足のしびれ感、運動障害、腱反射亢進、病的反射出現等の痙性四肢麻痺となる。胸髄圧迫では上肢は異常なく、下肢の痙性対麻痺となる。
5. 骨折を伴う骨粗鬆症
脊椎圧迫骨折...腰背部痛を伴う脊柱の変形が特徴的である。軽微な外傷後もしくは誘因なく急性の腰痛を生じ寝たきりになることが多い。
大腿骨頚部骨折・転子部骨折...転倒等の後に、大転子部の痛みを訴え起立不能となる。膝の痛みを訴える場合もある。転位の少ない頚部骨折の場合、歩行可能な場合もある。
6. 初老期における認知症(アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体病等)
アルツハイマー病
初期の主症状は、記憶障害である。また、意欲の低下、物事の整理整頓が困難となり、時間に関する見当識障害が見られる。中期には、記憶の保持が短くなり、薬を飲んだことを忘れたり、同じ物を何回も買ってくるようになる。後期には、自分の名前を忘れたり、トイレがわからなくなったり、部屋に放尿するようになる。また失禁状態に陥る。薬物治療で進行の遅延効果が得られる場合がある。
血管性認知症
初発症状として物忘れで始まることが多い。深部腱反射の亢進、足底反射、仮性球麻痺、歩行異常等の局所神経徴候を伴いやすい。一般に、記憶障害はかなりあっても、判断力は保持されており、人格の崩壊は認められない。
レビー小体病
進行性の認知症。リアルな幻視体験が特徴。パーキンソン症状が先行する事もあり、薬物治療で効果が得られる場合がある。
7. 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病(パーキンソン病関連疾患)
臨床的に、これら三疾患にはパーキンソン症状が共通に認められる。すなわち、筋肉のこわばり(筋固縮)、ふるえ(振戦)、動作緩慢(無動)、突進現象(姿勢反射障害)などのうちのいくつかを認めるものである。
- パーキンソン病は、パーキンソン症状を中心とし、薬剤などの治療効果が高いものが多い。
- 進行性核上性麻痺は、異常な姿勢(頸部を後屈させ、顎が上がる)や、垂直方向の眼球運動障害(下方を見にくい)といった多彩な症状を示す
- 大脳皮質基底核変性症は、パーキンソン症状と大脳皮質症状(手が思うように使えないなど)が同時にみられるなど、症状や病状の進行に差が見られる。
- 振戦
- 筋強剛(固縮)
- 動作緩慢
- 姿勢反射障害
- その他の症状(自律神経障害、突進現象、歩行障害、精神症状等)
8. 脊髄小脳変性症
初発症状は歩行のふらつき(歩行失調)が多い。非常にゆっくりと進行。病型により筋萎縮や不随意運動、自律神経症状等で始まる。最終的には能動的座位が不可能となり、寝たきり状態となる。
9. 脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症
腰痛、下肢痛、間欠性跛行(かんけつせいはこう)を主訴とする。
頚部脊柱管狭窄症
両側の手足のしびれで発症するものが多い。手足のしびれ感、腱反射亢進、病的反射出現等の痙性四肢麻痺を呈する。
10. 早老症(ウェルナー症候群等)
若年者で老人性顔貌、白髪、毛髪の脱落とともに肥満の割に四肢が細い。若年性白内障、皮膚の委縮と角化、足部皮膚潰瘍、四肢の筋肉・脂肪組織・骨の萎縮、血管・軟部組織の石炭化、性腺機能低下症、糖尿病、髄膜腫等を認める。
11. 多系統萎縮症
多系統委縮症(MSA)は臨床的に、
- 起立性低血圧症、排尿障害、発汗低下など自律神経症状
- 筋肉のこわばり、ふるえ、動作緩慢、小刻み歩行などパーキンソン症状
- 立位や歩行時のふらつき、呂律が回らない、字がうまく書けない
などの小脳症状、を様々な程度に組み合わせて呈する疾患である。
自律神経症状が強いものを「シャイ・ドレーガー症候群」、パーキンソン症状が強いものを「線条体黒質変性症」、小脳症状が強いものを「オリーブ橋小脳萎縮症」とする。MRIなど画像検査が診断に有効である。パーキンソン病や小脳萎縮症に比して、やや進行が早い傾向がある。
12. 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
糖尿病性腎症
糖尿病の罹期間が長い。糖尿病に伴う蛋白尿を呈する。また、高血圧と浮腫を伴う腎機能障害を認める。
糖尿病性網膜症
主な症候は視力低下。末期まで視力が保たれることもあり、自覚症によると手遅れになりやすい。
糖尿病性神経障害
下肢のしびれ、痛み等を認める。
13. 脳血管疾患(脳出血、脳梗塞等)
脳出血
発症状況と経過は一般に頭痛、悪心、嘔吐をもって始まり、しだいに意識障害が進み、昏睡状態になる。半身の片麻痺を起すことが多く、感覚障害、失語症、失認、失行、視野障害等が見られる。
脳梗塞
発症状況と経過は、アテローム血栓症脳梗塞やラクナ梗塞では、夜間安静時に発症し起床時に気が付かれ、症状が徐々に完成することが多く、心原性脳塞栓症では、日中活動時に突発的に発症して症状が完成することが多い。
注)高次脳機能障害については、言語・思考・記憶・行為・学習・注意障害等が生じ、社会生活をさまたげることが多いが、外見からは分かりにくく、注意が必要である。
14. 閉塞性動脈硬化症
問診で閉塞病変に由来する症状として下肢冷感、しびれ感、安静時痛、壊死等があるかどうか聞く。視診により下肢の皮膚色調、潰瘍、壊死の有無をチェックする。触診ですべての下肢動脈の拍動の有無を調べる。
15. 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎)
肺気腫
ほとんどが喫煙者で、男性に多い。体動時呼吸困難が特徴的であるが、出現するのはある程度病変が進行してからである。咳、痰を訴えることもある。
慢性気管支炎
喫煙者に多く、慢性の咳、痰を認める。体動時呼吸困難は、感染による急性増悪時には認めるが、通常は軽度である。身体所見では、やや肥満傾向を示す人が多いといわれる。
気管支喘息
発作性の呼吸困難、喘鳴、咳(特に夜間・早朝)が、症状がない時期をはさんで反復する。気道閉塞が自然に、または治療により改善し、気流制限は可逆的である。その他、気道過敏症を示す。
びまん性汎細気管支炎
呼吸細気管支領域にびまん性炎症により、強い呼吸障害をきたす。初期には肺炎球菌、インフルエンザ桿菌等が感染菌となりやすく、痰、咳、喘鳴を呈し、長引くと菌交代現象を起こし、緑膿菌感染症になり重症化しやすい。
16. 両側の膝関節又は股関節の著しい変形を伴う変形性関節症
初期の場合は、歩行し始めの痛みのみであるが、次第に、荷重時痛が増え、関節可動域制限が出現してくる。
参考文献
東京都医師会:介護保険における特定疾病診断の手引き.東京都医師会雑誌, 51(9):1763-1821, 1999を一部改変