全身反応測定の測定方法
公開日:2016年7月25日 04時00分
更新日:2022年4月22日 10時56分
全身反応測定の目的・意義
全身反応測定は敏捷性を把握することを目的に行われます。全身反応測定は、一般的に反応開始の合図から足が跳躍台を離れるまでの時間を測ります。体重が負荷となりますが、全身を動かす反応の速さを測定することができます。
例えば卓球やバスケットボール、バドミントンなど素早い動きを要求される種目のスポーツ選手で全身反応時間が短いと報告されています。中高齢者では日常生活の転倒リスクと全身反応時間に相関があることが報告されています1)。全身反応測定で測る身体の敏捷性は、日常生活で転倒しそうな時など、とっさの時に危険を回避する動作で重要です。敏捷性を維持・向上させることで日常生活での傷害を予防し、活動的な行動を送れるようにしましょう。
全身反応測定の方法
写真1のような全身反応測定器を設置し、圧力を検出できるマット(跳躍台)の上で、膝を軽く曲げて立ちます。正面の光のランプのフラッシュによる「刺激」を与えられたら、できるだけ早くジャンプします。刺激が出されてからジャンプ動作開始までを反応開始時間といい、神経機能を反映します。
また、動作開始からジャンプをして足がマットから離れる瞬間までを筋収縮時間といい、筋の収縮能力を示します。反応開始時間と筋収縮時間の合計が全身反応時間です。
刺激に対して足がマットから離れる時間を測定するため、ジャンプは10cm程度と低く、素早くすることが求められます。測定では1~2回練習を行ってから測定を5回行い、5回の平均値を結果として記録します。測定単位はミリ秒(msec.)です。刺激を出す人は、被測定者が光のフラッシュによる刺激のタイミングを予測できないように、ランダムな時間間隔で刺激を出すようにすることも、正確な測定のためには大切になります。
全身反応時間の年齢別平均
20~65歳男女36,998名を対象にした全身反応測定の性別・年齢別の平均値を下の表に示します(表)2)。
年齢 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20 | 358 | 410 |
25 | 355 | 402 |
30 | 353 | 396 |
35 | 354 | 393 |
40 | 357 | 394 |
45 | 361 | 397 |
50 | 368 | 403 |
55 | 377 | 412 |
60 | 387 | 424 |
男女を比べると女性に比べて男性の方が、全身反応時間が短い傾向があります。男性では30歳、女性では35歳が最も全身反応時間が短く、その後は加齢とともに全身反応時間は長くなります。単位はミリ秒(msec.)で計算され、刺激が与えられてから男性では約0.35秒~0.38秒、女性では約0.39秒~0.42秒で反応できていることがわかります。
測定はどこでできるか
地域の体育施設で全身反応測定器を設置している施設は少ないです。敏捷性の測定に反復横跳びやヘキサゴンドリルなど専門の機器を用いない方法を採用している施設が多いためです。そのため、全身反応測定を希望する場合は、事前に問い合わせてみる必要があります。選手やチームの体力測定を行っている地域のコア・スポーツセンターや研究施設には設置されていることがありますが、こちらも事前に測定ができるかどうか問い合わせてみる必要があります。体育施設で測定ができなくても、対象地域のどこで測定ができるかを指示してもらえることもありますので、連絡をしてみてください。
参考文献
- 田井中幸司ら.在宅高齢女性の転倒経験と体力.体力科學.56(2),279-285.2007.