健康長寿ネット

健康長寿ネットは高齢期を前向きに生活するための情報を提供し、健康長寿社会の発展を目的に作られた公益財団法人長寿科学振興財団が運営しているウェブサイトです。

エネルギー消費量の測定方法

公開日:2016年7月25日 15時00分
更新日:2023年6月21日 09時49分

エネルギー消費とは

 我々は食べ物を摂ることで得られるエネルギー摂取と、身体を動かすことで使われるエネルギー消費の収支バランスによって健康な身体を保っています。エネルギー摂取とエネルギー消費は㎉(キロカロリー)の単位で表されます。

 1㎉とは、水1kgを1℃上昇させるために必要な熱量のことを示します。エネルギー摂取量は摂取した食事が体内でどれだけの熱量を作りだせるかを表し、エネルギー消費量は生命維持活動や日常生活活動、運動でどれだけの熱量を使ったかを表します。

エネルギー消費の種類

 エネルギー消費は、基礎代謝、身体活動量(生活活動や運動)、食事誘発性熱産生に分けられます。1日全エネルギー消費量のうち、約60%が基礎代謝、約30%が生活活動量、約10%が食事誘発性熱産生の割合で消費されます1)

基礎代謝

 基礎代謝とは、心身ともに安静な状態の時に生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー量のことです。生命維持のために、心臓や中枢系の働きなど不随意の活動によるものが多くを占めます。そのため、我々は生きているだけでたとえ寝ていても多くのエネルギー量を必要とします。

基礎代謝量の内訳と基準値

 基礎代謝量の内訳は表1のとおりです。

表1:人の臓器・組織における安静時代謝比率2)一部引用
臓器・組織比率(%)
骨格筋 22
脂肪組織 4
肝臓 21
20
心臓 9
腎臓 8
その他 16

 また、厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」報告書によると、基礎代謝基準値は表2のとおりです。

表2:参照体重における基礎代謝量3)
性別男性男性男性女性女性女性
年齢(歳)基礎代謝基準値(㎉/kg体重/日)参照体重(kg)基礎代謝量(㎉/kg体重/日)基礎代謝基準値(㎉/kg体重/日)参照体重(kg)基礎代謝量(㎉/日)
1~2 61.0 11.5 700 59.7 11.0 660
3~5 54.8 16.5 900 52.2 16.1 840
6~7 44.3 22.2 980 41.9 21.9 920
8~9 40.8 28.0 1,140 38.3 27.4 1,050
10~11 37.4 35.6 1,330 34.8 36.3 1,260
12~14 31.0 49.0 1,520 29.6 47.5 1,410
15~17 27.0 59.7 1,610 25.3 51.9 1,310
18~29 23.7 64.5 1,530 22.1 50.3 1,110
30~49 22.5 68.1 1,530 21.9 53.0 1,160
50~64 21.8 68.0 1,480 20.7 53.8 1,110
65~74 21.6 65.0 1,400 20.7 52.1 1,080
75以上 21.5 59.6 1,280 20.7 48.8 1,010

身体活動量

 身体活動量とは、生活をするうえでの活動、歩く、家事をする、仕事をする、運動をするときなどに消費されるエネルギー量です。身体活動で消費されるエネルギー量は、体格、活動強度、活動時間によって決まります。

食事誘発性熱産生

 食事誘発性熱産生とは、食事をするときに消費するエネルギーの量のことです。食事をした後、身体が暖かくなるのはこの食事誘発性熱産生によるものです。

 また、食事誘発性熱産生でどれくらいエネルギーを消費するかは栄養素の種類によって異なります。たんぱく質のみを摂取したときはエネルギー摂取の約30%、糖質のみの場合は約6%、脂質のみの場合は約4%で、通常の食事はこれらの混合なので約10%程度になります。

エネルギー消費の測定の目的・意義

 我々はエネルギー摂取量とエネルギー消費量の収支バランスがとれていることで健康な身体を維持しています。一般的に、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を慢性的に上回ると肥満につながり、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を慢性的に下回ると痩せていきます。

 エネルギー摂取量は食物によって一定ですが、エネルギー消費量は体組成や身体活動量に影響されるため人によって様々です。そのため個別にエネルギー消費量を測定することで、その人の健康維持に適したエネルギー摂取量を把握することができます。

 エネルギー消費を測定することで、健康維持のために必要な食事量や運動量を個別にかつ具体的に把握できるようになります。

エネルギー消費の測定方法

 エネルギー消費の測定方法は、「直接熱量測定法」と「間接熱量測定法」の2つに大きく分けられます。

直接熱量測定法

 直接熱量測定法とは、発生した熱量を直接測定する方法です。専用の実験室で人が運動を行い、その運動によって熱が放出されます。その際、水を利用して放出された熱を吸収し、水温の差から熱の発生量、つまりエネルギー消費量を算出します。

 なお、余談になりますが、炭水化物・脂肪・たんぱく質1gのエネルギー量が、それぞれ約4㎉・約9㎉・約4㎉であることはよく知られていますが、この値は直接熱量測定法によって測定されています。食べ物の場合は、実際に燃焼させ発生した熱による温度差を利用します。

間接熱量測定法

 一方、間接熱量測定法とは、呼気を利用してエネルギー消費量を算出する方法です。体内では糖や脂質を主なエネルギー源としてエネルギーを発生させます。そのエネルギーを発生させるためには酸素が必要となります。そこで吸気と呼気の酸素量を測定することで、体内で利用された酸素量が把握でき、利用された酸素量からエネルギー消費量を算出することができます。

 なお、直接熱量測定法により、炭水化物・脂肪・たんぱく質の混合食は、酸素1リットル当り約5㎉のエネルギーを放出することが確認されています。したがって、例えば、酸素摂取量が3リットルならば15㎉のエネルギーを消費したことになります。

エネルギー消費量の測定方法は一般的に間接熱量測定が用いられます。

 直接熱量測定法は大きな実験室が必要となりますが正確性に優れています。一方、間接熱量測定法は日常生活活動や様々な運動におけるエネルギー消費量を測定するのに優れています。エネルギー消費量の測定は、一般的には間接熱量測定法である呼気ガス分析が多く行われています。そして、直接熱量測定法による測定値との差異は極めて小さいと考えられます。

自分でもできる消費カロリー計算(METs)

 エネルギー消費量は消費カロリーと同義で使用されています。従来、カロリー計算は非常に煩雑で専門知識がなければ算出が困難でした。そこで安静時を1としたときに、安静時に比べ何倍の運動強度であるかを表すことができる「METs(メッツ)」という単位が使用されるようになり、消費カロリーが生活活動や運動の強度によってある程度把握できるようになりました。

 座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します4)。簡単に各生活活動や運動の強度を把握できる一覧表「改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』」を参考にすることができます(リンク1参照)。

リンク1 改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』 国立健康・栄養研究所(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます

エネルギー消費量の測定はどこで受けられるか

 エネルギー消費量の測定には専用の測定器具や実験室が必要となります。各都道府県や地域で健康づくり事業の研究や推進を行っている基幹施設(総合体育施設や研究機関など)に問い合わせてみてください。

参考文献

  1. 身体活動とエネルギー代謝 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます) 
  2. 加齢とエネルギー代謝 厚生労働省e-ヘルスネット(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  3. 日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書 厚生労働省(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)
  4. 健康づくりのための運動指針基準2013 厚生労働省(PDF)(外部サイト)(新しいウインドウが開きます)

無料メールマガジン配信について

 健康長寿ネットの更新情報や、長寿科学研究成果ニュース、財団からのメッセージなど日々に役立つ健康情報をメールでお届けいたします。

 メールマガジンの配信をご希望の方は登録ページをご覧ください。

無料メールマガジン配信登録

寄附について

 当財団は、「長生きを喜べる長寿社会実現」のため、調査研究の実施・研究の助長奨励・研究成果の普及を行っており、これらの活動は皆様からのご寄附により成り立っています。

 温かいご支援を賜りますようお願い申し上げます。

ご寄附のお願い(新しいウインドウが開きます)

このページについてご意見をお聞かせください(今後の参考にさせていただきます。)